きっと、どこかで起こった物語。

半分実話という、一話完結型の奇譚。恐ろしいお話や背筋がゾッとするお話、気味の悪いお話に、腑に落ちないお話……綺麗に終わりきらないお話も多く、この妙に喉元に残る感覚がよりリアリティがあって読み終えた後になんとなく周りを気にしてしまいます。中には心が温まる物語もあって、そういうお話に出会えた時は自然と頬が緩みました。
職業柄様々な方と接することが多い作者が聞いたお話を丁寧に整え直して書いている物語ということで、その前情報を得てから読むとさらに内容に入り込めてリアルに感じます。それもお話の導入の仕方が大変巧みです。ご本人も個人情報ゆえと仰っていたので仮名だとは分かりますが、それでも最初に話を聞いた人……つまりは物語の主人公となる人物の名前をフルネームで語ってからお話が始まるので、そこがこれまた生々しさを演出し、リアルに感じられます。また、半分実話という謳い文句が良いスパイスになっていて魅力が倍増しますね。
こわいお話は時に信じたくないと思ってしまうのですが、語られる不可思議の中には確実に否定しきれない立体感が存在します。読み終えたあと、これはきっと起こったのだろうな……と妙に納得してしまう自分がいました。
ちなみに私が一番好きなお話は『第12話 枕もとのメモ』です。こちらは心が温かくなるお話です。優しさに触れたい方にはとてもオススメします。すごく好きです!
半分実話というこの話達を是非ご自分の目で確かめてください。そこにはどうしても否定しきれないナニカが存在しています。

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