優秀な海妖対策士は……アヒルちゃん?

まさかの第一声にチェンジ!と言われてしまった少女エンテ。
しかし、アヒルに例えられるほど小さな彼女は王立海妖対策研究所の最高位である『第一級海妖対策士』だった。
ほとんどが解明されていない広大な世界で、新大陸到達を目指して恐ろしい【海妖】が跋扈する大海原へと旅立つ一隻の船――とある冒険者たちのお話です。
子アヒルことエンテの一人称視点で物語は進んでいきます。
一人称ゆえに彼女がどれだけ対策士として真剣に考え、だからこそ仕事には一切手を抜かず俺様な船長にすら噛み付く負けず嫌いな性格かひしひしと伝わってきます。
エンテの感情が時に面白おかしく、時に誰よりも直向きに描かれており、どんなに危険な海上でも前を向いて進む彼女の姿には胸がうたれました。
王様のような船長アクイラ。親しみのある船医のシュエット。似てるようで似ていない双子のファルケとヴェルガー。他のキャラクターも大変個性豊かで、エンテとのやり取りは見ていて楽しいです!
特に船長アクイラの王様ムーブのなかに滲む彼なりの優しさにはニコニコとしました。
アクイラとエンテの関係性の変化、最後に明かされるアクイラの衝撃の事実には最高に気持ちよくなるかと私は思います!
この世界ならではの独自の生態系はファンタジーでありながらリアリティのあるもので、生き物として細部まで設定が練られています。
ファンタジーの幻想生物ではなくファンタジー世界の生き物だと、この世界で進化をし続けていた生態だと感じられて生き物好きである程度の知識がある方は確実に惹かれるかと思います。
逆に詳しくなくてもファンタジーに絡めながら作中で説明してくださるので、ファンタジー好きの方もワクワクと楽しめる内容です。
中編として綺麗にまとまっており、ストーリーのテンポも良くてスルスルと世界に引き込まれていきました。
エンテがどのように危険な海妖たちの対策をしていくのが、ぜひその目で確認してみてください!
子アヒルな見た目とは裏腹に頭が切れ、その知識量と熱意は確かに一級です。

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