カクヨムという大海において、本作が放つ異彩はあまりに鋭い。
昨今の主流である「持てる者の無双」をあざ笑うかのように、本作は徹底して「持たざる者」の、泥にまみれた足掻きを描き出す。
一、 迷宮という名の、巨大な「臓器」
本作の迷宮は、攻略対象のゲームステージではない。侵入者の肉を削ぎ、魂を摩耗させる、冷酷な生態系そのものである。一歩足を踏み入れれば、そこにあるのは「死」へのカウントダウンだ。松明の火が消え、呪文の回数が尽きることの絶望を、これほどまでに重苦しく描写した筆致は、もはや恐怖に近い。
二、 「ア」という名の歪んだ鏡
主人公・アが歩む道は、自己実現の輝かしい階段ではなく、迷宮に順応し、人間性を削り捨てていく「変質の記録」だ。かつての自分を遠ざけ、迷宮の住人として完成されていくその姿は、痛ましくも美しい。彼が手にする力は「贈り物」などではなく、呪いに等しい対価を払って得た「生存の道具」に過ぎない。
三、 徹頭徹尾、ハードボイルドな世界観
言葉選びに一切の甘えがない。
著者のイワトオ氏は、キャラクターの死や喪失をドラマチックに飾り立てることをしない。ただそこに事実として置き、読者にその重みを叩きつける。その冷徹さが、かえって登場人物たちの僅かな連帯や、刹那の生を、火花のように鮮明に浮かび上がらせている。
総評
本作を読み進めることは、暗い穴の底を這うのと同義である。
喉が渇き、心がざらつき、それでも次のページを捲らずにはいられないのは、そこに「本物の冒険」が孕む、美しき不条理が満ちているからだ。
華やかなファンタジーに飽いた者が、最後に辿り着くべき「終着駅」の一つ。
読了後、あなたの心には、迷宮の冷たい風と、鉄錆の味が残るだろう。
連載当初から、いつも最新話を心待ちにしながら拝読しております。長らく感想をお伝えできずにいましたが、これほどまでに素晴らしい作品を生み出してくださった作者様への感謝と、今後のご活躍、そしてクラウドファンディングの成功を心から応援したく、この度筆を執りました。
本作の魅力は数えきれませんが、特に惹きつけられるのは、その奥深い人物設定です。登場人物一人ひとりが背負う過去や想いが丁寧に描かれており、まるで彼らが本当にその世界で息づいているかのようなリアリティを感じます。
また、人々がなぜ危険を冒してまで迷宮に潜らざるを得ないのか、その背景にある社会や個人の事情が描かれることで、物語に圧倒的な深みが生まれています。単なる冒険譚ではない、人間の業や希望を描く骨太な世界観に、いつも心を揺さぶられています。
そして何より、魔法使いという特別な存在ならではの視点と、その力ゆえに抱える悲哀の描写には、毎回胸を打たれます。彼らの目を通して見る世界は、美しくも残酷で、物語に一層の奥行きを与えていると感じます。
このような素晴らしい物語を世に送り出してくださり、本当にありがとうございます。
これからも、先生が紡がれる物語を心から楽しみにしております。どうかご自愛の上、創作活動を続けてください。ささやかながら、応援しております。
主人公アには様々な不条理が降りかかり、ただ生きることが、難しいと感じさせる物語です。
スタート時アにはチートなどありません。でもアは、いつも前を向いて生きてゆきます。暑苦しい理由ではなく、そうしないと生き延びられず死ぬので。
物語中、アは酷い目にも遭うし、倫理感も歪みます。
そうしないと死ぬので。
アの生き方は不条理な現実を彷徨う参考になります。
迷宮探索と同じく長い話なので、読むには根気か覚悟が必要です。
ただ読み始めると地上(現実)に戻りたくなくなるのは物語の魔力でしょうか?
そうそう主要人物は物語上必要になるまで死なないと言う約束はないので油断なさらぬ様に。
この作品を語るのにウィザードリィという言葉を避けて通ることは出来ない。
薄暗い城塞都市。始まりの訓練場。仲間が集う酒場。ぼったくりの武具屋。宿屋代わりの馬小屋。無慈悲な教会。街外れに口を開けた地下迷宮。
魔物がはびこる地下迷宮に挑む冒険者達を深層で待つものは、富か、名誉か、それともロストか。
活字の向こうに広がる世界は正にウィザードリィの世界そのもの。
では、無い。
似て非なる世界。
似て非なる物語。
エルフのサムライを仲間にする為に、メイジにしかなれないヒューマンを大量に抹消した者よ。
地下迷宮の奥深くで、グレーターデーモンを殺しまくった古強者よ。
この物語を知れ。