AIを搭載した宇宙船に乗って、博物館資料を隣の惑星まで移動させるお仕事をする学芸員と、その船員として雇われたバイトの大学生の話です。
学芸員は変人扱いですが、物語の終盤ではきっと彼は変人なのではないのかもしれない……というか、確かに変人なのだけれども、きっと誰しもが考え付くであろうお仕事的な考えの持ち主なのだと思います。
ただここでユニークなのが、AIとの関わりです。
序盤「ははん、こりゃSF作家お得意の戦闘妖精……、もといAIとイチャコラする系なのか?」と思いつつ読み進めると、そうではなかったことに気づきました。浅はかな考えをしていた数分前の自分を殴り殺してロケットエンジンの固体燃料にしてやりたくなりました。
これはあくまで人の話であり、仕事や物事の考え方の話です。
そこにちょっとしたSF要素やAIというエッセンス(本質的なモノという意味)が存在することで、わかりやすい構造と物語らしい雰囲気が出ているのです。
ラスト近くでは、学芸員のセリフからそれが顕著に読み取れます。
とても良質なものを読ませていただきました。
こう、長々と書いてきましたが私の言いたいことはただ一つです。
_人人人人人人_
> てぇてぇ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
>この人の感性と普通の人の感性が相互理解可能になる仕事こそが、学芸員だったのだ。
この一文、その説得力といったらもう!
にやにやとしてしまう作品でした。
ただ、きっとすべての人がそう受け取るわけではないことも承知しています。
この物語は、少なくとも現実の学芸員と仕事をしたことのある私にとって、このセリフほど「学芸員らしさ」を表現しているものはないと思えるものでした。
SF、しかもミュージアム学芸員が登場する作品。
私にとって理想がつまった作品と出会えた喜びに勝るものはありません。
淡々としている中にも密かな萌があります。
学芸員の告白に、それをきちんとキャッチする主人公。
名前は出てこないですが、こういう作品もありだなと思いました。
応援させていただきます!