概要
これは、怪異に囲まれた少年の、怪異の存在しない怪異譚——。
▼ 主要登場人物 ▼
・暮樫 或人 / くれがし あると ……… 主人公。高校二年生。
・暮樫 言鳥 / くれがし ことり ……… 或人の妹。高校一年生。
・布津 智久 / ふつ ともひさ ………… 或人の友人。高校二年生。
・五筒井 佐波 / いづつい さなみ …
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!断絶という絆
この物語は視えない兄と視える妹の視差から来るある種のミステリーとなっている。
ほとんどの読者と同じく主人公は、怪異を察知できない。彼の感覚の網に飛び込んでくるのは、私たちが暮らしているようなごく普通の日常である。
一方、妹である言鳥はまったく別の世界に住んでいる。この世ならざる存在と日常的に触れ合っている彼女と兄との間には深い断絶がある。
このあたりは切なくもありユーモラスでもある。また芥川の『藪の中』のような真実を巡る多角的視点にもなっているところが面白い。
読み進めていくとこの兄妹の断絶が実は断絶でないことに気付く。ふたりはそのギャップによって相互補完的な存在となり、結びつき合っ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!怪異の存在を問う、霊能ゼロ少年の怪異譚
妖怪小説なのに主人公には特殊な能力がなにもない──どころか、そもそも妖怪の類いが見えないし感じられない。そんな彼が学校を舞台に頻発する怪異事件に飄々と対処していく小説です。どこまでもマイペースかつあらゆる意味で鈍感な主人公と、伝奇ものの主役みたいな能力を持った妹(超可愛い)の世界観の食い違いぶりが見ていて楽しいです。主人公に呆れながらも付き合う友人もいいキャラしてます。
一口に妖怪といっても国や地域、共同体ごとに差異があり、ある地域の妖怪が別の場所ではまったく知られていないということはよくある話です。また、当時の風俗を織り込んだ洒落で創作された妖怪が、現代ではそれと分からず伝承のある妖怪とご…続きを読む - ★★★ Excellent!!!見えない方が主人公という斬新な切り口。
美少女が日本刀を振りかざして怪異を一刀両断! 本来ならばこの美少女が主人公になるはずだが、この作品は違うのだ。何と主人公は怪異が全く見えない、聞こえもしない、効かない、という平凡な美少女の兄だ。
全くもっての鈍感さゆえに、怪異の攻撃が効かない。故にある意味怪異に対しては最強。どんな攻撃も見えないし聞こえないし、効果がない。ただただ怪異を倒すために戦う妹を愛してやまないのである。
そんな主人公がひょんなことから学校にまつわる怪異の調査を依頼され、友人と一緒に学校の怪談を検証し始めるのだが……。
何やら主人公たちの周りでは剣呑な雰囲気もあり、物語は新たなステージに移行する予感。でも、そん…続きを読む - ★★★ Excellent!!!マイペースな心霊無自覚最強主人公登場!!
面白いです!
既出のものだけでなく、まだ出てこなかったり、ちらっと出てきた設定も深く組まれているのだろうと感じました。
暮樫家の秘密が気になります。
主人公或人君の終始絶好調のマイペースキャラが魅力ですし、妹の言鳥ちゃんのツンデレときたら……いいです!
性格面だけじゃなく、全く端っこと端っこに位置する二人の霊的体質も見どころ。
周囲を飾る他のキャラも個性的ですし、一番気になるのは兄妹二人の叔父さんですね。きっと彼は色々と知ってるんでしょう。
学校の怪談の諸々も登場しますし、怪談好きにはわくわくする作品にもなってます。
読めばきっとハマります。おすすめですよ~。(^◇^) - ★★★ Excellent!!!見えすぎる妹が、見えない兄を怪異から守る
暮樫或人は怪異が見えない。
一見これは普通のことに思われるかもしれないが、暮樫の家は基本的に怪異が見えるらしく、彼が唯一の例外ということになる。
問題は「見えていなければ存在しない」というわけではないということだ。
これはなかなか小説というメディアの面白いところで、もしもずっと或人の一人称で物語が進むのであれば、怪異たちの存在は、二次創作的には存在するかもしれない潜在的な可能性としてしか把握することができない――つまり怪異は存在しないということになるが、この作品ではもう一人の視点人物として妹の言鳥が活躍する。
言鳥は例外である兄とは異なりもちろん怪異が見えるわけだが、そちらの方はまるで兄…続きを読む