見えすぎる妹が、見えない兄を怪異から守る

暮樫或人は怪異が見えない。
一見これは普通のことに思われるかもしれないが、暮樫の家は基本的に怪異が見えるらしく、彼が唯一の例外ということになる。

問題は「見えていなければ存在しない」というわけではないということだ。
これはなかなか小説というメディアの面白いところで、もしもずっと或人の一人称で物語が進むのであれば、怪異たちの存在は、二次創作的には存在するかもしれない潜在的な可能性としてしか把握することができない――つまり怪異は存在しないということになるが、この作品ではもう一人の視点人物として妹の言鳥が活躍する。

言鳥は例外である兄とは異なりもちろん怪異が見えるわけだが、そちらの方はまるで兄の物語の反動でも受けたかのようにオカルト異能バトル然とした物語を展開する。

面白いのは言鳥自身が、兄には見えないものが見えてしまう自分の物語それ自体が虚構でないとどうして言えるのか、というようなメタ視点を持っているところだが、そういった視座がどう展開していくかも一つの見物となるだろう。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)

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