恋人の安奈から浮気相手である陽斗(はると)を紹介され、伊月(いつき)は喜んだ。なぜなら彼にとっての喜びは、安奈が楽しく生きてくれていることだから。もちろん安奈にも陽斗にも理解されず、話は拗れかけるのだが……「シフト制にしないか?」。伊月のひと言から、彼と陽斗が交互に安奈の恋人となるお試し期間がスタートするのだった。
伊月さんの思考、実に今時なリアリティを感じるわけですけれども、目を惹き込まれたのは安奈さんを挟んだ月=伊月さんと太陽=陽斗さんの関係性です。
月と太陽、これがまさにキーワードとなって物語に仕掛けられた謎を解き明かし、果たして読者へただの拗れた恋愛物などではありえない真実を見せつける。これはまさに構成力の妙!
読後感はおそらく人それぞれかと思います。が、エンディングであらためて浮き彫られる伊月さんという人の有り様は、人を選ばずその胸を強く打ち据えるのです。
9000字に満たない文字数とは思えない、濃密で酷薄で優しい恋愛ドラマです。
(「現代ドラマ×恋愛=多彩!」4選/文=高橋剛)