情感溢れる傑作

結末は伏せておくとしても、ひとつだけ、この小説には安易なハッピーエンドにはない感動があります。

好々爺然とした人物が一転許しがたい卑劣漢であったりと長くはない物語に人間の裏表が描かれており唸らされる。

中でも剣術の描写は素晴らしい。活人剣・殺人剣のイメージが、この小説を読むことで更新されました。

抑制の効いた筆致で描き出す世界は、しかし濃厚で豊かです。少女の想いを一顧だにしない時代の野蛮さと政治の力学に読みながら怒りをおぼえてしまいました。

それほどに感情を揺さぶる傑作です。