懐中時計のシチューに恋心のパイ、懐古のドライフラワーに絵本と四つ葉のオーブン焼き鳥……
幻想的な料理の数々は現実には食べられないようなものばかりだけれど、気になる料理を選んで読みはじめると、あら不思議。食べられないと思いこんでいたはずの《言葉》達が綺麗に皿に盛りつけられ、よい香りを漂わせて、あなたが食べるのを待っているではありませんか。
ナイフとフォークで丁寧に切りわけて、あるいは銀のスプーンですくって、お行儀よく舌に乗せれば、それぞれの料理の味がとろりと広がります。甘味 酸味 塩味 苦味 うま味……想像できないと思っていた料理の味が、こんなにもあざやかに胸を満たしてくれます。
まさしく、これはまさしく《言葉》の美食。
詩画集の頁をめくるように、品書に視線を落とすように。
さあ、今日はどのお料理に致しましょうか。