概要
彼女の屋敷に残されたのは、双子の娘――次期歌姫メルと声なき少女ポル、そしてある晩ポルが母の部屋から見つけた、怪しい「魔術書」だった。
「魔術書」をたどって母の死を読み解き、自らの声を手に入れるため、ポルは貧民街に住む盲目の少年ルズアと旅に出ることを決意する。一方でメルは、母のいない屋敷と歌姫の地位を継ぐことを心に誓う。
二人の娘は母を殺した人物を見つけ、王国の闇から生まれ育った屋敷を守ることができるのか。
歌と魔法と冒険の、長編ファンタジー。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!子供の頃大好きだった、あの果てしなく広がるファンタジーの世界——!
主人公のポルはまもなく十五歳になる少女。彼女は生まれつき声を出すことができず、高名な歌姫である母は、彼女には見向きもせず屋敷に閉じ込め、彼女の双子の妹であるメルばかりを可愛がっているように見えます。
と、ここまで読むと、シンデレラのように虐げられた可哀想な娘さんが大逆転する物語かなとも思ってしまうのですが、あにはからんや。
双子の妹のメルはポルのことが大好きで、屋敷の使用人たちもポルのことを心の底から大切に思い、仲良しのメイドのエリーゼはポルの誕生日のプレゼントとして、彼女を外に連れ出す約束をしてくれます。喜びのあまり、鼻血を出しながらも浮かれるポル。鼻血を出しながらめげずに大喜びす…続きを読む - ★★★ Excellent!!!綿密に作り込まれた世界へと迷い込みたい方へ!!
一章を読み終えてのレビューです。
声なき少女ポルが魔術書を手掛かりとして母の死の真相、そして自らの声を取り戻すために、スラムで暮らす盲目の少年ルズアと旅立つ――。
旅の目的は希望に満ちているようで、しかしすべてを希望だけでは語れない複雑は思いと状況があります。たとえポルが声を取り戻したとしても、その声をいちばん届けたかったはずの母は亡くなってしまっている。声を取り戻したあと、彼女はどうするのか、周囲の人たちはどう変化していくか、不穏な人たちとどう向き合っていくのか。それはこの先のお話を楽しみにしたいと思います。少年ルズアとの距離感が旅を経てどう変化していくのか、そちらも楽しみです!
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!絶望を希望に変える、魔法の冒険
タイトルにもあるポルが、本編の主人公。生まれつき声が出せず、彼女の母であり国一番の歌姫でもあるリーアンからは、満足に語りかけてもらえる事も、微笑みかけてもらえる事もありませんでした。
ーー自分に声さえあれば、歌さえ歌えればーー
そう思案しつつも平穏に過ごしていたある日の事、リーアンが出先で何者かに殺害されてしまいます。
ーー死に顔にすら浮かべられた微笑みが、私に向けられたことは一度もなかったーー
悲嘆と絶望の中、その死の真相を探るため、15年間屋敷から出たことすら無かった彼女は、特異な出会いを果たした盲目の少年、ルズアと共に旅に出ることになります。
ポルにとっては何もかもが初めての…続きを読む - ★★★ Excellent!!!どんな状況だって、歩いていける。
声なき少女は、憧れと共に「外の世界」へと飛び出した。
次に飛び出す時に抱いていたのは、覚悟と使命感だった。
本に書いてある事だけが、世界の全てではなかった。
初めてだらけの世界を歩むべく、少女は想いを燃やし続ける。
道標となるその灯りは、少女の為に留まらず、やがて、周りの人々にとっての確固たる希望となる。
どうしようもない状況に陥っても、転んでしまうことがあっても、諦めずに歩き続けるポルちゃんと、彼女を支え助ける周りの人々の姿に、何度も胸を打たれました。
共に歩む仲間が、それぞれの形で望んだ「外の世界」。読者として、これからも一緒に旅する中でそれらに立ち会えるのが、嬉しくて楽しみです。