概要
『静かに始まる物語が、好きな方へ。
悲しみごと、打ち直す──女鍛冶師の芯は、鋼のようにあたたかい』
人の“心の闇”が、色や言葉として視えてしまう──
帝に仕える名門鍛冶師の家・焔ノ宮《ほむらのみや》の跡取り娘・葉乃香《ハノカ》は、冷たく燃え続ける、神聖な「神火《しんび》」に違和感を抱いていた。
「心を込めた鍛冶がしたい」という願いを胸に、成人の儀を前に故郷を離れる。まだ自覚はなかったが、それは“誰かの痛みを救う鍛冶”の始まりでもあった。
たどり着いたのは、山奥の小さな郷にある寂れた鍛冶場。
そこで出会ったのは、荒っぽい口調のくせに世話焼きで、不思議とあたたかい火霊・熱火《ネッカ》だった。
ネッカの“狐火
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!優しい大和撫子系主人公!!!!
緻密な描写、空気感が素晴らしい。
まるで、そこにいるかのような描写力です。
独自の世界観、風習の描写もグッとくる。
本作の主人公はある鍛冶屋の跡取り娘ハノカが家出したことから始まります。
泣きごと言うな系のお堅いお父様。
お堅いけど、個人的に気になる魅力をお持ちの御方。
優しい祖父は「灯に寄り添う子」とハノカさんを評します。
ハノカさんは礼儀正しく、少し控えめで、慎ましい大和撫子を思わせる性格。
彼女の歩く先を最後まで応援したいですね。
なかなか図太くも、面白いネッカ様に食べ物をねだられて、その供え物まで指定される始末。
だけども、憎めない火霊様。でも、やっぱり口が悪い狐様。そ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!刃を鍛え、心を救う──魂を打つ鍛冶師の物語
和の情緒に包まれた鍛冶ファンタジー。
名門を出て自分の道を探す心優しい女鍛冶師・ハノカは、人の心の痛みを“色”や“声”として視てしまう力を抱えています。
彼女の前に現れるのは、火霊ネッカ。
青白い狐火と毒舌を携えた“導き手”でありながら、要所で差し出す言葉は鋭くも温かい。
そんなネッカとのやり取りをはじめ、日常で出会う人々との交流、そしてほんのり漂う恋の気配──。
物語は「魂を打つ鍛冶」を通じて、痛みや悲しみに寄り添う姿を描き出します。
派手な戦いではなく、“魂を打つ”という核心へと確実に辿り着く。
痛みの核に触れ、それでも灯を選ぶハノカの姿が心を打つ、おすすめの物語です。 - ★★★ Excellent!!!心に嘘はつけない。おっとり女鍛冶師×まんまる狐の神様の心温まる物語
名門鍛冶場の跡取りながら家を飛び出した女の子、ハノカ。その理由は決して鍛治師であることが嫌になったわけではなく、家の炉に灯る炎に違和感を感じた『自分の心』に嘘をつけなかったから。心優しくおっとりした性格ながら揺るぎない芯を持つ、職人気質のハノカに好印象を抱きました。
そんなハノカはたどり着いたとある郷の鍛冶場を継ぐことになります。そこで出会うのがまんまる可愛い狐のお姿ながら口の悪い火霊・ネッカさま。戸惑うハノカにずけずけとものを言う様は若干ハノカが可哀想になりますが(笑)、他人の陰気や邪気(心の闇のようなもの)が見えてしまうことに苦しんでいたハノカに力を貸してくれます。
ハノカ視点の文体…続きを読む - ★★★ Excellent!!!揺らぐ心ごと、抱いて進む覚悟
小さな選択の積み重ねが、やがて大きな覚悟へと育っていく。
本作は、日常の温もりと、見えざるものとの対峙が交差する中で、ひとりの少女が「守る強さ」を探し続ける物語です。
澄んだ山の空気や鍛冶場の熱気、仲間との軽妙なやりとり。そうした細部が積み重なり、現実感のある手触りを与えながら、ふとした瞬間に心を揺さぶる試練が訪れます。選ぶたびに胸を締めつけ、けれどその先には必ず新しい光が差し込む。
読み進めるほどに増していくのは、「この子の歩みを見届けたい」という気持ち。炎に映し出されるのは、ただの成長譚ではなく、読者自身の心にも重なるような“覚悟の物語”です。 - ★★★ Excellent!!!たたらの火を継ぐ心豊かな女性は旅の果てに何を見つけるのか
作家性という言葉があります。
緒とのわさんのこの作品には、間違いなく書き手の持つ豊かな心が滲み出ています。
スローライフと言う言葉で括るのは勿体ないほど、丁寧な筆致で見事なもの。
心情も風景も、この作品だからこそ味わえる描写です。
やさしさ、あたたかさ、そういった表現もできますが、私はずばり「豊かさ」だと思っています。
作者の持つそれが作品に浸透し、作品世界を織り上げていく。
読者を急かすことなく、それでいてじっくりと進む展開をしっかりと読ませる。
とても春から執筆を始めたとは思えない高いクォリティは必見です。
万人受けする作品は意図して狙うとかなり難しいのですが、こ…続きを読む