ポルとルズアの二重奏

音音寝眠

1章 途切れた独唱曲

1-1 序



今でこそ僅かにといえど存在している“魔術”


それを操る者がこの世から消え去ってしまっても、魔術の存在そのものは消え去らない。


それは、ともすれば非常に恐ろしいものを、真に知り制御する者がいなくなるということである。


我々が出来ることは、魔術を知る者、世に言う“魔女”の血を広がり過ぎぬよう細々と、しかし絶対に絶やさないことである。



しかし、先の戦争のようなことが起これば、そのわずかな血が絶えてしまわぬとも限らない。

そのために、ここに唯一の“魔術書”を残すのである。



人間は怠惰で欲深い生き物だ。

無知な者には、魔術は万能に見えることだろう。

それは全くの間違いだ。


魔術といえども物々交換と変わりはない。

代償の要らないものなどこの世にはないのだ。


利益だけを求める愚か者にはそれが解らないのである。




―――“ベルンスラートの魔術書・序章”より

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