第59話 『ラルフ。嫁を迎えに行く』
オリヴィアと輝夜を連れて『管理者』の本拠地へと渡った俺を待っていたのは…。
「やぁ。思ったよりもずっと早かったね」
あの時、俺の元からソフィアを連れて行った調停者の男だった。
「思ったよりも道が空いていたのさ」
軽口を叩きつつ警戒は怠らない。
少なくとも調停者が大魔王クラスか、それ以上の力がある事は間違いない訳だから油断して良い相手ではない。
「ソフィアは何処だ?」
「僕とのお楽しみを終えてベッドでお休み中…って言ったらどうする?」
「連れて帰る」
「…冗談さ。僕には性欲も生殖機能もないよ。だから、そんな怖い目で睨まないで欲しいな」
自覚はなかったが俺は相当な目で目の前の男を睨んでいたらしい。
「本当の事を言えば『彼女』は最近色々と問題行動が多かったから管理者に直接調整を受けているところだよ。君の事を念入りに消去している最中さ」
「……」
「今度は睨んで来ないんだね」
「そういう事をされているのは分かっていた事だ。それに別に今回は初めてって訳じゃないんだろう?」
「そうだね。初日から君の…というより人間種だった頃の記憶は念入りに消しているみたいだけど、どうやら上手くいっていないらしい」
「だろうな」
俺と夫婦として過ごした思い出は表層ではなく、もっともっと深いところに刻まれているのだから。
「今度は僕から聞いて良いかな?」
「なんだ?」
「君…どうやって『ここ』に来たの?ここは『管理者』が作り上げた特殊な空間で、世界から完全に隔離された場所の筈なんだけど」
「……」
「それに君の掌に浮いている、その『紫の球体』は何かな?」
「覗き見していたくせに白々しい事を言うな」
こいつは俺が『紫の球体』を作り上げたところも、これでガブリエルの存在を抹消した事も、そしてサミエルの転移を悉く回避した事も『見ていた』筈だ。
「まぁね。その『紫の球体』の正体にも大体予想が付いているよ。その力を得た君が大魔王に匹敵する力を持っている事も認めよう」
「どうかな。まだ試していなから本当に大魔王に匹敵する力を得たかどうかは分からんぞ」
「間違いないさ。君が倒したガブリエルは実は大魔王クラスの力を持っていたからね。本人は実際の力以上を手に入れたと自分の力を過剰に受け止めていたけど、それでも10回やれば2回くらいは大魔王に勝てる力を持っていたよ」
「その割にはあっさり死んだけどな」
「そこは天使だから仕方ないさ」
「?」
天使だから仕方ない?
「君の居た世界は、世界を安定させる為に3つの超越者が存在する事が定義されているんだ。君の認識で言えば『大魔王』と『精霊王』と『大賢者』がそれに対応している事になる。彼らが3つの勢力を作り上げて三竦みになるのが理想だね」
「……」
「でも実はその役目の一角は本来は天使が担う筈だったんだ」
「…その役目を大魔王に取られたって訳か」
「その通り。地上に落ちて『堕天』した彼女は超越者となって君臨してしまったので天使達は無用の産物に成り果ててしまった。けれど無用で無意味なプライドと自尊心を肥大化させた結果…あの有様って訳さ。ガブリエルも大魔王クラスの力を持っていたというだけで超越者って訳じゃなかったしね」
「さっさと排除すれば良いものを」
「無茶を言わないでくれるかな。僕達に直接世界に干渉する権限は与えられていないよ。天使達が無用の産物になったからといって、それを僕達が直接排除するような事は不可能さ」
「ソフィアを迎えに来た時は例外中の例外という訳か」
「そういう事になるね」
ひょっとすると本気で抵抗すれば連れて行かれなくて済んだかもしれない。
「言っておくけど僕達の意思で直接介入は出来ないというだけで、僕達の妨害をしようとするなら実力行使は認められているんだよ」
「あっそ」
どの道、俺があの時点でソフィアを引きとめる事は不可能だったらしい。
「だから…『彼女』を迎えに来た君達を排除する事も僕の権利で可能という事だよ」
「 「 っ! 」 」
調停者が発した圧力に俺の背後に控えていたオリヴィアと輝夜は身構えるが、即座に調停者から感じる圧力が霧散して構えを解除した。
無論、調停者が圧力を掛けてくるのを辞めたのではなく、俺が2人を護っているだけだが。
「やるね。並みの人間なら、これだけで気絶するか、最悪心臓麻痺を起こしても不思議じゃない圧力を掛けているんだけどね」
「力ずくで排除して良いって判断しても構わないんだな?」
「この場所では僕達には制限が無い。やれるものならやってみると良いさ」
「お言葉に甘える事にしようか」
「おっと。その前に…場所を変えさせて貰うよ」
「っ!」
調停者が指をパチンと鳴らすと俺は真っ白な広大な空間に立っていた。
傍にはオリヴィアも輝夜も居らず、居るのは目の前に立つ調停者のみ。
「『管理者』の領域のみで『調停者』だけが使える能力の1つさ。僕達は任意の対象を任意の場所へ自由に移動させる事が出来る」
「…出鱈目だな」
「ここなら余計な邪魔は入らないし、君もお連れさんを気にしなくて済むだろ?」
「そいつは…どうもっ!」
俺は『紫の球体』から紫色の槍を調停者に向けて飛ばす。
「おっと」
調停者は手を掲げるだけの動作で透明な壁を作り出して槍を防ぎ…。
「っと!」
防ぎきれずに透明な壁を貫通した槍を慌てて回避する。
「おかしいな。この障壁は世界最硬度の防御力を誇っている筈なんだけど…君の力を少し見誤ったかな?」
「……」
「僕の予想では、君がやった事はプラスとマイナスの因子を持った『核融合』を『対消滅』させて『
「…さぁな」
調停者の推測はあながち間違えてはいない。
俺が『対消滅現象』を利用した最初に作り出した『黒い球体』は正確には球体ではなく3次元的に空間に空いた『穴』だった。
そして、それは『ブラックホール』と呼ばれる現象に限りなく近い事も事実だ。
「それに色々と説明がつかない事が多いんだよね。僕の認識では『ブラックホール』というのは『無限に吸い込む穴』というだけで、それを制御出来たとしても『転移』する為の能力には繋がりにくい」
「…教えてやろうか?」
「そうだね。もうちょっと調査して分からなかったら教えて貰おうか…なっ!」
調停者の周囲に数えるのも馬鹿らしくなる数の光の球体が浮び、それが一斉に俺に向って解き放たれる。
これでは逃げ場は無いが…。
「おかしいなぁっ!この場所では転移が出来ない筈なんだけどねぇっ!」
俺が今まで立っていた場所から消えて、調停者の背後に回りこんで槍を再度撃ち込み、更に周囲の光球が次々と何処かへと消え失せる。
調停者は俺の槍を防御不能と考えて回避を選択し、宙に逃れたようだが…。
「良いのか?そんな安易に空に逃げて」
「どういう意味かな?」
「その位置だと…俺の力の正体を解明する前に終わっちまうぞ?」
「っっ!!!」
宙にいた調停者の身体が音速を遥かに超えた速度で床に強烈に叩きつけられる!
それ程高く飛んでいなかったとはいえ、僅か10メートルの距離だとしても時速数千キロ以上の速度で叩きつけられれば当然大ダメージだ。
「あ…がはっ…!」
「これでまだ原型を留めて生きてんのかよ。普通に化け物だな」
「…君に…だけは…言われたくないかな」
おまけにダメージは受けているようだが普通に立ち上がってくる。
「でも、やっと分かったよ。君の力の正体。君は…『ブラックホール』をコントロールしていた訳じゃないんだね」
「……」
「君がやっている事は『ブラックホール』という『無限に吸い込む穴』を利用して『無限のエネルギー』を生み出す回路を作り上げているんだな」
「正確には『無限に近いエネルギー』ってだけだがな」
「十分過ぎるだろう。そんな空想上でしかありえない回路を現実に作り上げているんだから。確か、その回路の名前は…」
「ああ。『縮退炉』だな」
俺が空間を移動するのに使っているのは転移ではなく空間に直接穴を開けて『ワームホール』を作り出して任意の場所と繋げているだけだし、槍の効果は『空間を削り取る』というだけだし、空中から叩き落したのは奴に掛かる『重力を1000倍』にしただけだ。
『ブラックホール』を元にしたエネルギーだからなのか、その性質上『重力関係』か『空間関係』の能力しか使えないのが玉に瑕だ。
「君がさっき言った言葉をお返しするよ。君の方が絶対に…『出鱈目』だ」
「そいつはどうも」
おざなりに礼を言って――戦いを再開した。
「正体さえ分かれば、対処の方法がない訳でも無いなぁっ!」
「……」
再び調停者が放ってくる馬鹿らしい数の光弾を周囲に『ワームホール』を作り出して別の空間へと隔離する。
「ちょっと反則だけど…使わせて貰うよっ!」
そうして俺を足止めしつつ、調停者は何処からか『銀色の槍』を取り出して俺に向けて投擲してきた。
かなりの速度で迫る槍だが、こんな物は『ワームホール』で隔離して…。
「っ!」
隔離出来ずに槍が『ワームホール』をすり抜ける!
「がぁっっっ!!!」
そして俺の身体に突き刺さった槍は俺の四肢を引き千切りながら速度を落とさずに広大な白い空間の端まで運んで――俺を串刺しにした。
「『
「……」
「あらら。流石に死んじゃった?」
心配しているのか呆れているのか分からない調停者の目の前で――俺の身体が炎に包まれる!
「か…はぁっ…!」
危ねぇっ!一瞬気絶しかけた!死ぬところだった!
「ああ、なるほど。君に『火の最上級回復魔法』がある限り意識を失わなければ頭さえ無事なら何度でも復活出来るんだね」
「……」
その考察には少し語弊がある。
俺は確かに『核融合』や『縮退炉』を扱って、それらの行使には『魔法力』を消費しないが――純粋な魔法である『火の最上級回復魔法』は俺の魔法力を大幅に消費する。
人間種の中では高い魔力を持っているとはいえ復活出来るのは――多く見積もっても後3回が限度というところだろう。
まぁ、それ以前に『最上級』に位置する魔法を咄嗟に行使する為には事前準備が必要だが。
「それじゃ…続きと行こうか」
そして再び『銀色の槍』――『
「厄介な物を持ち出してくれるな」
「君に言われるのだけは心外だな」
試しに空間を削り取る槍を放つが――『
やはり攻撃だけではなく防御にも有効のようだ。
と、なると…。
「君は今、僕が槍を投擲した瞬間に集中攻撃を仕掛けようと思っただろう?」
「……」
まぁ、こんな推測は誰にでも出来る。
他に出来る手段が無いのだから当然の推測だ。
「残念ながら僕は君と違って接近戦も結構得意なんだよ。伊達にこんな武器を愛用している訳じゃないんでね」
「……」
確かに『センサー』があると言っても、こんな反則武器を持った奴に唯のダガーで接近戦を挑みたいとは思わないわな。
まぁ槍を手放すかどうかはさして重要じゃない。
「っ!」
奴の背後の空間に『ワームホール』を作り出して、その中から数え切れないほどの数の『それ』が飛び出す!
「これは…僕の光弾かっ!」
「…貰った物はキッチリ返すぞ」
『ワームホール』を通して隔離しておいた調停者の作り出した数え切れないほどの光弾を背後から浴びせかけてやった。
そうやって今度は俺が調停者の足止めをしている隙に――『切り札』を用意する。
「例え、その槍があらゆる事象の干渉を受けなくても…お前自身はそういう訳には行かないだろ?」
調停者の持つ槍が光弾を防ぐ範囲を逆算して事象の干渉を無効化する範囲を調査してみたが、その範囲は『槍に直接触れる』程度の範囲だった。
それを確認して俺は『縮退炉』から生み出される『無限に近いエネルギー』を『1つの事象』へと変換させて――調停者にプレゼントしてやった。
「
「がっ…!あがぁっっ…!」
槍を持った両手には流石に影響を与える事が出来ないものの、それ以外――調停者の全身に纏わり付いた『紫色の霧』は調停者の身体に纏わり付いて徐々に破壊していく。
「あ…がぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
溜まらず槍を握っている事も出来ず床の上を転がりまわる調停者。
「つ~か。普通なら一瞬で身体が蒸発するような攻撃なんだが…本当に頑丈だな」
『
並みの振動ではないので揺らされた部分は一瞬で沸点を越えるし、そこで発生する熱量は『核融合』を容易く引き起こす。
つまり調停者は体中で『核融合』を引き起こされて超高熱と放射能の嵐が身体の中で巻き起こっている筈なのだが…。
「どうやって原型を保ってんだ?」
床を転げまわって苦しんではいるが、それでも調停者の身体が崩れる事は無かった。
「単純に我らの肉体は不滅であり、朽ちぬように作られているというだけだ」
「あ」
呆れる俺に解説してくれたのは、いつの間にか『そこ』に居た『調停者ソフィア』だった。
「もう十分であろう。死にもせんし、狂いもせんが…ここまでやれば貴様の勝ちだ」
「勝利者の賞品を貰えるなら言う事を聞いても良いけどな」
無論、俺が欲しいのは『彼女』――ソフィア自身だ。
「我の中に既に貴様と過ごした記録は消去されて存在しない。そんな我でも貴様は欲しいと思うのか?」
「当然だ」
「っ!」
俺が即答するとソフィアは息を呑んだ。
「それに…まだまだ手遅れって訳でもなさそうだしな」
「何?」
「精霊王って覚えているか?大魔王と因縁がある陰険で猜疑心の強い女なんだが…」
「管理者の保存している『記録』だけだが読んだ事がある」
「そいつが俺の恋人であるオリヴィアに持たせた『通信石』ってのがある」
「それも知っている。名前とは裏腹に通信機能ではなく所有者の行動を記録して保存する為の…!」
そこまで言葉にしてソフィアは目を見開いて自身の首に掛けてある『首飾り』を凝視した。
「貴様…まさか…」
「『それ』まで捨てられていたら流石に俺も諦めざるをえなかったよ」
俺がソフィアに贈った『首飾り』に嵌めこまれた『白い石』は『通信石』の記録媒体を材料に作られたソフィア自身の『思い出』を詰め込んだ魔法具だ。
更に俺が『ここ』に来る為の目印としての役目も兼ねている。
「捨てないでくれて、ありがとう。信じていたよ」
「っ!」
俺の言葉にソフィアは明らかに怯み、目を泳がせて――『首飾り』を無意識にだろうが握り締める。
「む、無理だ。我は…私は『管理者』によって作られた『調停者』だ。休暇ならば兎も角、『管理者』の意志に反してこの場を捨てて離れる事は…出来ない」
それでもあがいてくるソフィアだが、俺にはそれは『最後のあがき』にしか見えなかった。
「別に『管理者』を裏切れとか、『調停者』を辞めろと言っている訳じゃない」
「ち、違うの?」
「俺は『妻の仕事』に理解がある方だからな。妻が仕事で家を空けるというなら、帰ってくるまで待っているだけさ」
「……」
「でも、せめて週末くらいは家に帰って来て欲しいな」
「あ」
ソフィア自身が言った事だ。
『休暇』なら、この場を離れる事も出来る、と。
「で、でも…でもでも!まだまだお仕事が沢山残っているの!それを片付けるのに沢山時間が掛かりそうなのよ!」
「俺が『こっち』に遊びに来る分には問題ないんだろう?ついでに仕事を手伝っても良いし」
「あ。その…それは…凄く助かる…けど」
ソフィアは口をパクパクさせて暫くの間は迷っていたけれど…。
「い、良いの?」
俺を上目遣いに見つめて哀願してきた。
「きゃっ…!」
悶絶的に可愛くて思わず抱き締めてしまった。
「ま、待って。まだ…記録を…『思い出』を読み込んでないから…ちょっとだけ待って」
慌てて『首飾り』を手にとって中に記録してある『思い出』を読み込んで自分の中に取り込んでいくソフィア。
「あ」
そして『思い出』を全て自分の中に取り込んだソフィアは――ポロポロと涙を零し始めた。
「ごめん…なさい。それに…待っていました。旦那様」
「ああ」
強く、強くソフィアを抱きしめる。
「愛しているよ、ソフィア」
「はい。私も…愛しています、旦那様♡」
愛の言葉を囁きあい、これで終われば色々と後味も良かったのだけれど…。
「いやいや、良かったねぇ。ハッピーエンドだねぇ」
「 「 …… 」 」
無粋な声に雰囲気をぶち壊しにされて俺とソフィアの機嫌が斜めに傾いていく。
「…まだ生きていたの?」
「酷っ!君の為にひと肌脱いだ僕に対する仕打ちにしては酷すぎないかいっ!」
声の主はさっきまで床の上を転がりまわっていた調停者だった。
「素直になれない君の為に色々と画策して、おまけに君の『思い出』が詰まった『首飾り』を指摘せずに放置して捨てる事を事前に防いであげたっていうのに…」
「そもそも旦那様に喧嘩を売る意味が不明です」
「そこはなんというか…娘を嫁にやる時に父親の心境っていうの?」
「…結局、余計な事をしないで傍観していたくせに、最後の最後で余計な事をして馬鹿を見たというだけじゃない」
「あはは~」
ソフィアの辛言に乾いた笑いを漏らす調停者。
実際には俺が『
最初から俺とソフィアの仲を妨害するという意思は感じなかったが、逆に言えば応援するという意思も感じなかった。
調停者というよりは『傍観者』と言った方が良いような立ち位置にいる奴だった。
恐らく自身の感情は既に枯れ果てていて、他者にも興味を示さないが――自分と同じ存在であるソフィアが『恋愛感情』にうつつを抜かしているのを見ているのが楽しいとか思っているのだろう。
平たく言えば『ドールズ』以上に悪趣味な出歯亀野朗って事だ。
★
『管理者』というのは人物ではなく自我を持たないシステムの名前だったらしい。
世界の破滅を避ける為に創造された、世界を監視して管理する為のシステム。
誰が作ったのかは知らないが『管理者』という名前のシステムが存在して、その『管理者』に作られた『生体デバイス』とも呼べる存在が『調停者』らしい。
システムという形骸化した存在である『管理者』の手の届かない部分を補佐するのが仕事で『安定した効率』を最優先に求められる。
だからこそ俺に価値観を狂わされて『休暇』を申請したソフィアの提案が容易く受け入れられた訳だし、俺が傍に居てソフィアが安定するのならそれを拒む理由は『管理者』には無いらしい。
★
あの後。
とりあえず俺が手伝う事になったらソフィアは週末には家に帰って来られる事になった。
記憶もバッチリ戻ったし、元の甘々な日々が帰ってきた。
ただ――明らかに魔王をやっていたときよりも俺が忙しい。
「愛しています♡旦那様ぁ♡」
まぁ何気にソフィアは前以上に甘えてくるようになったけど。
俺と会える時間を本当に宝物のように大事にして、1分1秒を大事にしているようだった。
8ヶ月も離れていたという事も原因だろうけど。
「ソフィア様。後の事はわたくしに任せてさっさと仕事に行ってくださいませ」
無論、それでオリヴィアが遠慮する訳も無いのだけど。
「ええ。私の居ない間は私の『代わりに』旦那様をよろしくお願いしますね♪オリヴィアさん」
「ソフィア様が『キャリアウーマン』ならわたくしは『専業主婦』ですわね♪」
「…うふふ」
「…まぁまぁ」
修羅場ってこんなに簡単に出来上がるものだったっけ?
ソフィアは週末には帰ってくるけれど、週に2日は俺の方が管理者の本拠地へ出向いてソフィアを手伝う事になっている。
無論、お泊り込みで。
つまり週7日の内、3日はオリヴィアの為に使って、2日はソフィアの為に使って、週末の2日は2人の為に使っているという事だ。
現時点ではオリヴィアの方が1日多いのだが、そこは『管理者』に支配された『調停者』の限界という奴だ。
これ以上ソフィアとの時間を作るのは現時点では難しいそうだ。
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