リアルでガチな天才が異世界に転生しても天才魔法使いになって元娼婦嫁とイチャイチャする話。

@kmsr

プロローグ 『転生前のお約束』


 例えば『どんな願いでも1つだけ叶えてくれる』なんて言われたら、どんな願いをすれば良いだろうか?


「ありきたりだが『叶えられる願いを100個に増やしてくれ』とかいうのは?」


「ああ。可能だよ」


 残念ながら俺はどこぞの★入りのボールを7個揃えた訳でもなければ、古臭いランプを拾って擦った訳でもない。


 唯、唐突に俺の部屋に現れた『そいつ』は俺に対して『どんな願いでも1つだけ叶えてやる』と言ってきたので、その返答が最初に問答だった。


「但し、願いを叶えるのは我の自由意志…つまり権利だ。願いを100個に増やすという事は可能だが、100個に増やした願いを聞き届ける義理は我には無いな」


「つまり願いを100個に増やしても、100回願いを叶えてくれるとは限らないという事か?」


「ああ。というか願いを100個に増やした時点で我なら帰るがな」


「……」


 まぁ、そうだろうな。


「可愛くて、美人で、スタイルが良くて、俺の事だけを愛してくれる『嫁さん』が欲しいと言ったら?」


「可能だ」


 これに対しても『そいつ』は簡単にYESと答える。


「唯、本当に願いはそれで良いのか?」


「ん?」


「例えばの話だが、こことは別の『剣と魔法の世界』とも言える世界ならば『可愛くて、美人で、スタイルが良くて、お前だけを愛してくれる奴隷』が金さえあれば簡単に手に入るのだぞ」


「……」


「そんな簡単に手に入るようなものに『願い』を使っても良いのか?」


「ふむふむ。それなら俺をその『剣と魔法の世界に連れて行ってくれ』とかにすれば良いのか?」


「可能だ」


 俺が願いの『喩え』を言う度に『そいつ』はYESと答える。


「しかし今のままお前が『剣と魔法の世界』へ行って大丈夫なものだろうか?」


「どういう意味?」


「我の願いを使って『剣と魔法の世界』へ行くのならば当然この世界の物を持っていく事は出来ない。お前を連れて行くのに『この世界の物を持っていく』事は願いに入らないから制限が掛かる」


「……」


「言い換えるのならば無一文で向こうの世界へ投げ出される事になるという事だ。しかも当然のように言語や文字などといったものも全く違うものだ。そんな状態で『剣と魔法の世界』へ行って果たしてお前は無事に生き延びる事が出来るだろうか?」


「…どうしろと言うんだ?」


「そうだな。例えば異世界へ『転移』するのではなく『転生』するというのはどうだ?」


「…どういう意味だ?」


「今の状態のまま、何の準備も出来ずに『剣と魔法の世界』へと行くから問題があるのだ。向こうの世界に赤ん坊の状態で『転生』すれば当然両親も居るし言語や文字を学ぶ時間も得られる」


「…なるほど」


「さて。それでは…どうする?」


 深く頷いた俺に『そいつ』はファイナルアンサーとでも言いたげに尋ねてくる。


「うん。決めた」


 そして俺は決定した。




「とりあえず100億円くれ」




「…は?」


 現金を要求した俺に『そいつ』は目を丸くして驚いていた。


「…どうしてそうなる?」


「ん?何か問題でもあるのか?」


「『剣と魔法の世界』へ転生するのではなかったのか?」


「なんで?」


「なんでって…そういう流れだったではないか」


「おいおい。言葉は正確に伝えるべきだと思うぞ」


「何?」




「そういう流れに誘導しようとした…の間違いだろ?」




「……」


「今時下手な詐欺師だって、もっとマシな話術を使ってくると思うがね。話の流れを誘導して俺に『剣と魔法の世界に転生させてくれ』と言わせるのが目的だったんだろ?」


「…我はお前の願いを叶える為に来たのだ」


「嘘だね」


「……」


「お前は最初から俺を『剣と魔法の世界へ転生』させる願い以外を叶える気なんて更々無かった。どんなやりとりがあっても最終的には『そこ』へ行き付かせる気だったろ?」


 俺が確信と共に言葉で追い詰めると『そいつ』は…。




「調子に乗るなよ。人間風情が」




 様子を一変させた。


「下手に出ていれば好い気になりおって。我がその気になれば貴様など一瞬で八つ裂きに出来るのだぞ?」


 それは人間に対して至極原始的な『恐怖』を掻き立てるような威圧的な声だった。


 しかし、だからこそ…。


「なるほどね。お前は直接的に俺に危害を加える事は出来ない訳だ」


「……」


「そうじゃなければ、このタイミングで『脅し』に移る意味がないからな。今の行動でお前の目的が少しだけ鮮明になってきたぞ」


「……」


「お前にはなんらかの目的があって俺…もしくは俺のような人間を『剣と魔法の世界』へと転生させたい訳だ。しかし、その為には『願いを叶える』かそれに準じた手順を取る必要があるとみた。脅迫でも構わないのだろうが対象に対して危害を加える権利は持っていない。だからこそ『脅し』という手段が悪手である事を知っていた訳だ。直接危害を加える権利が無いのに脅しが失敗すれば一気に形勢は不利になるからな。今のお前みたいに」


「……」


 沈黙を守る事しか出来なくなった『そいつ』。


「そして、ここまで言っても『願いを叶えるのを辞めた』とか言ってこない時点で、お前は俺に対して『剣と魔法の世界へ転生』させる以外の選択肢がないのだという事も理解出来た。お前は上司か何かの命令で俺の元に来ていて、俺を『剣と魔法の世界に転生』させないとかなり不味い立場に立たされると見た」


「…だから嫌だったのだ。こんな仕事」


 俺の看破に対して『そいつ』は項垂れるように独白を始めた。


「こんな仕事、我には向いていないと最初から上申していたというのに。他に適任者が居ないからなどという適当な理由で押し付けられて、挙句失敗すれば全て我の責任と来たものだ!やってられるか糞野朗がっ!!」


「あ~…」


 なんか。こいつはこいつで苦労しているんだなぁ~とか少し同情した。






「とりあえず詳しい事情を聞かせて貰おうかな」


「…聞いてどうする気だ?」


「警戒するなよ。別に『剣と魔法の世界へ転生』する事を拒否した訳じゃない。不本意ながら俺にはこの世界に未練なんてものは無いからな。条件次第ではお前の言う通りにしてやっても良いと思っている」


「……」


「だから、その為にも最低限の情報が欲しいのさ」


「…良いだろう」


 駄目元と思っているのか『そいつ』は素直に俺に事情をポツポツと語り始めた。


「平たく言えば、この世界は人間が多過ぎるのだ。否、正確に言えば少し違うか」


 説明は最初そんな言葉から始まった。


「1つの世界に存在出来る『魂の総量』というものが存在する。その『魂の総量』が世界の許容量を超えてしまうと歪みが起こってしまう。具体的に何が起こるのかは我のような下っ端には知らされていないが…まぁ何かは起こるのだろう」


「それで?」


「その対処法として人間…正確には知的生命体を間引く必要がある。忌々しいが『魂の総量』の大半を人間が独占している状態だからな」


「人間がそんなに高尚な存在だとは思えないけどな」


「同感だが実際には『知性がある』という時点で『魂の質』が上昇してしまうのが現状なのだ。人間が高尚であるかどうかは問題ではない」


「ふぅ~ん」


「その発想からすれば人間を大量虐殺してしまえば済む話に思えるかもしれないが、この世界で人間を殺してもこの世界に転生してしまって意味が無い。この世界から正規の手順をとって別の世界へ移す事が必要になるのだ」


「ん?」


 そこで俺は当然のように疑問に行き当たる。


「気付いたか。まぁお前なら当然気付くか」


「…普通気付くだろ」


「そうだな。この世界に腐るほど存在する人間を必要量間引くのに我のような手順を取っていては焼け石に水だ」


 そう。こいつと同じような奴が何人居るか知らないが数は多くないだろうし成功率も高いとは思えない。


 それを踏まえて考えるならば…。


「つまり『魂の総量』イコール『人間の数』じゃないって事か」


「…ああ」


 俺の得た結論に対して苦々しく答える『そいつ』。


「人間の中には突然変異レベルで稀に『魂の質』が異常に高い者が生まれる事がある。そういった人間と交渉して異世界へと移す事で世界のバランスを取っているのだ」


「なるほどね。数ではなく質で勝負しているって事か」


 というか、こいつの話では俺自身が『魂の質が異常に高い人間』という事になるのだが。


「もっとも。その『魂の質が異常に高い人間』と交渉するのも楽ではない。そういう人間は妙に勘が良かったり、異常な身体能力を持っていたり、酷い例になると超能力としか思えないような力を持っていたりする」


「俺は別にそんな能力持っていないぞ」


「…その中でもっとも厄介なのが『異常な頭脳』を持った人間だ。まさに突然変異レベルで頭が良く、我のように交渉に来た者の目的を看破して逆に自分が有利になるように話を進めてくる」


「……」


「だから我は嫌だと言ったのだ」


「あ~…ドンマイ」


「お前が言うなっ!」


 ごもっともで。






「それで転生先の『剣と魔法の世界』の事なんだが…」


「転生先の詳細は話せんぞ」


「別にそこは聞きたくねぇよ」


 そんなもの聞かされてもテンションが下がるだけだ。


「そうじゃなくて転生先の安全保障の話だ」


「む。転生先が『剣と魔法の世界』である以上、この世界より死亡率が高いのはどうしようもないぞ?」


「そんな心配はしていない。俺が知りたいのは俺が転生して1年後に避けられない破滅が待っているとか、そういうトラップは無いんだろうなって話だ」


「……」


「流石に1歳児で世界が滅びるとか勘弁だぞ」


「それは…保障出来ん」


 首を横に振って『そいつ』は答えた。


「我は未来を知る術を持っていない。お前が転生した世界が1年後に滅びないと保障する事は出来ん。世界の寿命という事なら少なくとも数万年は保障出来るのだが」


「ふむ。それなら…まぁ問題ないだろう」


「軽いな。良いのか?」


「普通に考えて、この世界だって1年後に確実に滅びないという保障なんて無いだろ?俺が転生して直ぐに避けられない滅びが待っているって訳じゃないなら問題ないだろ」


「ああ。この世界には『核』があるからな」


 おや?


「お前、まさか『核』で世界が滅びるなんて信じている派?」


「普通に考えて滅びるのではないか?」


「あ~。確かに『核』は厄介な兵器だとは思うけどなぁ」


 言いながら俺は無意識に肩を竦めていた。


「言動から世界の管理者サイドっぽい立ち位置に居るのに案外人間の事を知らないもんなんだな」


「どういう意味だ?」




「人間の悪意と欲望を舐めているって言っているんだ」




「……」


「人間っていうのはゴキブリも真っ青なくらい生き汚い生き物なんだぜ」


「しかし現実問題として世界中に核がばら撒かれれば人間だろうと生き残れるとは思えないが?」


「なんの為に『核シェルター』なんて物が作られていると思っているんだ?核戦争が起こっても生き延びる為だろ」


「……」


「確かに大多数の人間は滅びるだろうが、それでも確実に1割…いや2割くらいは生き残るね。そして元の文明レベルまで発達するまでそう長い時間は掛からない」


「核に汚染された世界でか?」


「人間の底なしの欲望がその程度に押し負けるなんて俺は欠片も思えないね。ほぼ間違いなく人間は元の栄華を取り戻す為に馬車馬のように働き始めるさ。いや、元の世界よりも確実に発展した世界を作るだろうな」


「…その根拠は?」


「そうだな。例えば戦後の日本からすれば今の日本の姿は既に完成された世界なんだ。正確に言うなら完成されすぎた世界か?」


「……」


「当時の日本からすれば『理想』といえる姿を体現した時点で日本の最盛期だった。だが時代が進むにつれて、文明が発展するに従って、その『理想の先』が見えてしまった。こうなれば最初に描いた理想では物足りない。けれど完成した理想は簡単には壊せない。だから完成した理想に余計な物をくっつけて歪な成長をさせているのが今の日本の姿なんだ。蛇足…というかフランケン・シュタインだな。歪になりすぎて元の理想よりも劣化した代物に成り下がっている」


「……」


「歪だと分かっていても今生きている人間が居る以上、簡単に壊す事なんて出来ない。擬似平和を甘受した人間は『今の生活』を守る事に貪欲だからな。上に立つ人間が有能だろうと無能だろうと多数決には勝てねぇしな。ああ、民主主義って言った方が良いのか?どっちでも良いけどな」


「民主主義と多数決は別物の筈だが?」


「そんな建前どうでも良いよ。人間如きに民主主義なんて高度な知性的判断を使いこなせる訳ねぇし」


「……」


「話を戻すが核戦争で都合よく全部をぶっ壊した後なら理想的な世界が作れるって話だ。都合よく数も減って人材も効率よく使えるし、基盤を最初から作り直すなら前より良い物を作ろうとするのが人間の当たり前の『欲望』だからな」


「世界が滅びない限り人間も滅びる事はないという事か」


「ところがそうでもないんだな、これが」


「何?」


「人間を滅ぼす方法は簡単ではないが確実に存在している…と俺は思っている」


「どのようにして?」


「はっきり言えば『進化の果て』って奴だ」


「……」


「人間が『考えうる限りの理想』って奴に到達した瞬間、人間は確実に滅びるさ。なんていったって『考えうる限りの理想』に到達したら『それ以上』が無いんだから後は一直線に落ちるしかない。その『考えうる限りの理想』に人間が到達する前に『世界の寿命』って奴が尽きなければの話だけどな」


「…我の今までの価値観が大幅に崩れそうだ」


「そいつは大変だなぁ」


「破滅主義者め」


「俺はどっちかというと快楽主義者だけどな。可愛くて、美人で、スタイルが良くて、俺の事だけを愛してくれる『嫁さん』が欲しいってのも事実だし」


「ふん。我は信じぬぞ」


 まぁ、なんだかんだ言っても大分価値観を壊してやったのは事実だ。






「さて。それじゃ詰め合わせるか」


「詰め合わせ?」


「俺を『剣と魔法の世界』に転生させるんだろ?その詳細を詰めるんだよ」


「…正気か?」


 俺が本気で前向きに検討しているとは思っていなかったのか『そいつ』は本気で驚いていた。


「さっきも言ったが、この世界に未練がある訳じゃないんでな。それに今なら『特典』くらいは付けてくれそうだし」


「…特典?」


「そっちの都合で俺を別の世界に転生させる訳だし、少しくらい俺に有利になるような特典をくれても良いと思うがね」


「異世界転生だからと言って『チート』は付けられんぞ」


「…世界の管理者の癖にラノベの読み過ぎだろ」


「……」


「つか。別にチートなんぞ要らん。そんな物なくても俺は自分の力で成りあがれる」


「それなら、どうしろというのだ?」


「まぁ、要するに『お前らの都合に付き合ってやるんだから、その対価を支払え』って事だな。チートは要らんが『+α』は欲しい。まぁ異世界転生するから『おまけ』を寄越せって事だな」


「ふむ。我の権限で出来る事はそれほど多くはないが『おまけ』程度で良ければ出来なくも無い」


「ほぉほぉ」


 心の中でニヤリを微笑む。


 こいつの価値観では『おまけ』レベルでも世間一般からすれば『チート』というのも十分ありえる。


 要らんと言ったが貰える物は貰っておく主義だ。


「そうだな。簡易型異空間収納鞄くらいなら進呈出来るだろう」


「…なんぞ?それ」


「向こうの世界で言うなら『魔法の鞄』。この世界で似た物をあげるなら『四次元○ケット』が近いかもしれん」


「つまり無限に物を収納出来る鞄か?」


「流石に無限ではないな。というか簡易的な物なので収容スペースは広くない。せいぜいこの部屋と同じくらいの容量だ」


「ほぉ~」


 簡単に言うが『この部屋』は狭くとも6畳一間のスペースがある。


 その部屋が丸々入ってしまうような鞄を貰えるなら十分な『おまけ』と言えるだろう。


「一応詳細を話すと…」


 詳しく聞く。


 実物を見せて貰ったが腰に装着出来る小型のポシェットという形状だ。


 これを『俺専用』に設定して俺以外の人間が使えなくするようにしてくれるという。


 使い方は実際に収納したい物に俺が手で触れて『収納+登録する名称』と言えば鞄に収納されるらしい。


 取り出したい時は『開放+登録した名称』を言えば表に出せる。


 残念ながらリストのようなものは表示されないらしいので、しっかり収納した物を覚えておかないと取り出せなくなって無駄にスペースを使う羽目になるからと注意された。


 使い勝手としては例えば、この鞄に『水』を入れたとしても他の収納物が水浸しになるという事は無いらしい。


 容量には限りがあるが、しっかり区分けしてくれるらしい。


 更に水で例えれば100リットルの水を収納したとして、取り出す時に100リットル全部取り出す必要はないらしい。


 取り出す時に『開放+登録した名称+容量』を指定すれば、例えば『開放、水、1リットル』と指定すれば1リットルの水だけが手元に開放されるらしい。


 但し、入れ物がなければ地面に落ちるだけだが。


 更に言えば例えば『海水』を収納したとしても、それを『水と塩』に分解するような機能はない。


 鞄に『海水』を収納したなら、取り出す時も『海水』になるらしかった。


 そして最後に簡易的な物とはいえ『管理者』の所有する特性の鞄なので『収納した物の時間を停止させる機能』があるらしい。


「出来たての料理を入れておけば、いつでも出来たての料理を食べられるという事か」


「そうだな。言ってみれば高性能な冷蔵庫のような物だろう」


「……」


 例えがかなりずれている気がしたが指摘はしないでおいた。


「生まれたての赤ん坊がこんな物を持っているのも不自然だし、キーワードで鞄自体を簡易空間から出し入れ出来る様にサービスしておこう」


「キーワード?」


「好きに決めれば良い。鞄を取り出す呪文と、鞄を仕舞う呪文だ」


「それじゃ『魔法の鞄-ON』と『魔法の鞄-OFF』で」


「…簡単だな。まぁお前しか使わないのだから別に構わんが」


 こういうのは複雑な物にすると咄嗟に必要な時に困るものだ。






「それでは最後に確認するが、お前を『剣と魔法の世界』へと転生させるが本当に構わないのだな?」


「ここで確認を取るなんて案外甘いんだな」


「…正規の契約として必要な手順だ」


「はいはい。OKだよ」


「転生する世界は選べるが転生先の詳細は選べない。お前の『魂の質』ならば確実に知的生命体として転生する筈だが人間に転生するとは限らないし、どんな両親の元に生まれるかも選択出来ない。それでも構わないのだな?」


「何度も念押しされると『やっぱ辞めた』って言いたくなるぞ」


「構わんのだな!」


「はいはい。OKだっての」


 俺はやれやれと肩をすくめる。


「最後に、この世界でのお前の名前は失われる。お前の記憶からお前の名前は失われ、この世界で出会った全ての知的生命体の名前も同時に記憶から消えていく」


「最後に言うなよ」


「そういう手順なのだ。文句を言うな。大部分の記憶を持ったまま転生させるのだから文句はないだろうが」


「へいへい」


「それでは、お前の次の人生に幸あらん事を」


 最後に『そいつ』の言葉を聞いて俺の視界は真っ白に染められて――意識が消滅した。



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