第49話 『魔王。忠臣と狂信者の違いを考える』



 ☆大魔王




「暇…だのぉ」


 力を失い人間種並みになってしまったとはいえ、私の現状という物は以前とそう変わりないものだった。


 まぁラルフが私を――というよりサミエルの奴を敵に回す事を嫌がって裏切るつもりがなかった為、裏切ったエルズラットとタキニヤートを馬鹿みたいな力で蹂躙した映像が世界に流されて私に敵対しようという輩が居なくなった事が1番の理由だが。


「のぉ。エルズラットよ」


「は、はい…大魔王様」


 そのエルズラットとタキニヤートの魂を密かに回収してラルフに出させた教会の人形兵の量産型に入れて私の護衛にした訳だが、ちっとも暇潰しにならん。


 私が特に注文をつけなかったらサミエルの奴が2人の魂を『奴隷の制約』で縛りつけた為、裏切った2人は恐縮してビクビク震えている。


 一応『そこそこの魂』であったようでラルフの人形兵のように『女の体』には一応変化しているようだが。


「そう怯えんでも貴様らなんぞを甚振って楽しむ趣味はないわ」


 確かにこやつらは私を裏切った訳だが、この場合裏切らなかったラルフの方が異様なのであって、こやつらが裏切った事を責める気はなかった。


 まぁ無論、許す気も無いのだが。


「お主らもラルフのように好き勝手に振る舞っておれば良かったものを勝手に『魔王の矜持』なんぞに囚われて過ぎた夢を見るから馬鹿を見るのだ」


 私を殺したくらいで、こやつらの器で世界の覇権を握れる訳でもなかろうに、天使に唆されたくらいで大きな夢を見すぎだ。


「そもそも大魔王の立場から言わせて貰うが世界なんぞ支配してもたいして面白くも無いものぞ」


「そ、そう…なのですか」


「……」


 エルズラットの方は一応返事を返すものの、タキニヤートの方は人形兵の身体の五感に慣れないのか喋る事も出来ずに困惑したまま己の身体を持て余している。


 タキニヤートはアンデッド族だった故、元より五感――というか生きている感覚を知らんで過ごしてきた。


 そこで急に五感を持つ人形兵の身体に入れられて困惑が強過ぎて私に返事を返している余裕がないのだろう。


「生きて感じる五感は新鮮かえ?タキニヤートよ」


「!…はい…大魔…王様」


「くっくくく。そこで区切るのは微妙だのぉ。まぁ少しは暇潰しになる故、お主は暫くその五感を慣らしておくが良いわ」


「は…ははっ」


 タキニヤートは一応男――だったのかは良く知らんが、それでも人形兵の体に入れて変化した結果、出来上がったのはほぼ『女の体』の為、その辺の戸惑いも大きいのだろう。


 ちなみにこやつらの『動力源』は私の倉庫からサミエルに適当に探させた『良く分からないが魔力が大量に蓄積された魔法具』によって補われておる。


 有限なエネルギーではあるが膨大な魔力量だし、こやつらもたいして働いておらんので暫くは持つであろう。


 まぁ、こやつらで遊ぶのは良いのだが…。


「退屈だのぉ」


 殆ど魔力を使う事が出来なくなったので式神を使って世界の覗く事も出来ん。


 最近は『あれ』が1番の楽しみだって故、退屈で敵わん。


「ラルフから式符を出させたが…式神を知っておると式紙では物足りんのぉ」


「は、はぁ…」


 エルズラットからすれば同じ『シキガミ』としか認識出来んようだし、そもそも式紙も式神も知らんのでチンプンカンプンであろう。


「今の魔力では偵察用の小鳥1匹が精々か。せめてもう2~3匹出せれば良いのだが…魔力が上手く練れんからのぉ」


 こんな小さな小鳥1匹分の魔法力を練り上げるのに1日掛かりだ。


 魔法制御力も大幅に制限されておるらしく、どう頑張っても小鳥1匹分しか作りだせん。


「まぁ…無いよりマシだがのぉ」


 これが無ければ流石に私も危険と分かっていても城の外へと飛び出しておったであろう。


 私の代わりに小鳥を城の外に出せるからこそ我慢が出来ているというだけぞ。


「そう考えるとラルフは勲章ものか。まぁ、あやつは勲章なんぞいらんだろうがのぉ」


 名誉なんぞクソの役にも立たんものではなく実利的な――それこそ嫁が喜ぶ物でもくれてやれば喜んで対価の分をせっせと働いて借りを返してプラマイゼロの関係を維持するであろう。


「そう考えると便利な奴よのぉ。餌を与えれば与えた分だけ働くのだから」


 まぁ餌をやらなければ全く働かんし、餌を与えた分以上は絶対に働かんという事でもあるが。


「…退屈よのぉ」


 不本意ながら最近は『これ』が口癖になってしまった。




 ★




「う~ん。思った以上に天使どもが目障りだなぁ」


 俺が前回遭遇した天使によって教会に俺――正確には『魔王ラルフ』の情報が出回ってしまった事に対して少々面倒に思う。


 別に『魔王ラルフ』の名前が広まったところで大きな不都合がある訳ではないのだが、広まっていないからこそ極秘で潜入とか出来ていた事が出来なくなるのは少し惜しいと思う。


 流石にこれ以上教会に潜り込むつもりはないが。


 しかし教会以外でも天使どもが動き回っているとしたら、思っていた以上に動きにくくなっているかもしれない。


「天使…か。面倒だなぁ」


「相手が天使という事は、その後ろに控えているのはひょっとして…『神』なのでしょうか?」


 俺の言葉を聞きつけて疑問を上げてきたのはオリヴィアだ。


 前世の知識があるのなら天使のボスが神というのは安易に導き出せる結論ではあるけれど…。


「どうかねぇ。奴らは『天使族』って呼ばれているれっきとした『この世界』の住人だし。多少自意識過剰気味だが、それを素直に信用して神がバックに居ると考えるには奴らの底は浅過ぎるけどなぁ」


 俺が遭遇したのは前回の『自称天使』だけだが、あれを基準に考えると神なんて存在は奴らの都合の良いように作り出された想像上の産物にしか思えない。


「奴らが威張る為に神の名を騙っている…とかいう方がまだ信憑性があるね」


「ああ。ありえそうですわね」


 オリヴィアも元日本人なので立派な無神論者だ。


 前世では宗教には全く係わり合いが無かったし、俺と長い時間を共に過ごしたので神なんてものには全く敬意を払っていない。


 神を信じるくらいなら俺を信じる――とか素で言いそうな女だし。


「そもそも俺達を『この世界』に送り込んだ『管理者』が実在している以上、神なんて存在より警戒するのは『そっち』だろう」


「それは…確かにそうですわね」


 神は居るどうか分からないが『管理者』は間違いなく存在しているのだから。


 まぁ『管理者』と『神』イコールだったらどうしようもないけど。


「ところでソフィアはどうした訳?」


 なんだかんだ対抗意識はあっても結構仲の良いオリヴィアにソフィアの所在を聞いてみる。


「輝夜にお料理を教えているみたいです。前回から輝夜が色々な経験を積みたがっているので」


「ああ。作戦名『色々やろうぜロックンロール』ね。作戦名はどうかと思うが色々経験するのは悪い事じゃないと思うし良いんじゃないか」


「あなた様。わたくしが料理を作ったら…食べてくださいますか?」


「…前世で消し炭を作った時だって、ちゃんと食べただろうが」


「そうでしたわね♡」


「…いや。ここは反省して欲しいところなんだが」


 前世でのオリヴィアはお嬢様育ち――というか純粋培養のお嬢様だったので付き合い始めた当初は料理なんて全く出来なかった。


 それでも俺の為に料理をしようとして――色々やらかした。


 俺が手取り足取り教えたので直ぐに出来るようになったが最初は酷い物だった。


 冗談抜きで消し炭を作ったし、それを前に涙ぐんでいたので食わない訳にはいかなかったのだ。


 色々酷い目にはあったが――その後は燃えた。


 勿論、燃えたのは料理ではなくベッドの上での話だ♪


「懐かしいですわね♡」


「…良い話で締めるような話題でも無いと思うが」


 こうやってオリヴィアと前世の話で盛り上がるのはかなり珍しい。


 俺達にとって前世の事は前世で完結した出来事なのだから。


 まぁ、だからと言って無かった事にしようとも思わないし前世の話を『禁句タブー』にしようとも思っていないが。


 ちなみにその日に輝夜が作った料理は『卵焼き』だけで少し焦げていたけれど普通に食べられた。


 前世でオリヴィアが作った『消し炭』と比較してしまったので上手く出来たと褒めてやったら涙ぐんで喜んでいた。


 ちょっと褒め過ぎたかもしれない。




 ☆十六夜




 私は『マシンナリー・ドールズ』シリアル№016『十六夜いざよい』と申します。


 私達の統率主体である輝夜をシリアル№000とした場合、私は16番目にマスターによって『教会製の人形兵』の身体に『竜族の魂』を吹き込まれた固体です。


 正直な話をすれば私は当初自分の名前――『十六夜』という名前が余り好きではありませんでした。


 16番目の固体だから『十六夜』というのはあまりにも安直に思えたからです。


 それはマスターは178体もの『ドールズ』に名前を付ける必要があった訳ですから、ある程度は妥協する必要があるのは分かっているのですが『龍人』として目覚め、生まれて初めて世界中の誰よりも早く私の目に入ってきた『特別なマスター』に頂いた名前としては期待を裏切られた気分にさせられてしまったのです。






『ドールズ』達は全員――いえ、輝夜を除く177体は人間種の国の王都と呼ばれる都市の中に建てられた広い屋敷で暮らしています。


 そして毎晩のように輝夜によってマスターの『お相手』をするソフィア様とオリヴィア様の生々しい実況中継をされます。


「……」


 まぁ私も他の『ドールズ』達に漏れず『エッチな事に興味津々のお年頃』なので毎晩のように輝夜から届けられる実況を楽しみにしているのですが。


 そもそも私達『ドールズ』はマスターに対して並々ならぬ関心と異常とも呼べるほどの敬愛を持っています。


 これは私達の知識や常識の『基軸ベース』となった輝夜が原因の一旦です。


「あ、あのっ…!」


 そんな事を考えながら王都を散策していた私は不意に声を掛けられて視線を声を掛けてきた主へと移します。


「こ、こんにちは!」


 そこに居たのは最近になって私によく声を掛けてくるようになった『人間種のオス』でした。


 まぁ、その分類でいけばマスターも一応は『人間種のオス』という事になるのですが、やはり私達『ドールズ』にとってマスターは特別な存在なのです。


 少なくとも何度声を掛けられても名前も顔もまともに記憶する事が出来ない目の前の『人間種のオス』とは比べる事すらおこがましい存在です。


「…こんにちは」


 一応挨拶を返しながら私は『ドールズ』はマスター以外の方を好きになったら恋人として認定する事が出来るのか?という考証を開始します。


 そして出てきた答えは『一応出来ない事も無い』というものでした。


 私達『ドールズ』は『念話』という特殊な連絡手段でお互い認識の齟齬なく意思疎通出来る為、通常の『ドールズ』の常識から逸脱する感情を抱く事は『ドールズ』全体の統率を乱す行為です。


 それ以前に他の177体の感情に大きく影響されてしまうので『マスターを裏切る』などという事は不可能なのですが、それでも『どうしても』という感情で申請すれば『念話』というネットワークから切り離され『ドールズ』を除隊するという形で『恋人』を作る事は可能でしょう。


「あ、あの…良ければ少しお話でも…」


「申し訳ありません。私は今『仕事中』なのです」


 もっとも、目の前の『人間種のオス』に対して特別な感情を抱くという未来を全く想像出来ませんけど。


 そもそもメイド服を着て街中を散策している私に声を掛けてくるというのは如何なものかと思う。


 常識的に考えれば『主人の使い』として行動していると分かりそうなものだ。


「で、でも、この間、そこの店で買い食いしてたよね?」


『…Bの85地区で『買い食い』とやらを実行した者は居ますか?』


『あ。それ私かも。クレープっぽいのが売ってて我慢出来なかったのです』


『…そうですか』


 念の為『念話』で問いかけると直ぐに返答と同時に犯人からの自白が返って来ます。


 やはり、この『人間種のオス』には私達『ドールズ』の見分けは付かないようです。


 この周囲は私の担当なので、ここで良く会うのは私だけという事になるので幾度も声を掛けられた訳ですが『私だから』声を掛けていた訳ではないようです。


 まぁ私達の『龍のツノ』の色や形で見分けられるのはマスターくらいなのですが。


「ね?だから、ちょっとだけでも…」


「触らないでください」


 私は――私達はマスター以外の方に触れるのも触れられるのも許容しない為、私に伸ばされた手を払いのけようと…。


「痛っ…!」


 気付いたら地面に背中から叩き付けられていました。


「へぇ。警戒心が足りてない割に受け身は上手いじゃないか」


「っ!」


 そして次の瞬間には私は身体を捻って回転するように身を起こして体勢を整えていました。


 日頃からオリヴィア様に仕込まれた受け身と地面に倒れた際に対処法を身体の方が反射的に実行してくれました。


「反応も…思った程には悪くない」


「……」


 私を――恐らくは投げ飛ばしたと思われるのは先程まで警戒にすら値していなかった『人間種のオス』で、しかも今は私を値踏みするような視線で冷たく見つめてきます。


『シリアル№016『十六夜』よりシリアル№000『輝夜』へ。『ケースE』の発生によりマスターに交戦許可を求む』


『…マスターのお言葉を正確に伝えます。交戦を許可、並びに武装『A~D』の使用を許可する。以上です』


『了解致しました』


『…ちゃんと意味を理解していますね?』


『勿論です』


 僅か数秒で『念話』を通してマスターから交戦許可を頂き、マスターの意図を理解しつつ――私は土で汚れたメイド服を手で払いながら敵性体に対して身構えます。


「ふむ。情報通り人形兵は身体能力は高いが致命的なほどに経験が不足しているな」


「…教会の犬ですか」


「さて。どうかな?」


 言動から考えれば教会で特殊な訓練を受けた潜入用、もしくは暗殺用の人員であると思われるけれど――私には関係のない話だ。


「『マシンナリー・ドールズ』シリアル№016『十六夜』、敵性体に対して武力介入を開始致します」


「…そうやって情報をポンポン出してくれるのは楽で良いけどな」


 敵性体の言葉を無視して私は真っ直ぐに敵性体に近寄り――再び地面に叩き付けられていました。


「だから、そんな分かりやすい攻撃じゃ…っ!」


 敵性体の言葉を遮ったのは受け身に使った左手をそのまま地面に付けて軸にして身体全体を回転させながら放った蹴りを回避する為でしょう。


「なるほど。投げられると事前に分かっていれば即時反撃も可能なようですね」


「…へぇ」


 少し感心するように目を細める敵性体。


「ここ数日、退屈に観察していたが思ったより学習能力があるじゃないか。持って帰ったら研究者どもが喜びそうだ」


「……」


 一瞬、生かして捕らえて情報を吐かせる為に持って帰ろうとも思ったけれど――即座に否定してマスターの命令を優先させる事にした。


 相手は諜報用に訓練された人員。


 吐き出される言葉に惑わされる必要は皆無。


「…『龍灯フラッシュ』」


 戦闘を継続する為に私は掌に小さな光の球体を生み出して頭上に浮かべる。


「人形兵が…魔法を使うのかよ」


「……」


 魔法という程の物ではありません。


 これは唯の『照明ライト』であり、昼の今に於いてはなんの効果も期待出来ない『通常モード』で出来る精一杯の『魔法に近いなにか』です。


 けれど浮かべた光球に敵性体の視線を誘導する効果としては十分。


「っ!」


 敵性体の視線を誘導し、その視線の範囲を逆算して死角に潜り込みつつ細かい技術など必要のないもっともシンプルな攻撃――体当たりをするように肘鉄で攻撃を繰り出して…。


「痛っ…!」


 三度私は地面に叩きつけられていました。


「ふぅ。これは後で洗濯の必要がありそうですね」


「あ…え?」


 一方で今度はのんびりと地面から身を起こす私を呆然と眺める敵性体。


「な…んで…?」


 その身体には投げ飛ばされる前に私が魔力を流し込んで変化させておいた腕輪――槍が突き刺さっていました。


「それは3度も同じ攻撃をされれば学習能力の高い私達なら対処法の1つや2つ思いつくでしょう」


「がっ…!ごふっ…!」


 私が槍を引き抜くと大量の血を撒き散らしながら地面に倒れる敵性体。


 槍を振って血を落としてから腕輪に戻し、私は今回の戦闘結果をマスターに報告します。


『シリアル№016『十六夜』より報告。『ケースE』は武装Dで対処完了。今回の経験を『ドールズ』で共有する事を提案します』


『ケースE』は所属不明の戦闘技能を持った敵対者1名の省略。


 武装Dは『通常モード』で『核融合炉』の出力を5%以下に維持したままで使用可能な戦闘方法の事。


 ちなみに武装Aは『戦闘モード』で『龍核熱砲ドラゴニック・ブラスター』を放つ事を許可するという事。


 つまり武装A~Dを許可するという事は『自らの安全を最優先とし、必要なら持てる全ての力を使って必ず帰還せよ』というマスターの心遣い。


 そして可能であると判断したのなら現在『ドールズ』が行っている指令『色々やろうぜロックンロール』に貢献せよという事だ。


 今回の収穫は武装Dで『ケースE』への対処法の確立。


 こういう経験を積む為に輝夜を除く177名の『ドールズ』が街中に散らばって文字通り色々な事をやっている筈だ。


『念話』で知識と経験を共有出来る私達は通常の178倍の速度で成長出来る。


 まぁ178倍というのは、あくまで理想値なので現実には100倍前後というところですが。


『…経験の共有は賛同しますが、その態々自分のシリアル№を含めて報告してくるやり方はどうにか出来ませんか?』


『出来ません』


『…そうですか。マスターに報告しておきます』


『お願いします♪』


 シリアル№016『十六夜』。


 当初、私はこの自分の名前が余り好きではありませんでした。


 けれど、それは本当に――私が生まれてから1分足らずの間だけの話です。


 マスターは私に『十六夜』と名付けてから少し安直だと思った私が疑問を挟む間もなく仰られたのです。


『お前の名前だけは最初から決めていたんだ。『十六夜』っていう響きが気に入っていたから16番目のお前には絶対にそう付けようと思っていた』


 そう。私の名前は16番目だから『十六夜』と名付けられた訳ではなく、『十六夜』という響きが好きだから16番目の個体に付けようと決められていたのです。


 こうして私の名前と16という数字は私にとって『特別』になった。


『十六夜』という名前は私にとってマスターにプレゼントされた最高の『誇り』であり『絶対的な忠誠』を捧げるという『誓い』でもある。


 178体の居る『ドールズ』の中で1人の感情が177体に影響を与える事は滅多にない。


 けれど私はその『滅多にない』事を成し遂げた唯一の固体。


 そう。『ドールズ』達のマスターに対する『忠誠』は私の『絶対的な忠誠』が影響を与えた結果だ。


 例え数百、数千年の歳月が過ぎようと絶対に私は――『十六夜』はマスターを裏切らない。


 自らの名前とシリアル№に誇りを持つ私が『ドールズ』だ。




 ☆




 ちなみに、この『十六夜』の『絶対的な忠誠』が『ドールズ』というラルフの狂信者を生み出した元凶なのだけれど、勿論本人にそんな自覚はないのである。



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