第21話 『魔王。前世を回想する』




 ☆大魔王




「……」


 ゆっくりと手を開き、ゆっくりと手を閉じる。


 そして、ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと息を吐く。


「く…くくく。くはははっ」


 その行動の愉悦に耐え切れず思わず私は笑いを上げてしまう。


 つい最近までは指1本動かすだけで体中に激痛が走り、僅かに呼吸をするだけで血を吐き出すような状態だった。


 それが――今はなんとも無い。


 それだけの事で愉悦が止まらん。


「愉快だ。本当に愉快だぞ」


 まったく良い拾い物をしたものだと思う。






 ラルフ本人に自覚があるのかどうか知らないが――否、奴には間違いなく自覚があるのだろうが『火の最上級回復魔法』の使い手は非常に希少だった。


 なんと言っても私が長年捜し求めて、ついに自力では発見する事が出来なかったのだから。


 無論、火の魔法に適正がある者を選出して目的の魔法を習得させようとした事は幾度もあった。


 けれど目的を達成する事は出来なかった。


 まず単純に魔法使いとして素質の問題が挙げられる。


 単純に火の魔法に適正があるというだけでは鍛え上げても『最上級』まで覚えられる事は稀だった。


 大抵の者は『中級』程度までしか覚える事が出来ず、良くでも『上級』までが関の山だ。


 それでも長い年月を掛ければ『最上級』まで辿り着く者も僅かではあるが居た。


 けれど、そこからが問題だった。


 ラルフの言を借りれば火の魔法の『B系統』を歩み、その上で『最上級』まで辿り着けたとしても『火の最上級回復魔法』を使えるようになるかどうかは賭けの要素が強かった。


 確かに火の最上級魔法には回復魔法が存在するが、それでも『火』を『回復』に結びつけるイメージを形にする事が出来なければ魔法は完成しない。


『火=危険』の先入観が僅かでも残っていれば魔法の習得に失敗し――そのイメージを払拭する事は一生不可能になる。


 ラルフ本人に火の魔法を使う時、何をイメージしているのか聞いてみたが『太陽』と答えられた。


 そして私は『なるほど』と納得した。


 太陽は炎の象徴であり、同時に恵みをもたらすものだ。


 確かに『太陽』をイメージしているのであれば回復魔法を使えたのも納得だ。


「養殖した火の魔法使いに『火で回復をイメージしろ』と無理難題を押し付けるよりもずっと現実的だな」


『火=太陽=回復』


 言われてみれば何故思いつかなかったのかという程に単純な答えだ。


「いや。私自身焦っていたのだな」


 自らを蝕む苦痛を大魔王としての矜持で耐えてきたが、それでも精神は圧迫されて余裕を無くしていた。


「まぁ、だからと言って『太陽』だけで回復をイメージするのは凡人には無理な相談だと思うがな」


 ラルフを参考にして後釜を育てるのは現実的ではない。


 軌道を修正して実験は続けるが確実に『私を回復出来る火魔法の使い手』を育成出来るようになるまではラルフを使うのが現実的だ。


 それにしても…。


「く…くふふふ」


 またも笑いが漏れる。


「まさか最後の1ピースが本当に揃う日が来るとは夢にも思っていなかったぞ」


 自身を回復する手段がない事が私の最大にして唯一の弱点だった。


 勿論、並の傷ならば自然回復でどうとでもなるが『光』や『水』の攻撃は私の自然回復力を鈍らせる。


 特に『光』は私の身体を蝕み、呪いとなって徐々に体を崩壊させていく。


 それを払拭させる事が出来る手段を手に入れた。


 火の回復魔法というのは私と非常に相性が良い。


 しかも最上級という奴は呪いまで一緒に解呪してくれる『おまけ』付きだ。


 私の肉体を癒しただけではなく私の身体を蝕んでいた聖水まで身体の外に排出してくれた。


「今なら誰にも…光の勇者が何人来ようと負ける気がせんな」


 そう。ラルフという回復手段を得た事で私は『無敵』になったのだ。


「ふ…ふふふ。あ~っはははは!」


 これが笑わずにいられようか。




 ★




「…って感じで高笑いしているんだろうなぁ」


「もう。旦那様に回復魔法を掛けて頂くのは私だけで良いのに」


 ソフィアはベッドの上で足をパタパタさせて不満を表しながら、それでも俺に両腕で抱きついて離れない意思を示している。


 特に傷を受けなくても俺は日常的にソフィアに『火の回復魔法』を掛けてあげる事が多い。


 通常の回復魔法とは違って『暖かくてとっても心地良い』らしいので。


 そんな事を1回戦を終えた後のピロートークで話していたのだが、そろそろ2回戦を始めようとソフィアの方を見たら…。


「旦那様…♡」


 何故か異常に熱っぽい視線で俺を見ていた。


「どうしっ…!」


「~~~♡」


 俺が何事かと尋ねる前にソフィアが俺に抱きついてきて両腕でガッチリ頭をホールドされて唇を奪われる。


「んっ♡ちゅぅっ♡あんっ♡」


「~~~っ!!!」


 チュウチュウ、ペロペロ、レロレロという感じで舌で口内を蹂躙されて流石の俺も目を白黒させて困惑する。


 ソフィアは偶に――というにはかなりの頻度だが、唐突に発情して俺を強烈に求めてくる事がある。


 ソフィア自身にも理由は分からないらしいのだが猛烈に俺が愛おしくなって我慢出来なくなるらしい。


「んっ♡…ハァハァハァ」


 やっと唇を離したソフィアの舌から2人の唾液が零れ落ちて俺の口の中に入って――反射的にゴクンと飲み干した。


「~♡」


 ソフィアは満足そうだが俺の方は心臓がバックンバックンして口から飛び出しそうだった。


 そのくらい俺を翻弄する物凄いキスだった。


「旦那様♡」


 勿論コレで終わりにしてくれるソフィアさんじゃないし、これで終わられたら俺の方が拷問だ。


 相変わらず潤んだ熱い瞳で俺を見つめてくる妻を相手に張り切ってハッスルする事にした。






 2人で身も心も満足するまで愛し合い、俺の腕の中で穏やかな寝息を立てるソフィアを抱き締めて彼女の身体の柔らかさと暖かさを感じながら俺は――少しだけ昔の事を思い出していた。




 ★




 もう名前も思い出せないけれど俺には前世で当然のように『恋人』が居た。


 彼女と出会ったのは中学生に時で、彼女は庶民の学校に通っているのが不思議なくらいのお金持ちのお嬢様だった。


 箱入りで育てられた生粋に大和撫子で長い黒髪がサラサラで風に靡く様は何度見ても見とれてしまうくらい綺麗だった。


 勿論、容姿も整っていて派手さはなかったけれど間違いなく『美少女』と言っても間違いない美貌を持っていた。


 中学1年生の時は特出するような接触はなかったけれど、中学2年生――大分身長も伸びて女子の中には胸が大きくなる子も多い中、俺は同じクラスになった彼女に積極的にアタックして口説き始めた。


 今世もそうだが前世でも見惚れた女がいたら躊躇するという事がないのが俺という人間だった。


 彼女は『両親が選んだ婚約者』がどうとか言っていたが、そんなもの俺の前では何の効力も持たずにあっさりと篭絡した。


 そうして俺と彼女の『お付き合い』が始まった訳だが、彼女と本格的にイチャイチャする為には色々な前準備が必要になった。


 当時から俺は『無駄に頭の良い天才』だった訳だが、それだけではなく今とまったく変わらない価値観を当時には既に持っていた。


 即ち、勉強なんか片手間で済ませて可愛い彼女とイチャイチャしたい――という非常に素直な欲望に身を任せたかったのだ。


 その俺の欲望の為に邪魔だったのが『彼女の両親』と『彼女の婚約者』だった。


 それを放置したまま彼女に手を出してしまうと色々と後が面倒だと思った俺は速攻で行動を起こした。


 何をしたのかって?


 そりゃ『彼女の恋人』として『彼女の両親』に挨拶をしに行ったのだ。


 勿論、歓迎などされなかったけれど当時から『人身掌握』が得意だった俺は彼女の両親をあっという間に掌握して懐柔した。


 そして彼女の婚約者とは婚約を破棄させて俺を彼女の正式な婚約者として認めて貰う事に成功した。


 そういう前準備をパパッと済ませて早々に彼女とは『初夜』を迎える事になった。


 ラブホなんて雰囲気の出ない場所はノーサンキュー。お互いの家では両親の存在が気になって集中出来ない。


 という訳で有り金はたいて都内のホテルを予約して最高の『初めて』を迎える事にした。


 中学2年生に手痛い出費だったけれど彼女も喜んでくれたしロマンチックな雰囲気を演出出来て彼女は流されるように俺に抱かれてくれた。


 お互いが初めてではあったけれど俺は色々と前準備をしておいたし前知識も十分だったから余裕を持って彼女をエスコート出来た。


 そうしてホテルで一泊した朝、お互いに照れ臭くも笑い合えるくらいには俺達『初体験』は上手く行ったのだと思う。






 それから彼女と居る時間が劇的に増えた。


 特別なイベント――クリスマスやら学校の行事やらは常に彼女と一緒に行動したし、そういう日には必ずと言っても良いくらいエッチをした。


 勿論、他の日だって特別な用事がなくても彼女とはエッチしていたけれど特別な日は必ず『特別』を演出して雰囲気を盛り上げてイチャイチャした。


 時には彼女と放課後の教室で2人きりになった時にいきなり発情して迫ってきて教室で密かにエッチしてしまった事もあったけれど、そういう突発的なイベントも含めて彼女とは上手くいっていた。


 恋人との逢瀬に夢中になりすぎて勉強が疎かに――とかは良く聞く話だが俺に関してそれは全く問題ではない。


 成績なんて全く気にしないという事もあるのだが、それ以前にテスト前日に彼女と一晩中エッチして意識が朦朧としていたとしても――俺は満点が取れるからだ。


 彼女の方は何故か寝不足なのに肌がツヤツヤになっていて逆に成績が上がっていた。


「わたくしにもよく分かりませんが、あなた様と逢瀬をした後は妙に頭が冴えて普段以上の実力を発揮出来るみたいです♡」


 とかなんとか言っていた。


 まぁ俺と彼女は色々な意味で問題なく『お付き合い』が出来たという事だ。






 彼女との『お付き合い』は長く続いた。


 中学2年生から始めて大学を卒業するまでの9年くらいは続いた。


 1ヶ月の平均エッチ回数が30回オーバーというラブラブでエロエロな関係を維持し続けた結果、彼女は『昼は淑女、夜は淫乱』という男にとって理想的な女へと成長と遂げていた。


 そんなに長い間1人の女だけを抱きて飽きないのかって?


 飽きるどころか全く足りないくらいだ。


 俺は確かに天才だし大抵のものは極短時間で理解出来てしまう『理解力』の持ち主ではあるけれど――『彼女』という存在を全て理解出来たとは全く思えなかった。


 1人の人間――1人の女を完全に理解しようとして、それなのに毎日にように新しい発見がある。


 全てを理解したと思って最初から全てを確認してみると『理解したと思っていた彼女』と『現在の彼女』に圧倒的多数の齟齬を発見する事になる。


 当たり前だ。


 俺が理解したと思った瞬間の彼女はまさしく一瞬のもので彼女は常に変化しているのだから。


 その変化を追うだけで人間の一生なんて短過ぎるくらいだ。






 勿論、俺は大学を卒業したら彼女にプロポーズするつもりだったし彼女には沢山俺の子を産んで貰うつもりだった。


 だから――彼女から別離を告げられた時は頭の中が真っ白になった。


 理由を問うと彼女はボロボロと涙を流した。


 そうして彼女が泣きながら語った『別れの理由』は完全に彼女の『エゴ』と言っても良いようなものだったが――それだけに深刻だった。


 彼女は語る。


 俺を愛している。このまま一緒に居たい。一生傍に居たい。


 けれど彼女は『その日』気付いてしまった。


 彼女の肉体が――正確には彼女の美貌が僅かではあるけれど劣化してしまっている事に。


 勿論、そんな事は彼女の身体のコンディションが偶々少し悪かっただけの偶然ではあるけれど、それ以上に彼女はショックを受けていた。


「…恐いのです」


 彼女が恐れたのは自身の美貌が劣化する事に対してではなかった。


 まして美貌が崩れ俺に嫌われる事ですらなかった。


「あなた様に『最高の自分』を見せられなくなる日が来る事が溜まらなく…恐いのです」


 彼女が恐れたのは最高の自分を俺に見せる事が出来なくなる『未来』。


 そんな未来が来るならば、今――少なくとも彼女が最高の自分を保てている今の内に俺と別れてしまう方が良い。


 そういう結論に達してしまった。


「あなた様を愛しています。あなた様以外の人を愛する事は絶対にありません。けれど、これ以上あなた様と一緒に居る事は…出来ません」


 彼女も俺の傍から離れる事は自分の我侭だと自覚があったのだろう。


 何度も何度も俺に謝って頭を下げて――それでも彼女の決意は固かった。


「どうか最後に、もう1度だけ…逢瀬を」


 そうして俺は彼女との最後の夜を過ごし――別離した。






 タイミング的に考えて彼女が妊娠した確率は90%を超えると思う。


 俺とは会えない代わりに俺との子供を傍に置いてこれからの人生を過ごしていくという事なのだろう。


 彼女の実家は金がある筈だし、彼女と彼女の子供1人くらいなら一生面倒を見て貰うくらい問題ないだろう。


 そう。彼女の方は――色々複雑でも問題なかったのだ。


「…マジかよ」


 だから問題なのは結果的に振られてしまった俺の方だった。


 正直、寂しい。


 というか超寂しい。


 今まで少しでも時間があれば彼女と乳繰り合っていたのが急に何もする事がなくなってしまった。


 彼女を優先して彼女以外の人間関係を片手間で過ごしてきたので友人と呼べる者も殆ど居なかった。


 何より俺は完全にやる気を失った。


「あ~。何がいけなかったんだろ」


 とりあえず暇なので天才的な頭脳を使って破局してしまった原因を考えてみる。


 そして出た結論は――『彼女1人を愛しすぎた事』が原因だった。


 俺は彼女だけを徹底的に、それこそ体の隅々まで完全に記憶して何処をどう触れたら気持ちよくなって、何処を触れられるのを嫌がるのかを完璧に把握している。


 彼女の身体――否、身体に限らず彼女の事なら彼女本人よりも詳しい自信があるし、彼女だけを見てきて彼女だけを愛してきた。


 だから――彼女は『俺の視線』というものに異常なほどに敏感だった。


 例え100メートル離れていても俺の『視線』を感じれば彼女は速攻で俺の存在に気付いたし、エッチの最中でも俺の視線を受けるだけで彼女の感度は何倍にも跳ね上がる。


 だからこそ彼女は『最高の自分』以外を俺の視線の中に入れる事に対して強い恐怖心を抱いてしまうようになった。


 しかし、だからと言って『これ』が失敗だったなどと言われても俺が困ってしまうのだ。


 俺は1人の女を徹底的に愛しただけだし、彼女も俺に愛される事を悦びと共に受け入れていた。


 それならどうすれば良かったのかというと…。


「(彼女が常に最高の自分を俺に見せてくれるようになれば良い。決して劣化しない美貌を手に入れる事が出来れば俺の前から去る理由は無いんだから)」


 という結論になった訳だが…。


「(阿呆らし。不老長寿の妙薬でも探せってのか?)」


 そんな物が手に入れる為にはそれこそ――『』にでも行くしか手はないではないか。




 ★




 こうして俺は望み通り『剣と魔法の世界』へと転生を果たし、そして…。


「(大魔王はその内気付く。俺が人間種である限り、いずれ寿命が尽きてしまう事実に)」


 だから、その内希少な『回復手段』である俺を亡くさない為に対策を施す事になる。


「(不老長寿の妙薬。大魔王の手持ちにあろうとなかろうと必ず探し出すだろうし、必要なら『製薬』の専門家を確保してある)」


 ソフィアの製薬は俺の指導によってかなりの腕前になっている。


 ソフィアを利用して『彼女』と寄りを戻す?


 いやいや。


 今更『彼女』と関係を繋ぎ直すのは非常に困難だし、そもそも転生して16年以上経っている。


 時間の流れがどうなっているのか知らないが今更手遅れと考えておく方が現実的だ。


 だから…。


「(ソフィアに作って貰った『不老長寿の妙薬』をソフィア自身に飲んで貰えば良い)」


 それでソフィアが自身の美貌の劣化から俺の視線を怖がるという二の舞は回避出来るだろう。


 まぁソフィアが『彼女』と同じ道を歩むとは限らないが『手段』を確保しておいて損はないだろう。


 あんな思いは――お互いに愛しているのに別離を告げられるような最悪の出来事は2度とごめんだった。




 ☆大魔王




「…という訳で彼の伴侶に『不老不死の妙薬』を作れるか尋ねた結果、何故か『不老長寿の妙薬』なら製薬を引き受けると答えられました。何故か製薬の必要な材料のリストも渡されました」


「ほぉ」


 予想はしていたがラルフは不老不死には興味がないらしい。


 私から見ても不老不死など唯の呪いでしかない訳で、そんなものを求めるようになったらお仕舞いだ。


 まぁ魔王であるラルフが外敵に敗れて死ぬとは早々思えんし、例え病気になっても例の嫁が簡単に治してしまうだろう。


 いずれは兎も角、今は不老長寿でよしとしておくか。


「ふむ」


 ラルフの嫁が寄越した材料のリストをサミエルから受け取り確認してみる。


 いくつか貴重な品も混ざっているが非常識と思えるほど高価な物を要求しているという訳ではない。


 ラルフの事だから多少はチョロまかすつもりはあるだろうし、恐らくラルフだけではなく嫁の分の『不老長寿の妙薬』分も請求しているのだろうが、それを含めても洒落で済む程度の余剰分といったところだ。


「この材料は直ぐに揃うのか?」


「はい。大半は大魔王様の確保してある保管庫に既にありますし、それ以外も数日中には揃える事が出来るでしょう」


「ならば急ぐ必要はないが確実にラルフの元へ届けよ。分量も正確にな」


「ははっ!」


 そうしてサミエルは私の命じた仕事を忠実に達成する為に動き始めた。


「……」


 そして私はラルフが寄越した製薬のリストにソーっと魔法力を翳して『裏側』に書いてある内容を確認する。


「無駄に手の込んだ仕掛けをするものだ」


 サミエルでは気付かれないレベルの隠蔽工作の隠し文字だ。


 その内容は…。


『不老長寿になるのは嫁と同い年になってからでも良いですよね?』


「ああ。そういえば転生者とはいえ肉体的には16の子供だったか。今の姿で不老になると永遠に嫁より年下の姿になるから2~3年待って欲しいという事か」


 ラルフが転生者――しかも異世界からの転生者である事など一目で分かった。


 まぁ、だからどうしたという事も無いし2~3年くらいなら待っても支障はあるまい。


「くくく。精々私の役に立って貰うぞ。ラルフ=エステーソンよ」


 奴も私を利用するつもりだろうが、お互いに利益がある関係である以上そんな事は『当たり前』の事だ。


 私はなに不自由なく動く身体で城の中に笑い声を響かせた。




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