第52話 『魔王。再び面倒な仕事を押し付けられる』


「マスター。『ドールズ』からの報告の集計結果が出ました。本日の襲撃回数は16回。人数は凡そ36人でした」


「怪我をした者は?」


「居りません」


「そうか。怪我をしたなら、どんな些細な物でも報告を徹底するように。必要と判断すれば配布した魔法薬の使用を許可する」


「イエス、マスター」


 あの日から幾日かが経ち、人間種の国の中で暮らす俺達は日常的に薬――『魔法増幅薬マジカル・ブースター・ドラッグ』を服用した中毒者達に襲われるようになっていた。


「わたくし達も幾度か襲われましたが、思っていたほど驚異という程でもありませんでしたわね」


「相手は唯の一般人だしなぁ」


 人間種の一般人でも服用すれば英雄種並みの魔力を得る事が出来る――とは言っても魔力だけ増幅されても身体能力は変わらないし、薬で痛みを感じなくても頭を吹っ飛ばされれば当然死ぬ。


 そもそも薬中で頭がパーになっている相手など俺達の敵ではない。


 薬欲しさに俺達を殺せば薬をくれると誰か――恐らく天使の尖兵にでも言われたのだろうけれど今のところ驚異は訪れていない。


「正直、『ドールズ』達が戦闘経験を積む相手としても物足りない相手のようです」


「まぁ…そうだろうな」


 唯でさえ『ドールズ』は強いのに、最近では単独行動を禁止しているので必ず襲撃者に対して複数であたる事になっていた。


「チームを組み、連携して事にあたるという意味では経験を積んでいると思いますが…それを踏まえても物足りない相手です」


 最初の頃こそ搭載された『核融合炉』を『戦闘モード』に引き上げて対処していたのだが、最近では『通常モード』のままで対処出来るようになってしまった。


 頭がパーになって真っ直ぐ突っ込んでくるだけの相手など、例え魔力が増幅されていても既に『ドールズ』達の敵ではないようだ。


「まぁ、それは相手もわかっていて仕掛けている『消耗戦』だからなぁ」


 天使達の狙いは俺達の抹殺ではなく、天使に被害を出さないという前提の元、俺達を肉体的にも、精神的にも消耗させて大魔王の護りを崩す事。


「今はまだ良いが『消耗戦』というのはストレスが溜まる。イライラが蓄積すれば些細な事でもミスをするし、ミスは連携を崩し不和を呼び込む」


「…陰険な事を考える天使もいたものですね」


「困ったものだ」


 とは言いつつ、実はそれ程困っていなかったりする。


 理由は単純に天使達が考えるよりも『ドールズ』達の結束は遥かに強いからだ。


 その原因となるのが俺の狂信者を生み出したシリアル№016『十六夜』だ。


 十六夜が『ドールズ』に与える影響力は半端じゃなく強く、俺の為なら例え100年だろうと消耗戦を受けたつという気構えがあったりする。


 更に輝夜が毎晩俺とオリヴィアの情事を出歯亀しているのでエッチな事に興味津々な『ドールズ』達の良いストレス解消になっていたりする。


「(これらの状況を踏まえて考えると、天使達は『ドールズ』の持つ『念話』の存在を知らないとみえる)」


『念話』があるからこそ十六夜は『ドールズ』に対して強い影響を与えているのだし、輝夜の出歯亀を共有してストレスを解消出来る。


 で。その十六夜なのだが…。


「なんか…最近、妙に十六夜が色っぽくなった気がする」


「そうですわね。あなた様に褒められたり頭を撫でられたりすると、その…特に嬉しそうですものね」


「……」


 貞淑な昼のオリヴィアは言葉を濁したけれど、実際には俺が褒めたり頭を撫でたりすると身体をビクンビクンと跳ねさせて――『私、今イキました♡』みたいな恍惚の表情で見つめてくる。


 十六夜は『超』が付くほど重い女だが、あんなに色っぽい目で見られると俺もグラッと来てしまう。


 まぁ十六夜本人は『16』という数字に思い入れがありまくりなので『ドールズ』で1番目に俺の寵愛を受けようなどとは思っておらず、それどころか『16番目』に寵愛を受ける事を強く望んでいると公言しているくらいだ。


「(ソフィア様なら絶対に無理だと思っていましたが、オリヴィア様なら泣いて懇願すればマスターとの1夜を許して貰えるかもしれませんね)」


 なんて事を小声で話している『ドールズ』達の会話を俺の耳が捕らえていたが、とりあえずリアクションはしないでおいた。


 俺の知っているオリヴィアはソフィアと同等か、それ以上に独占欲の強い女だったから。




 ☆熾天使ミカエル




「ねぇ。いつになったらルシフェル様は天界にお戻りになられるのかしら?」


「…もう何千年も待ったんだから数ヶ月くらい普通に待ちなよ」


「……」


 私は未だに地上への未練を断ち切れていないルシフェル様を思って切ない気持ちに身を焦がす。


「ルシフェル軍で今1番厄介なのが魔王サミエルで間違いない。こいつは下手をすれば君でも苦戦する突然変異の化け物だ。しかもルシフェルへの忠誠心も相当な物で、ルシフェルを死んでも守るだろう」


「流石ルシフェル様。良い部下をお持ちだわ」


 言葉とは裏腹に私の心は穏やかではいられない。


 私を差し置いて何千年もルシフェル様の傍で信頼を得てきた女。


 それだけで――万死に値する。


「次に厄介なのが魔王ラルフ。今、僕達がアタックを掛けている異例の人間種出身の魔王だね。こいつは兎に角、頭が良くて僕達の狙いに気付いて巧妙に対処されている気がする。例の『軍団』も厄介だし一筋縄じゃいかないだろうね」


「…私が直接殺してくるわ」


 私が1番手っ取り早い方法を提示する。


「だから、それは駄目だって。対処の為に送り込んだ天使が1人殺されて評議会はピリピリしているんだから。これ以上天使に犠牲者が出るような直接介入は許可されないよ」


「…あんな馬鹿を送り込んだのは一体誰なのかしら?」


 自意識過剰でプライドばかり高くて、その癖無能で脆弱な大天使。


「僕は知らないよ。評議会で決めたんじゃないの?」


「なんで下から2番目の『大天使』なんかを送り込むの?最低でも『智天使ケルビム』を送り込みなさいよ」


「だから…僕は知らないよ」


 天使達の評議会――『天上評議会』は無能揃いだ。


「折角指導者が変わったというのに…評議会のメンバーも同時に一新出来なかったのかしら?」


「無茶言わないでよ。指導者が変わったくらいで何千年も権力で甘い蜜を吸う事に溺れた老害どもが大人しくなる訳ないじゃないか」


「…そうね」


 天界は今――末期状態にある。


 この状態を何とかする為にもルシフェル様には天界にお戻り頂かなくては。


「それと…ルシフェルを天界に連れ戻す事は天界の総意じゃないからね。新しい指導者によって一応は承諾されたけど、評議会の大半は否定的だよ」


「…あなたも私の邪魔をするの?」


 自分でもゾッとするほど冷たい声が出た。


「あくまで大衆として意見だよ。僕は君に逆らうほど馬鹿じゃないさ」


「…そう」


 一応は納得しておく。


 今は少しでも手駒になる者が必要だし、邪魔になるようなら邪魔になった時に――殺せば良いだけの話だ。


「ああ、ルシフェル様♪次にお会い出来るのはいつになるのかしら?」


「……」


 私は彼――『熾天使セラフィム』ガブリエルを無視して愛しいルシフェル様への思いを馳せた。




 ★




 消耗戦を仕掛けられて少し時間が経ち、それで俺は1つの結論に対して確信を得る事が出来ていた。


「どうやら天使どもは地上がどうなろうと知った事じゃないみたいだな」


「後先考えずに薬をばら撒いていますものね」


「まぁ、これも大魔王の地上への未練を断つ為の一環なのだろうけれど…」


 地上が薬中で溢れ、滅茶苦茶に混乱すれば大魔王が地上を見限って天界に戻る――とでも思っているのだろう。


 実際には既に天界を見限っている以上、大魔王が地上を見限ったとしても天界に戻る事はありえないのだが。


「天使達としては俺の身動きを封じて、薬中どもに大魔王の居城を襲わせて、サミエルに護られながら逃走させる…という計画だろうな」


「逃亡中も中毒者に襲われ、サミエル様しか頼る者がいない状況を作り…その上でサミエル様を打倒する訳ですか」


「まぁ、計画としては一応利にかなっていると思うが、2つ…計算を間違えている部分があるな」


 1つは勿論『魔王サミエルを打倒する』などという非現実的な事柄。


 あの非常識な強さを持つ魔王を打倒する事を計画に組み込んでいる時点で天使達の計画というのは既に破綻しているように思える。


 2つ目は俺が早々身動きを封じられる訳が無いという事。


 式紙、転移石、『ドールズ』、どれをとっても俺が大魔王を護る為に駆けつるのに十分過ぎる効力を持つ。


 つまり最低でもこの3つの全てを封じない限り大魔王の護りは突破不可能という事だ。


「天使達が直接介入してくるなら兎も角、薬中どもに侵攻されるだけなら全く驚異じゃないしな。消耗戦にしても大魔王が力を取り戻すまでの間なら余裕で対処出来そうだし」


「天使達は何を考えているのでしょうか?」


「知らね」


「あ♡」


 話に飽きて俺がオリヴィアを抱き寄せるとオリヴィアは力を抜いて俺に抱き締められるがままになる。


 最近のオリヴィアはこういう反応が多くなったのだけれど――それが少し気に入らない。


「オリヴィア」


「はい?」




「ソフィアに遠慮するなよ」




「っ!」


 ビックリして身体を硬直させるオリヴィア。


「最近、お前は俺に対して基本的に『受け身』の姿勢だよな。積極的に俺を求めないのはソフィアに遠慮して自重しているからだろ?」


「……」


「ソフィアが居ぬ間に…という訳じゃないが、この1年は特別な時間なんだぞ」


「特別…ですか?」


「ソフィアは必ず取り戻す。その前提がある以上、この1年はオリヴィアの為の時間だ。今だけは俺はオリヴィアの為だけに動くし、オリヴィアだけを愛してやれる」


「……」


「ソフィアを取り戻した『後』には、もう2度と来ないかもしれない『特別な時間』なんだぞ」


「あ」


 ソフィアが俺の『正妻』である以上、オリヴィアの『恋人』という地位は動かない。


 けれど『正妻』が不在である今ならば――俺はオリヴィアを1番に考える事が出来る。


「勿体無い事を…しました」


「だろ?」


 オリヴィアが遠慮していた時間は『特別な時間』の浪費という事になる。


「あなた様っ…!」


「お…っと」


 抱き締めていたオリヴィアが翼を使って俺をソファの上へと押し倒してくる。


「覚悟…してくださいませ」


「…何を?」


「わたくし、この1年でソフィア様を2番に引き摺り下ろして見せますわ」


「む…ぐっ」


 何かを言おうとした俺の口をオリヴィアが自身の唇を使って塞いで言葉を封じた。


「んぅっ♡ちゅっ♡ちゅぅっ♡」


 まだ昼なのに――貞淑である筈のオリヴィアは既に情熱の塊となって俺に目一杯の愛をこめてキスを繰り返してくる。


「(何を…言おうとしたんだっけ?)」


 オリヴィアの勢いに押されて唇を塞がれる前に何を言おうとしたのか忘れてしまった。


「(まぁ…いっか)」


 今はオリヴィアの情熱に身を任せる事にした。






 ソファの上で幾度か愛し合った後、まだ情熱の冷めないオリヴィアに連れられてベッドへと場所を移した。


 それから夜まで求めたり、求められたりして過ごして――やっと少しだけ落ち着きを取り戻していた。


「恥ずかしいですわ♡わたくし…明るい内から求めてしまうなんて…♡」


 少し落ち着いたと言っても、それは文字通り『少し』であってオリヴィアの中にはまだまだ情熱の火が燻っているようだった。


 恥ずかしそうに頬を染めながらも俺に抱きついて意地でも離れようとしない。


「愛しているよ。オリヴィア」


「~♡」


 そんなオリヴィアを愛おしく感じて耳元で囁くと歓喜して益々俺に強く抱きついてきた。


 暫くはオリヴィアのターンが続きそうだった。




 ☆大魔王




 私の現在の直属の配下は『サミエル』と『ラルフ』の2人だけとなっていた。


 量産型人形兵の中に入れた『エルズラット』と『タキニヤート』が居るには居るが、奴らは『奴隷の契約』によって縛られる存在であるし、私の『手札』というには少々弱い。






「しかし…面白い2人が配下に残ったものよのぉ」


 サミエルとラルフはハッキリ言えば『対極』とも言えるような存在だ。


 性別は勿論だが、性格、能力、思考や好みに至るまで何もかもが正反対で、よくもまぁ出会った瞬間に殺し合いにならなかったものだと感心するほどだ。


「まぁ、ラルフの奴が負ける戦いを挑む馬鹿ではなかっただけ…という事もあるがのぉ」


 出会いから現在までラルフがサミエルに勝てる可能性はゼロに等しい。


 ラルフよりもサミエルの方が圧倒的に戦闘力において優れている――という訳ではない。


 実際の話、私から見ればサミエルには『弱点』と呼べる物が存在する。


 サミエルは確かに『魔王』や『勇者』から見ても規格外なほどに強い。


 けれど、それはあくまで『個人戦闘力』が非常に優れているのであって、相手が複数になればなるほどにサミエルの優位性は落ちていく。


 敵が1人ならばサミエルは100%のパフォーマンスを発揮出来るが、敵が2人になった場合にはパフォーマンスは確実に減少する。


 つまり複数の配下で固め『篭城戦』を得意とするエルズラットと、死霊術で配下を無制限に増やし『物量戦』を得意とするタキニヤートの2人は、自覚はなかっただろうがサミエルにとって『苦手な相手』にカテゴライズされていた。


 まぁ天使どもの助言によってサミエルが『物量戦に弱い』と教えられていたからこそ100万もの軍を率いて一気に私を叩こうとしたのだろが――ラルフの存在がそれを覆した。


 ラルフはサミエルとは対極に物量戦に対して滅法強い。


 奴自身も、奴の配下も広範囲に強力な攻撃を叩き込める戦法が多い為、100万の軍団に対して一方的な蹂躙を可能にした。


 私の元に残ったのがサミエル1人だったのなら天使どもの狙いどおり『逃亡』以外に打つ手はなかったであろう。


 サミエルが幾ら強かろうが100万の相手を1体1体倒していては限が無い。


 結局のところ、ラルフがサミエルに勝てない最大の理由は『相性』だった。


 ラルフが現在抱える配下の数は178。


 その1体1体が『魔王』や『勇者』に匹敵する強さを持っているとしても、その『数』はサミエルにとっては驚異ではない。


 それならサミエルに勝てるだけの数を用意すれば良いだけのように思えるが――そこがラルフの『弱点』というべきなのだろう。


 ラルフの配下は少数精鋭の一騎当千。


 そうなった理由は単純にラルフが配下に対して『過剰な愛情』を注ぎこんだ結果だ。


 178の配下全てを大事に思い過ぎているから、その1体でも失わない為に過剰とも言える戦力強化を施した。


 逆に言えば――『ラルフは配下を使い捨てる事が出来ない』という事だ。


 それがラルフがサミエルに勝てるだけの『数』を用意出来ない理由であり、ラルフが抱える最大の『弱点』とも言える。


 ラルフは配下を大事にしすぎるから下手に数を増やせないし、配下を1体でも失わない為にサミエルのような規格外の相手と戦う事を避けようとする。


 だからラルフにとってサミエルは間違いなく『天敵』なのだ。


 戦闘力云々よりも『戦えば必ず配下を失う相手』と言う意味で。


「くっくくく。皮肉なものよのぉ。そんな2人が組む事で互いの弱点をカバーし合える最高の『相性』を持っているとは」


 ラルフがサミエルに勝てない理由も『相性』なら、2人が組んで戦力が何倍にも強化される事もまた『相性』なのだから。


 サミエルが苦手な『物量戦』をラルフがカバーし、ラルフが嫌う『配下を殺す可能性のある敵』をサミエルが蹂躙する。


「ミカエルよ。油断しておると貴様でも食われてしまうかもしれんぞ。くっくくく」


 いずれ訪れるであろう天使どもとの決戦を思い、少しは退屈が紛れそうな事に笑いがこみ上げてくる。




 ★




「医者…ですか?」


 大魔王の護衛の為に大魔王の居城から動けないサミエルに呼び出された俺は1つの依頼を受けているところだった。


「うん。どの程度効果があるかは分からないけど、一刻も早く大魔王様に力を取り戻していただく為には必要だと思って」


「お気持ちは分かりますが、余り意味は無いと思いますよ」


 大魔王が弱体化した最大の原因は『心核コア』が封印されて人間種並みの魔力しか生み出せなくなっている事だ。


 身体能力も同時に弱体化されているが、そっちは『おまけ』みたいなもので『心核コア』の封印さえ解ければどうとでもなる。


 で。俺は大魔王に依頼を受けて彼女の身体を『スキャン』で探査してみた訳なのだが…。


「天使達が組んだ独自の術式。天使達以外に扱えないなんらかの力を利用して発動するものらしく、封印を開放する為にも天使達の力が必要です」


 封印の術式自体は解明出来たが、封印を解除する為の力――『天聖力テレズマ』を確保出来ないので俺には不可能だった。


「逆に言えば『天聖力テレズマ』を確保出来れば良い訳だろう?それを含めて優秀な医者に心当たりがあるんだ」


「『天聖力テレズマ』を扱える医者…ですか?」


「正確には天使の事を研究している医者だよ」


「……」


 正直、気が進まない。


 封印されていると言っても膨大な魔力を生み出す大魔王の『心核コア』をいつまでも押さえ込める訳も無く日に日に劣化しているようだし、このまま黙って見守れば数ヶ月もすれば開放されるのだ。


 余計なアプローチをして下手なちょっかいを掛けるよりも大魔王の守りを固めて時間を稼いだ方が堅実だ。


 堅実なのだが…。


「大魔王様の護衛で動けないサミエル様に代わって私に医者を連れて来い…という事でしょうか?」


「そうそう。そんな感じ」


「…なんかサミエル様、最近私を遠慮なくコキ使ってくれますね」


「…気のせいだよ」


 この依頼、どう考えても大魔王の許可は取っていないだろう。


 ジッとしていられないサミエルが自分では動けない現状に対して『出来る事』を考えた結果、俺を使って『何かをする』という事になったのだろう。


 ハッキリ言って無駄になる行動にしか思えないが――断ったらサミエルがぶち切れそうだし受けるしかない。


 俺が理論的に話しても『大魔王様の為に出来る事があるなら万に1つの可能性でもやるべきだろう!』とか返される。


 サミエルの思考は理屈じゃ覆せないのだ。


「分かりました。行きますよ」


「頼んだよ♪」


「…万が一の可能性なのですから成果が出せなくても怒らないでくださいよ?」


「…善処するよ」


 この理不尽魔王、本当に何とかしてくれないかなぁ。




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