第6話 『まだ15歳。嫁に魔法を教える事に』


「痛いっ!痛いっ!痛いですっ!旦那様っ!許してくださいっ!」


「…我慢しろ」


 部屋にソフィアの悲鳴が響く。


 いや。別にソフィアをいじめている訳ではなくソフィアの身体に魔力を流して『魔力回路』を開いているだけだ。


「これ絶対『初めての時』より痛いですよっ!」


「いや。そんな生々しい告白されても困るんだが」


 魔法を使う以上、魔力回路を開いた方が有利だし、かなり痛みが走るがどうするかソフィア本人に決めさせたのが…。


『大丈夫です。こう見えても痛みには強い方ですから』


 とか言っていたのに、この様だよ。


「まぁ俺も初めての時は余りの激痛の声も出せずに床の上を転げまわったけどな」


「え?旦那様の初めてって、お尻の…?」


「そっちじゃねぇよ!」


 なんてこと言いやがる、この女。






 流石に連日でやると本気で心が折れてしまうので数日置きにソフィアの魔力回路を開いては悲鳴を上げさせていった。


 お陰で俺が宿でソフィアとSMプレイをしていると噂になってしまった。


 女を痛めつけるのも、女に痛めつけられるのも趣味じゃねぇよ。


 ともあれ2週間程も時間を掛けて魔力回路を開いたソフィアに魔法を教えていく。


「なんだか魔力がスムーズに流れすぎて上手く制御出来ません」


「流石にそれは慣れるしかないな」




 ★




 時間を掛けて開いた魔力回路に魔力を流す事に慣れさせて、その上で俺の頭に記録しておいた水の魔法を教えていく。


「……」


 その授業中、何故かソフィアはボンヤリと俺の顔を見つめていた。


「どした?疲れたか?」


「…よろしかったのですか?」


「ん?」


「魔法使いにとって弟子とは自分の研究の全てを受け継がせる大事な存在ですよね?年上の私なんかを弟子にして良かったのですか?」


「……」


「それに…私は身も心も穢れた女です。お金の為に大勢の男に身体を許してきたふしだらな女です。私なんかが旦那様の弟子でよろしかったのでしょうか?」


 ああ。


 魔法を教えるのに夢中になって心のケアが少しばかり疎かになってしまっていたようだ。


「脱げ」


「…え?」


「服を脱げ」


「えっと。その…?」


「今から俺がソフィアの事をどれだけ好きなのか身体に教え込んでやる」


「え?えぇ~!」


 ソフィアは混乱して動けないようなので抱き上げてベッドに運んで脱がせていく。


「ま、待ってください。旦那様が私の事を好きっていうのは嘘…でしたよね?」


「『愛している』は嘘だって認めたが『好き』まで嘘と言ったおぼえはねぇよ」


「っ!」


「元々ソフィアの容姿はめっちゃ好みだし、中身もかなり好みだ」


「え?その…うぅ」


 ソフィアはそれでも大分混乱していたが…。


「ほ、本当…に?」


 宣言通り言葉ではなく身体に直接教え込んでやる事にした。






 結果。ソフィアはメロメロになった。


「旦那様♡旦那様♡」


 日常生活から俺にベタベタしてくるし、隙あらば抱きついてくるし、人目が無ければ何処でだってキスしてくる。


 流石にやりすぎと思うが仕込んだ張本人である俺が指摘する事でも無いのでソフィアの好きにさせる事にした。




 ★




 ソフィアの魔法の習得は順調だった。


 特に効果があった事は式符を作る際の製紙についてだった。


 俺は『火』に適正のある魔法使いなので製紙の時に水に魔法力を放射する作業は思いの他大変だったのだ。


 魔法力は水に溶けないし製紙の間中魔法力を放出して一定の濃度を保つ作業はひたすら非効率的だった。


 それがソフィアが水魔法を習得した事によって一気に解決した。


 ソフィアも水に魔法力を溶かすなんて事は出来ないが、そもそもソフィアの魔法で水を作り出せる訳で、その作り出した水にはソフィアの魔法力がたっぷりと含まれている。


 それを使って式符を作る事で今までよりも強力な式紙が作れるようになった。






 まぁ、それは良いのだが…。


「旦那様♡旦那様♡もっと旦那様の事を沢山教えてくださいませ♡」


 ソフィアの俺への懐き具合が半端じゃなく加速し続けている。


 毎晩俺とエッチしたがるし、お互いが疲れ果てるまで幾度も求められる。


 そして事後のピロートークで俺の事を何でも知りたがる。


 これが物凄い罠で、寝落ち寸前のところにソフィアの甘い声で『おねだり』されたら気付いた時にはせがまれるままにペラペラ喋っていた。


 我に返った時にはソフィアは俺に前世の記憶がある事を知っていたし、どうしてこの世界に生まれ変わる事になったのか事情も把握していたし、この世界の両親の事を結構尊敬している事をも知られていたし、俺が子供時代しでかした数々の事も粗方話し終えていたし、俺の魔法の秘密の事も全て喋っていた。


「ソフィアに裏切られたら俺は破滅するな」


「洗脳でもされない限り私は絶対に旦那様を裏切りませんし、洗脳されたなら…一緒に破滅しましょう♡」


 笑顔で言う事じゃないと思ったが『まぁ良いか』とも思ったのも事実だった。


 ソフィアは俺好みの美少女だし、毎晩エッチするのも最高に気持ち良いし。


「ちゅ~♡」


 気付いたらキスされているけど全然嫌じゃないし。






 ソフィアの水魔法は俺が提案するのと同時にドンドン進化していった。


 例えば…。


「旦那様。気持ち良いですか?」


「ああ。最高だ」


 いや。エッチな事じゃなくてソフィアにお風呂で身体を洗って貰っているだけだ。


 俺が提案してソフィアの開発した水魔法で、水を石鹸やシャンプー、リンスといった効果に近い物に変質させて洗って貰っているのだ。


 ソフィア自身の身体を使って洗って貰っているのでエッチな事をしているといっても間違いではない気がするが。


「この魔法のお陰で髪はツヤツヤになりますしお肌はスベスベになりますね♪」


「……」


「ね?旦那様♡」


「そっすね」


 うん。良く知っているよ。


 なんといっても毎晩その効果を実感しているからね。


 主にベッドの上で。






 他にもソフィアの魔法は洗濯や料理にも使われる。


「なんだか新妻って感じがしますね♡」


「……」


 裸エプロンで誘惑されました。


 勿論、誘惑には負けました。




 ★




 ソフィアと毎日イチャイチャ、イチャイチャ、イチャイチャしてはいるけれど、勿論忘れた訳ではなく俺達はクランクという男に狙われている。


 が。俺とソフィアは最近魔法の研究(+エッチ)の為に宿に引きこもっていたので奴がどうなったのか知らなかったのだ。


 だからソフィアを伴って約1ヶ月ぶりに冒険者ギルドに顔を出してみたのだが…。


「罰金」


「……」


 ギルドに入った瞬間に例の女職員に依頼を長期間受けなかった罰金を支払わされた。


 罰金の額が銀貨5枚で結構痛かった。


 更にソフィアを冒険者ギルドに登録したので更に銀貨1枚消費。


「誰?君の新しい肉奴隷?」


「次にソフィアを肉奴隷扱いしやがったら…殺す」


「…ごめんなさい。軽率な発言だった」


 マジギレ寸前の俺を見て流石の女職員もしおらしく頭を下げた。


「驚いた。君もそんな顔出来るんだ」


「お前に驚かれるほどの顔のバリエーションを見せた覚えはねぇ」


「それで誰?」


「普通に考えて恋人か嫁か冒険仲間だろ」


「嫁です♡」


 ソフィアは嬉々として『嫁』を選択した。


 まぁ別に良いけど。


「その娘と乳繰り合っていたから冒険者ギルドに顔出さなかった?」


「…そうだよ」


 まさに『その通り』だったので今回ばかりは反論出来なかった。


 それは兎も角、丁度良いのでクランクの動向を聞いてみる。


「クランクは…最近ギルドに顔を出してない。C級の彼は君と違って罰金は取られないけどギルドの中でも少し問題視されてる」


「ふぅ~ん」


「……」


 俺は気の無い返事を返したがソフィアはギュッと俺の腕にしがみ付いてきた。


 俺にメロメロの状態とはいえ、それで全てが吹っ切れた訳ではない。


 仕事だったとはいえ他の男――クランクに身体を許していた事は事実な訳だし。


「それで?依頼を受ける気はある?」


「ああ。ソフィアと一緒に受ける」


「そ」


 素っ気無いが少しだけ機嫌が良さそうだった。


 お母さんか、お前は。


「さて。どの依頼を受けるか」


「私達F級ですし、初心者用の依頼で良いのではないでしょうか?」


「そだな。まずは…薬草採取で良いか」


 この依頼がソフィアの将来に大きな影響を及ぼす事になる事を俺は直ぐに知る事になる。






 ソフィアと2人でギルドが指定した草原まで赴き、2人でせっせと薬草を探す。


「旦那様。薬草って傷薬の材料になったりするのですよね?」


「ん?そうなんじゃね」


「これをどうやって傷薬にするのでしょうか?」


「…さぁ?」


 俺にだって知らない事くらいあるんだよ。


「旦那様の頭の中に蓄積されている魔法書の中には書いていないのですか?」


「基本的に魔法に関する知識以外はスルーしていたからなぁ。薬の作り方とか載ってれば良いんだが」


 俺の頭の中を検索して薬を作る項目を探していく。


「お。薬を作るのって水魔法で出来るんだ」


「そうなのですか?」


「ああ。薬草と水魔法の中の治癒術を組み合わせて作るらしい」


「治癒術。そういえば私の魔法は水を別の性質に変質させるものばかりでしたが、治癒術で薬を作るのも良いかもしれませんね」


「ああ。それは良いかもしれないな」


 という訳でソフィアは水魔法で治癒術を勉強して薬を作ってみる事になった。


 この時点で俺は知る由もなかったのだが水魔法と薬草を組み合わせて作る薬は『魔法薬』と呼ばれていて高額で取引される人気商品だったらしい。




 ★




 ソフィアと水魔法の治癒術は相性が良かったらしく、あっという間に覚える事が出来た。


 更に治癒術と薬草を組み合わせた魔法薬も徐々に作れるようになっていき…。


「旦那様。下級魔法薬が出来ましたよ♪」


「…こっちは薬草が尽きた」


 魔法が楽しいのは分かるが俺に薬草採取を任せるのは勘弁して欲しい。


 ソフィアの為に俺は毎日のように草原に薬草を取りに出かけて、更に火魔法を使って砂からガラスの容器を作って魔法薬の入れ物を作った。


 お陰で最近はソフィアとエッチしてな――いえ本当は毎晩しています。


 昼は魔法の研究に熱心なソフィアだけど、日が落ちると途端に俺に甘えだして擦り寄ってくる。


 魔法の研究如きではソフィアの情熱は冷めないらしい。


 ちなみに魔法薬にはいくつかランクがあって1番効果の薄いものは『初級魔法薬』と呼ばれる。


 最初にソフィアが作り出した魔法薬であり市販の傷薬に毛の生えたくらいの性能しかない。


 ソフィアは直ぐに次の段階である『下級魔法薬』を作れるようになった。


『初級』と『下級』はどちらが上なのか議論の余地があると思うが、この世界では下級の方がランクは上になるらしい。


 ソフィアが今、主に作っているのはこの下級魔法薬だが、偶に上手く行くと『中級魔法薬』を作り出す事がある。


 下級魔法薬と中級魔法薬では本来使用する材料が違うのだが、ソフィアの治癒術の調子が良いと中級魔法薬が出来てしまうらしい。


 まぁ魔法だし何でもありなのだろう。


 但し、そんな偶然の現象が起こるのは中級魔法薬までで『上級魔法薬』は偶然の産物では生まれない。


 上級魔法薬は然るべき材料と施設、そして水魔法使いの腕が良くて初めて作り出せる代物――と魔法書に表記されていた。


 ちなみにソフィアが練習の過程で大量に作り出した初級魔法薬と下級魔法薬は基本的に商業ギルドに卸してお金に変えている。


 中級魔法薬は勿体無いので俺の魔法の鞄に大事に保管してある。


 それでもソフィアの作った魔法薬はかなりの金額で取引される事になり、俺とソフィアの所持金は日に日に増えていく事になった。


 ちなみに薬草や傷薬は直接傷口につける事で傷の治りを早くする効果があるが、魔法薬は口から飲むだけで即座に全身の傷を回復させる効果が発揮される。


 初級では気休め程度だが、下級魔法薬なら飲むだけで全身に傷薬を塗ったような効果を期待出来る。


 中級魔法薬になると重症と思われる傷も直ぐに癒せるほどの効果があるとか。


 上級と更に最上級の魔法薬もあるらしいが、それの効果は流石に説明出来ん。






 そんな事をしていたので、また冒険者ギルドに顔を出すのが遠くなって久しぶりに顔を出したら…。


「罰金」


「……」


 また女職員に長期依頼を受けなかった事で罰金を取られた。


「俺はいつまで罰金を支払わせられるんだ?」


「基本的にF級冒険者を脱却すれば、それなりの期間を空けても罰金は発生しなくなる」


「…俺らって未だにF級だったのか」


「君達は薬草採取の依頼を1件しか受けていないので昇格する要素が何処にも無い」


「……」


 薬草は夢に出てくるくらい採取していたのだが、その全てをソフィアの製薬に使っていたので全くギルドに提出していないのだ。


 そりゃランクなんて上がる方がおかしいですわ。


「ソフィア。何か依頼でも受けてみるか?」


「はい♪旦那様が行くところなら私は何処へでも付いていきますよ♡」


「……」


 愛が重い。


 でも可愛いので気にしない。


「それじゃ適当に依頼を選んで受けておくか」


 ソフィアと2人、並んで依頼を確認して受けるものを選んでいく。


 選ぶと言ってもF級の俺達には選べるほどの選択肢はないけれど。


 ソフィアが仲間になったんだし、そろそろ魔法学院の卒業証明証を提示してランクを一気に上げても良いのだけれど…。


「~♪」


 ソフィアが一緒だし別に無理に高ランクに上がって面倒を背負い込む事も無いか。


 色々悩んだのに結局『薬草採取』を選択してしまった。


 薬草を探すのは流石に慣れたよ。




 ★




 今日も今日とて俺は草原に薬草を採取しに出かけて、ソフィアは宿で魔法薬の製薬に励む。


 一応別行動する時にはソフィアの方に式紙をつけてあるのだが、基本的に宿から出ないソフィアに危険が迫る事は早々無い。


 だからという訳でもないのだが…。


「よぉ」


「……」


 薬草を探す俺の元にクランクが現れたのはある意味必然とも言える結果だった。


「…らしくないな」


「あ?」


「冒険者ギルドの中でも『慎重』で知られるお前にしては随分と大胆な行動を取るじゃないか。成功率100%を確信出来なければどんな依頼でも受けないのが信条じゃなかったのか?」


「……」


 クランクの目には狂気に近い色が映っていたが、それでも人の性質なんて早々変わるものじゃない。


 例え暴走していても元来慎重な人間は慎重に行動しようとするものだ。


「お前をここで殺してソフィアの目を覚まさせる。成功率は100%だ」


「情報収集が不完全なままで出した成功率に信憑性があるとは思えないな。お前の中で本当に成功率は100%だと確信出来ているのか?」


「…黙れ」


「ああ。自分1人で足りない分は後ろのお友達に手伝って貰うつもりだったのかな?」


「っ!」


 俺はソフィアの周辺だけではなく自分の周囲にも式紙を飛ばして偵察させている。


 だから俺はクランクが何日も前から俺を尾行している事には気付いていたし、今日クランクが姿を現す前に3人の黒ずくめの男達と打ち合わせをしていた事も知っている。


 その3人は恐らく暗殺者だと思う。


 音も無く俺と取り囲む3人の暗殺者+クランク。


「お前さえ居なくなればソフィアは俺のものだ!」


「……」


 俺を始末した後の事を考えているのかクランクは歪んだ笑みを見せて笑っている。


 その事は無視して俺は現時点で1つだけ懸念を抱えていた。


「(前世の知識と常識を持つ俺に果たして人が殺せるか?)」


 生まれ変わってから色々やってきたが、未だに人の命に手を掛けた事は無い。


 まぁ人間の体の中に蟲の式紙を入れて自殺に追い込んだ事くらいはあるが直接手を下した経験はゼロだ。


 だから俺を取り囲む4人を躊躇無く殺せるのかという1点のみが懸念だった。


 後々禍根になりそうなクランクを見逃すとかありえないし、クランクに協力する暗殺者も見逃せない。


 ここでクランクを見逃すくらいなら奴に土下座でもして和解した方が100倍マシだ。


 そして俺にソファアを手放す気がない以上、奴との和解は100%ありえない。


 結果、俺には奴を殺す以外の選択肢が残されていなかった。


「やれやれ」


 俺は肩を竦めながら右手の人差し指を立てて、その先端に小さな炎を灯す。


「…やはりな」


 その俺の魔法を見てクランクは嘲笑を漏らす。


「お前が使えるのは火の魔法だけで、しかも初級の魔法しか使えないんだろ?」


「……」


 世の中には魔法に関して多彩な人間も居て、複数の属性に対する適正を持つ者も居るらしい。


 具体的には火、水、土、風の4属性に特殊属性である光と闇の計6属性。


 世の中には2属性適正持ち、3属性適正持ち、更に凄い例になると全属性適正持ちなんてのも居るらしい。


 しかし俺は奴の指摘通り火の適正しか持って居らず、火の魔法以外の魔法を使う事は出来ない。


 ソフィアも持っているのは水の適正のみだ。


「計算通りだ。お前を殺す成功率は100%だ」


 だからと言っても弱いと勘違いして貰っては困る。


 俺が指先に灯したのは確かに火の初級魔法だったが、使い手の練度によっては火の初級魔法というのは巨大に膨れ上がる。


『今のはメ○ゾーマではない…メ○だ』という感じに。


 その膨大に膨れ上がった魔法を俺は指先の一点に収束していた訳だ。


 かなりの魔法制御力が必要になるが、魔法を習得する以前からずっと暇な時間を魔力の制御や魔法力の精製に費やしてきた俺にとっては児戯に等しい。


 そして収束したビー玉程度の大きさの炎の中にドンドン魔法力を追加して注ぎこんでいき極限まで圧縮させてから――ほんの僅かに小さな穴を開けてやる。


 結果、俺の指先からレーザーの如き速さと貫通力を持った極限に細い炎が吐き出されクランク達4人を薙ぎ払った。


「っ!!!」


 声も無く身体を両断されるクランクと3人の暗殺者達。


 魔法学院の卒業試験で12人の教官達を3秒で戦闘不能にしたのも『これ』を使った為だ。


 あの時は12人の教官の手足を残らず切断して12人のダルマを作って転がしただけだが、今回は明確な殺意を持って炎の圧縮レーザーを放った。


 結論から言えば4人に直撃したレーザーは彼らの身体を容易く切断し――更に極限まで高められた超高熱の小さな球体を身体に押し付ける事によって奴らの身体を蒸発させた。


「ん~。死体も残らないと殺したって実感がわかないなぁ~」


 俺が指先に作り出していたのは言ってみれば『超小型の太陽』に近いものだ。


 接触しない限り熱を外に漏らさないように制御していたので周囲へと被害は無いが――この小さな球体に直接触れれば人間の身体なんて触れただけで蒸発する。


 こうして俺は証拠の1つも残さずに4人の人間を――この世から消滅させた。




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