第14話 『S級魔法士。ライバル(?)の帰還』

 

 


 ☆レギニア




 レギニアは気付けば真っ白な空間に立っていた。


「いやぁ~。君も馬鹿な事をしたもんだねぇ」


 そして目の前には見覚えのある『そいつ』が居て俺に対して同情的な視線で、でも笑って話し掛けていた。


「君が最短記録って訳じゃないけど15歳で死んじゃうのは早い方だと思うよ。というか15歳っていったら前世の君より早く死んじゃった事になるしねぇ」


「俺は…死んだのか?」


「うん。頭と心臓を君の認識で言う『熱閃』で撃ち抜かれて、更に身体を内側から蟲に食い漁られるって凄惨な死に方したねぇ」


「…そうか」


 なんとなく自分が死んだんじゃないかという気はしていた。


 けれど話を聞くに想像よりずっと酷い死に方をしたらしい。


「君もねぇ。もうちょっと上手く立ち回れば美味しい目にもあえたんだけどねぇ。結局、前と同じように人に惑わされて苦労をしただけで、そのまま死んじゃったし」


「……」


「中でも『あの子』の喧嘩を売ったのは良くなかったねぇ。あの子に進んで関わらなければ、もうちょっと良い目を見られたかもしれないのにねぇ」


「あの子…ってのはラルフの事か?」


「そうそう。ラルフ=エステーソン君、16歳。王立魔法学院を『歴代最速』の2ヶ月で卒業して弱冠16歳でS級魔法士に任命された稀代の天才魔法使いにして…君と同じく日本から転生したご同類だね」


「…え?」


 今、何か聞き捨てならない事を聞いた気がした。


「同類?ラルフは…俺と同じ日本人だったのか?」


「そうだよ。まぁ君は気付いていなかったみたいけど彼は君が同類だって気付いていたけどねぇ」


「な…に?」


「いやいや。だって君って無用心すぎるもん。普段の言動から普通に当たりは付けられていたけど確信されたのは君がチョコを食べた時だね。あそこで『本物だ』なんて呟けば、そりゃ確信を持たれても仕方ないってもんでしょ?」


「……」


 何も言い返せなかった。


 そもそもの話、俺と同じように日本から転生した奴が居るなんて想像もしていなかった。


「ちっちっち。チョコを食べた時に、それくらい想像出来ないのは少し認識が甘いってもんじゃないかな?少し考えればあんな物を作り出せるのは少なくとも『地球から転生してきた奴』って想像出来て良さそうなものじゃない」


「…俺とラルフ以外にも日本から転生した奴が居たって事か」


「日本かどうかは分からないけどねぇ。少なくとも地球から転生した人はそれなりの数は居る筈だよぉ」


「俺と同じように願いを叶えて貰って異世界に転生した奴が居るんだな」


「いやいやぁ~。ま~だそんな事信じていたのかい?」


「…え?」


「君は誘導されたんだよ。そういう願いをするようにね」


「……」


「君以外も大体の子は願いを誘導されて『異世界に転生』って結末に落ち着いて、あの世界に生まれ変わったのさ」


「…何の為に?」


「ひ・み・つ♪」


「……」


「冗談だよ。今更隠し事をするのもフェアじゃないからね」


 そうして俺は真相を教えられた。


 地球のあった世界の『魂のバランス』を保つ為に『魂の質』が高い人間を選んで異世界に転生させているという話を。


「…騙していたんだな」


「いやいや。正確に言うなら重要な事を『隠していた』だけで騙した訳じゃないよ」


「同じ事だろ」


「君が転生前に用心深く僕に質問していたら僕の叶える願いの不自然さに気付いた筈さ。それに例え誘導されたとしても君は自分で望んであの世界への転生を願った筈だ」


「あんな状況で…そんな真相に辿り着ける奴なんて居るもんか」


「居るんだなぁ~。これが」


「…何?」


「居るんだよ。君みたいに簡単に願いを誘導されてくれる『良い子』とは違って、ニコニコ笑顔で僕らの話を聞いて頷きながら真相を言い当てて自分の利益を掻っ攫っていく『悪い子』がね」


「……」


「言っただろう?『大体の子』は願いを誘導されて異世界に転生したって。中には『例外』って奴も存在するんだよ」


「そいつは…まさか…」


「その通~り。君を完膚なきまでに殺したラルフ=エステーソン君は全ての事情を知って、その上で異世界に転生した例外中の例外って奴なんだよ」


「……」


「過去を遡ってみても何人かは同じように僕らを利用した子は居たけど彼はその中でも相当だよ。例えば君との戦闘とも呼べない戦闘にしても一切無駄が無い。彼は普段の態度とは違って戦闘経験はそれほど豊富じゃないから君との戦闘モドキを使っていくつもの実験を仕込んでいたみたいだし、君を確実に仕留める為の手順をこなすまでの間にほぼ全ての実験を終える効率を叩き出している」


「……」


「更に言うと僕が君の身体を操って逃亡させた事を『十分な結果』として納得出来る許容の持ち主だ。正直言って、その許容量は流石の僕も少しだけ『恐ろしい』って思ってしまったくらいだよ」


 頭の中が真っ白になって『そいつ』の話が右から左へ抜けていく。


「それに恐らく今あの世界に居る転生組の中では彼1人だけだろうね」


「あいつは…全ての事情を知っていたから上手く立ち回っていたのか」


「いやいや。それもあるかもだけど彼だけが僕らから『チート』を持っていった子だって事だよ。あの子だけはスタートから有利だったしねぇ」


「な…に?」


 チート?


「どういう…事だ?」


「そこは流石に教えられないなぁ。唯チートと言っても君が想像している程の物ではないって事は教えておくよ。あったら格段に有利なのは間違いないけどね」


 それは、つまり――スタートの時点で俺とは最初から差があったという事か?


「いやいやぁ~。スタート地点って言っても君って彼から1年近く遅れて開始している訳だからさぁ。チート以前に能力的に君が彼に追いつくのって最初から無理があったんじゃない?」


「俺が…山奥の村で生まれたのは、どうしてだ?」


「ん?」


「あいつは、何処で生まれて育ったんだ?」


「ああ。彼は没落貴族の両親に愛情を惜しみなく与えられてスクスクと育ったみたいだねぇ。没落貴族だから平民と変わりないし、それなりに苦労もあっただろうけどね」


「…不公平じゃないか」


 俺が生まれたところは貧しくて両親にすら扱き使われて愛情を与えられた事なんてなかった。


 おまけに魔物に襲撃されて両親も殺されて…。


「な~にを当たり前の事を言っているのかな?」


「…は?」


 瞬間的にキれかけた。


「世の中不公平なんて当たり前の事だろ?それに、あの世界に転生した者は皆ランダムに転生先を振り分けられて、何処に生まれるかなんて運次第だよ。彼が恵まれたところに生まれて、君が恵まれないところに生まれたというのなら…君に『運』が無いのが悪いのさ」


「そんなのっ…!」


 そんなのどうしようもないじゃないか。


「いいや、違うね。君は転生する時、期待に胸をトキめかせて呑気に構えていたけれど、彼は自信を持って転生を受け入れていたよ。恐らくそれなりの場所と両親に恵まれる自信があったんだろうね」


「……」


「スタート地点というのなら、君と彼は既に『そこ』から違っていたよ」


「……」


 なんで死んでまで奴と比較されて説教されなきゃならないんだ。


 自分が馬鹿だって事はもう十分理解出来ているのに。


「いやぁ~。別に君を苛めるつもりじゃなかったんだけどねぇ。大分話が脇道に逸れてしまったけど、そろそろ本題に入ろうじゃないか」


「…本題?」


「そう。君…もう1回やりなおす気はあるかい?」


「え?」


「まぁ、これもこっちの事情なんだけどねぇ。君が今死んじゃうと地球の方に生まれ変わっちゃいそうな雰囲気なんだよねぇ。こっちとしてはそれは困る訳で、だからもう1回やり直して貰えたらなぁ~と思って色々事情を話している訳だよ」


「…地球に戻れるのか?」


「ああ。このまま死を受け入れるなら君は地球に生まれ変わる事になるだろうね」


「それなら…」


「当然、記憶の引継ぎはないし、そもそも君がある程度育ったらまた願いを叶えに行って異世界に転生させるけどねぇ」


「お前っ…!」


「当たり前じゃないか。こっちはそれが仕事なんだから」


「……」


「断言しておくが、君が記憶を失って地球に生まれてくれたら手間もなく異世界転生させる自信があるよ。君もある意味で『歴代最速』の騙しやすい人間だったからねぇ」


「て…めぇっ…!」


「だから、こうしてサービス交渉しているんじゃないか。君が今得た知識だけでも大分有利に立ち回れると思うよ?」


「…また赤ん坊からやり直すのか?」


「いやぁ~。さっきも言ったけど『今死んじゃうと』って事だから今なら君の使っていた身体を死なない程度に修理してそこに入れちゃおうって訳」


「お前…さっき俺の体は頭と心臓を撃ち抜かれて…しかも内側から蟲に食い荒らされているって言っていなかったか?」


「逆に言えばその程度の損傷って事だよ。僕達の技術なら修理して十分使い物になるレベルまで持っていけるよ」


「……」


「で。どうする?」


「選択肢なんて最初からないくせに無意味な質問してくるな」


「選択肢ならあるじゃないか。唯、どれを選んでも変わりないってだけさ」


 地球に生まれ変わって記憶を無くして、また騙されて異世界に行くか。


 それとも死体同然の身体を修理して、ある程度の知識を生かして生きていくか。


「俺が…ラルフに復讐しようとして成功する可能性はどのくらいだ?」


「君が自分の特性を理解して十全に使えるようになれば十分勝機はあるさ」


「…具体的には?」


「大体最大に見積もって3%くらいだね」


「……」


「おっと。低いとか言うなよ?相手は僕らでさえ利用しようとする超天才児なんだから、君の勝率が3%近く届く時点で奇跡みたいなもんだよ」


「そこまで…か」


「そこまでだねぇ。しかも今の計算は『現時点の彼』と『最高時の君』を比較して出した計算だから、時間が経てば経つほど勝率は下がっていくだろうね。彼って多分大器晩成型だから最盛期になるにはまだまだ時間が掛かると思うし」


「…あれでまだ発展途上なのかよ」


「っていうか僕らでさえ彼の『切り札』を知らないしね」


「切り札?」


「おいおい。まさか彼が君に対して惜しみなく全力で戦ってくれていたとでも思っていたのかい?」


「……」


「そもそも彼が君を攻撃していた『熱閃』だって火の初級魔法…彼の使える魔法の中で1番弱いものを応用しただけだったんだよ?あんなのが切り札な訳がないじゃないか」


「あれが…1番弱い魔法」


「用心深い彼の事だから強烈な奴をキッチリ用意しているとは思うけど、覗き見している僕らの事も意識しているみたいで手の内を見せてくれないんだよねぇ」


「…最低だ」


 覗き見しているこいつも、こいつに覗かれて平然としている奴も。


「いやいやぁ。流石に女の子とエッチしているところまでは見ていないよ。僕達は君達とは価値観が違うからそういう場面を見ても興奮したりもしないしねぇ」


「…そんな事は聞いていない」


 だが密かにホッとしたのも事実だった。


 あるかどうか分からないが、今後俺の情事を覗かれているかもしれないと思うと気が気じゃない。


「それで、どうする?やり直す?転生する?」


「…何かくれ」


「ん?何かって?」


「奴には何かチートを与えてあるんだろう?俺にも…何かくれ」


「あ~」


 そいつは納得したように頷く。


「ん~。まぁ僕達の価値観からしたら、そんなにたいして物はあげられないけど…貰えるなら何が欲しい?」


「魔法を使いたい」


 俺は自分の肉体を鍛えて強くなるのが目的だったが恐らくそれだけじゃラルフには届かない。


 だから魔法を使えるようになりたい。


「ん?君って別に魔法を使えない身体じゃないよ。魔法を勉強すれば普通に使えるようになると思うけど?」


「…え?」


 驚く。普通に驚いた。


「ほ、本当か?」


「ああ。って言うか何で知らないの?君って冒険者ギルドに居たのに、そんな情報も教えて貰えなかったのかい?」


「だって…ラルフ以外に魔法を使っている奴を見た事がないし」


「あ~。そういえばあの国って貴族が魔法の知識を独占しているんだった。だから貴族じゃないと魔法を覚えるのが凄く大変なんだ」


「…ラルフは?」


「王立魔法学院に入学すれば普通に魔法を教えて貰えるよ。一般枠で入学するには相当難易度が高いけどねぇ」


 思い出す。


 そういえばラルフはその王立魔法学院とやらを『歴代最速』で卒業したとか聞いた覚えがある。


「魔法の勉強さえ出来れば俺も魔法を使えるようになるんだな?」


「ああ、それは間違いないよ。勉強するのが大変なんだけどねぇ」


「それだけ分かれば…なんとかなる」


 魔法さえ使えるようになればラルフを打倒出来る可能性も上がる筈だ。


「な~んか不安だなぁ。やり直してまた直ぐに戻って来られても僕が困るんだけどなぁ」


「…次は上手くやる」


「ん~」


 そいつは腕を組んで考えると――はぁっと溜息を吐き出した。


「仕方ない。君が無茶をしないように『ストッパー』を付ける事にしよう」


「何?」


 そいつがポンッと手を打ち鳴らすと何処からか――いや白い床の中から這い上がるようにして1人の少女が湧き出てくる。


「なっ…!なっ…!なっ…!」


「ん?ああ。裸の女の子は童貞君には刺激が強かったかな?」


「っ!…やかましいっ!」


 そいつの言う通りその女の子は裸だった。


 一糸纏わぬ裸で全てが丸見えで、しかも隠そうともしない。


「この子はたった今生み出した、あの世界で言う魔法生物みたいなものだよ」


「人間じゃ…ないって事か?」


「人間だよ。ただ生まれる行程が他の人とは少し違うだけ」


「……」


「そして当然ながら生まれたばかりのこの子の頭の中は空っぽだ。な~んにも分からない赤ん坊と同じだね。自我すらも不完全で喋る事も動く事も能動的に出来ない」


「その割には随分と育っているな」


「君の好みのタイプを選んで作ったからね」


「え?」


 言われてみれば確かに俺の好みのタイプと言えなくも無いような…。


「いや。冗談だからね?あの世界の女性の平均的なスタイルや顔立ちを再現しただけだから」


「っ!てめぇっ!」


「で。この子を君にあげよう」


「…え?」


 そいつがその子の背中をポンと押すとフラフラと押し出された女の子は俺の腕にスポッと収まる。


「君はその子に何をしても構わない。優しくしても良いし厳しくしても良い。聖女のように育てても良いし性奴隷にしても良い。生かしても良いし殺しても良い」


「……」


「唯さっきも言ったけど、その子の頭は赤ん坊並に未発達だから放っておけば…勝手に死ぬ」


「っ!」


「最低限の事を君が世話をしなければ…まぁ3日も持たずに死ぬだろうね」


「お前…何を言ってっ…!」


「1度くらい夢想した事があるだろう?君が1から育てて理想の女の子を作ってみたくないかい?」


「っ!」


「上手く育てられれば君の事を尊敬して君の事を愛してくれる理想の女性が出来上がるって訳だよ。ああ、ちゃんと子供も生めるからね」


「っっ!!」


「どう?この子…育ててみない?」


「…何が狙いだ?」


「だからさぁ。君に直ぐに死なれると面倒なんだよ。こういう子が傍に居れば君も早々無茶をしないだろ?君が死んだらこの子も死んじゃう訳だし」


「……」


「いらないなら殺して土に返しちゃおうかな」


「待てっ!」


 思わず――思わず待ったを掛けてしまっていた。


「で~?どうするのかなぁ?」


「…分かった。この子は…俺が育てる」


「ほぃほぃ。それじゃよろしくねぇ♪」


 完全に策略に嵌められたという自覚はある。


 こいつの策にのって足枷を付けられたようなものだから。


「ああ。一応言っておくけど…」


「ん?」


「初めての時は優しくしてあげないと嫌われるよ?」


「っ!やかましいぃっ!」


 叫びながら、でも内心では――かなり期待していた。


「それじゃ君の死体一歩手前の身体を修理して、それに戻すね。この子は君の傍に送っておくから」


「あ、ああ」


「大変だと思うけど頑張ってねぇ」


「…え?」


 それを聞き返す間もなく俺は意識は遠ざかっていき…。




 ☆




「がっ…!あぐぁっ…!」


 目を覚ました時、俺は体中に走る激痛と違和感に地面を転げまわって苦しんだ。


「ぐ…あっ!何が…修理だ。全然駄目じゃねぇか!」


 いや。今生きている事自体があいつのお陰なのだろうが、それでも愚痴をこぼさずにいられないほどの痛みが全身に駆け巡っていた。


「ぐぅっ…!ハァハァハァ」


 やっと自分の状態に慣れてきて、そこでやっと周囲を見渡す余裕が戻ってきた。


「…どこだ?ここ」


 俺が居たのは草原で、王都の街から逃げてからの記憶はないが相当遠くに来てしまったようだ。


 そして、傍には例の女の子が突っ立っていたのだが…。


「服くらいサービスしろよっ!」


 相変わらず彼女は裸のままで何も隠す事無く丸見えのまま突っ立っているだけだった。


「ああっ!どうすりゃ良いんだ?これ」


「…う」


「う?」


 俺が頭を抱えると彼女は初めて反応らしい反応を示し…。




「うわぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああん!!」




「ちょっ!」


 行き成り泣き出した。


 何事と思う間もなく彼女の股間から液体が溢れて零れだしていき、どうやらおしっこしたかった事が分かったのだが…。


「ああ~。えぇ~?」


「うあぁあああああああああああああん!!えぇえええええええええええん!!」


 泣き止まない。


 大声で泣き続けて色々漏らし続けている。


「あ」


 それで気付いた。


『大変だと思うけど頑張ってねぇ』


「そういう…事か」


 理想の女の子を育てるなんて口車に乗ってしまったが、頭の中が空っぽで赤ん坊と同じという事は、赤ん坊を育てるのと同じくらい大変だという事。


 いや。体だけ大きくなっている以上、赤ん坊を育てるより遥かに大変な作業になるだろう。


「あの…野朗っ!」


 ああ。分かっている。


 何度も同じ事を繰り返して学習しない俺が悪いのだ。


 騙された訳じゃない。


 俺が理想の女の子という言葉に浮かれて『必要な事を聞かなかった』のが悪いのだ。


 もしも、この女の子を受け取ったのがラルフだったなら絶対に同じ事態にはなっていなかっただろう。


「(いや。そもそも、あいつなら女の子を受け取ったりしなかっただろうな)」


 女が欲しければ口説けば良いし、子供が欲しいなら産ませれば良い。


 奴ならきっとそう答えて、そう行動するだろう。


「ああ。分かっているよ。俺が馬鹿なだけさ」


 でも馬鹿は馬鹿なりに行動するしかない。


 女の子を捨てるのは勿体無いし、貰ってしまった以上頑張って育てなくてはいけない。


 それに理想の女の子に育てるという希望は費えていない。


「ああ、そうだな。この子をソフィアさんやセレーナさん以上の『良い女』に育てて自慢してやるからなっ!」


「うぁああああああああああああああああああああああああああああああん!!」


「…だから頼むから泣き止んでくれ」


 俺は泣き喚く女の子の傍で途方に暮れた。




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