第44話 『魔王。文字通り世界を震撼させる』


 新生大魔王軍――というか弱体化した大魔王の元に残った俺の最初の仕事はエルズラット・タキニヤート連合軍の迎撃だった。


「よくもまぁ…これだけの数を集めたものですねぇ」


「奴らにとっては、ここで大魔王様を倒せなければ終わりだからね」


 弱体化していると言っても大魔王がいつまでも力を失ったままで居る訳がない。


 大魔王が力を取り戻す前に倒せなければエルズラットとタキニヤートに待っているのは破滅だけだ。


 だから出し惜しみなしで来るというのは分かっていたのだが…。


「地上はアンデッドの山、空中では吸血鬼とサキュバス、それに悪魔の軍団ですか」


「数えるのも馬鹿らしくなる数だね」


 本気で、冗談抜きで空も地上も敵で埋め尽くされているのだ。


 少なく見積もっても絶対に100万より少ないという事は無い。


「常識的に考えれば、この数を正面から相手にするのは愚の骨頂。逃げるか、もしくは敵の指揮官をダイレクトに倒すのがセオリーですかね」


「大魔王様は城から動けないから逃げるのは論外。エルズラットとタキニヤートをこの中から探せるならボクが仕留められるけど…探せる?」


「無理でしょう」


 奴らもサミエルは警戒しているので態々目立つところに陣を構えていたりはしない。


 サミエルとタイマンなんて俺だってごめんだ。


「それに2人には自覚はないでしょうが、この戦いは前哨戦に過ぎませんしねぇ」


「…前哨戦?」


「大魔王様から力を奪った奴ら…天使からすればエルズラットとタキニヤートが反旗を翻した事実を世界に公表するのが大事なのです。幾ら叫んでも大魔王様が弱体化したなんて事実は簡単には信じられませんが、魔王2人が実際に反旗を翻して敵対した記録があるのなら、それを『呼び水』として世界が動きますからね」


「……」


「まぁ、そんな事になる前に『呼び水』には文字通り蒸発して貰いますけどね」


 俺が直接100万の軍を叩いても良いのだけれど、折角なので今回は『俺の軍団』に実戦経験を積ませる糧となって貰おう。


「輝夜っ!」


「イエス、マスター!『魔王の娘達マシンナリー・ドールズ』全機召集致します!」


 俺が輝夜を呼ぶと、輝夜は即座に俺の意図を汲んで『それ』を起動させた。


 輝夜の呼び声に応じて177人の『マシンナリー・ドールズ』が次々と虚空から現れて整列していく。


「へぇ~。使い捨ての召喚陣か。闇の精霊を集めて1回だけ使えるようにした簡易な物だけど1回だけ使うだけなら十分だね」


「…大魔王様を御守りしなくて宜しいのですか?」


「大魔王様が退屈だからせめて君の戦いを見て後で報告しろって」


「……」


 弱くなっても余計な事ばっかりしやがってぇ!


 そう。俺が『マシンナリー・ドールズ』達を召喚した方法は精霊王との戦いを参考に『闇の精霊』を集めて作った使い捨て召喚陣。


 これによって1回だけ『マシンナリー・ドールズ』177人を召喚出来る。


 178人じゃないのは統率主体である輝夜が傍に居ないと使えない方法だからだ。


「戦闘準備を」


「イエス、マスター!各機『通常モード』より『戦闘モード』へ移行よせ!」



『 「 「 「 「 「 炉心開放チェンバー・オープン! 」 」 」 」 」 』



 輝夜を含めた178人全員が『核融合炉』を臨界させて戦闘状態へと突入する。


「フライング・ユニットを」


「イエス、マスター!各機『飛行モード』へ移行の為『龍飛翔翼ドラゴニック・ドライブ』を起動せよ!」



『 「 「 「 「 「 『龍飛翔翼ドゴニック・ドライブ』起動! 」 」 」 」 」 』



「……」


「『どらごにっく・どらいぶ』って…何?」


「…シリマセン」


 俺は本当に知らねぇよ!


 サミエルの癖に俺に白い目を向けて来るんじゃねぇよっ!


 一応説明しておくと俺は『ドールズ』達の飛行補助をする機能を持った装備を追加配布してあった。


 それは魔法力で大きな六芒星を描いて、その上に乗って飛行するという『魔法の絨毯』みたいな飛行方法だったので俺は『フライング・ユニット』を命名しておいたのに、それを龍っぽくして『龍飛翔翼ドラゴニック・ドライブ』と勝手に改名されていたのだ。


 俺も今初めて知った驚異の新事実だけどな!


「もう…好きにやっちゃってくれ」


「イエス、マスター!各機、マスターより『ガンガンいこうぜオールウェポンズフリー!』の指令を確認!各機最大戦力を持って敵を殲滅せよ!」



『 「 「 「 「 「 イエス、マスター! 」 」 」 」 」 』



「ちょぉっ…!」


 そんな事誰も言ってねぇ!


 拡大解釈過ぎるぅっ!




「『龍眼ドラゴニック・サイト』…ロックオン」




「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」


「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」


「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」


「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」


「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」


「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」「ロックオン」




「『龍核熱砲ドラゴニック・ブラスター』…『発射ファイア!』」




「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」


「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」


「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」


「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」


「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」


「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」「ファイア!」




 そして俺が制止する前に178条の『プラズマ・ブラスター』が一斉に発射されて――文字通り全てを蹂躙した。


 100万の軍団?


 そんなの一瞬で蒸発ですわ~。


 目の前の光景が一瞬で焼け野原になる瞬間を見るなんてレアな経験だと思うよ~。


 というか、これだと飛んだ意味がねぇ~。


 あはは~。


「…やりすぎじゃない?」


「……」


 サミエルに――サミエルに『それ』を言われる日が来るとは夢にも思っていなかったよ!畜生がっ!




 ★




「くっくくく。これでは世界中で誰も『魔王ラルフ』に喧嘩を売ろうなどと考えなくなるのぉ」


「…不本意です」


 超マジに不本意だよ。


『マシンナリー・ドールズ』が初陣って事で張り切り過ぎてたよぉ。


 そりゃ『呼び水』を蒸発させるとは言ったけどさぁ、幾らなんでも100万の軍団を一瞬で蒸発させるのはやりすぎだろ。


 文字通り世界を震撼させる軍団だわぁ~。


 出番の無かったソフィアとオリヴィアがちょっと寂しそうな顔をしてたし。


「やりすぎとは思いますが最良の戦果であった事は事実です。唯…エルズラットとタキニヤートの生死を確認出来なかった事が少々懸念だと思いますが」


「まぁ…十中八九死んでおるだろうのぉ」


 サミエルの懸念に大魔王は肩を竦めながら答える。


 というか十中八九と言っているが俺は間違いなく死んでいると思う。


 転移手段のないエルズラットとタキニヤートが『あの砲火』の中で生き残っていたら逆に褒めて良いと思う。


「それと…次に戦力を投入された場合の対処なのですが…」


「次が来るとは思えんのぉ」


 正直、同感。


 天使達は『あの光景』をどうにかして世界中で放送していた筈だが『あれ』を見て大魔王に喧嘩を売ろうとする奴が居るなら『馬鹿』以外の何者でもない。


 天使達の画策は脆く崩れ去ったと見て間違いなかった。




 ★




「改めて実感しましたが『ドールズ』って強いのですね」


「はい。ビックリしましたね」


「~♪」


 ソフィアとオリヴィアに褒められて嬉しそうな輝夜。


 ここで改めて『ドールズ』がどのくらい強いのか『おさらい』してみる。


 まず『竜族の魂』というハイスペックな魂を『教会製の人形兵』というハイスペックな肉体に入れて、更に俺の切り札である『核融合炉』というハイスペックな動力源を持っている。


「……」


 この時点で既に反則以外の何者でもない気がする。


 更に特注のメイド服と特注の腕輪を装備している為、非常に攻守に優れている。


 更に更に俺が配布した『フライング・ユニット』――輝夜達が言う『龍飛翔翼ドラゴニック・ドライブ』で限定時間だけとはいえ飛行が可能だ。


 その上、切り札である『プラズマ・ブラスター』は超強力で、しかも命中補正として照準機用の『片眼鏡モノクル』――輝夜達が言う『龍眼ドラゴニック・サイト』で狙いを外す方が難しくなっている。


 そして実は――『闇の精霊』を集める事によって1度限定ではあるけれど『緊急脱出プログラム』が完成してしまったので『核融合炉』を暴走させる『自爆特攻』が可能になっていた。


 自爆――というには酷過ぎる『核爆発』を起こしておいて、その上で『緊急脱出プログラム』によって『竜族の魂』だけを俺の元へと転移させる超反則技だ。


 まぁ、これだけは『ドールズ』達が自意識で発動出来ないようにしてあるのだが、万が一にでも『ドールズ』が瀕死の重傷でも負う事があれば状況によって自動で発動して自爆しつつ魂を保護するという酷いシステムなのである。


「……」


 マジで強過ぎじゃね?


 なんというか初めての『俺の軍団』で178名しか居ないので、ちょっと調子に乗って強くしすぎちゃった感が否めない。


 以前冗談で思った『世界を震撼させる魔王ラルフの軍団』がマジで完成してしまった。


「(ここまで強いのに、なんでサミエル1人に手も足も出ないんだか)」


 サミエルさんマジぱねぇっす。




 ☆




 その日、世界は文字通り震撼した。


 天使達によって世界中に流された『映像』によって100万の軍団が一瞬で蹂躙され蒸発する様を見せ付けられた。


 無論それは天使達にとっても意図しない結果であって直ぐに『映像』は中断されたが、それでも世界中の人々が『恐怖』するのに十分過ぎる効果を発揮した。


 天使達によって『大魔王の弱体化』の情報が広められていたが『それがなんだ?』としか返せないほどに衝撃的な映像を見てしまった彼らは『大魔王に喧嘩を売る』などという思考は考えるまでもなく却下された。


 空を自由に飛び回り、地平線の果てまで届く『プラズマ・ブラスター』が全てを薙ぎ払う映像は人々の心を折るのに十分過ぎた。






「ぐぬぬっ…!」


 一方で精霊王は歯噛みして悔しがっていた。


 世界中の人々の心が折れようが『大魔王の弱体化』は精霊王にとっては千載一遇のチャンスだった。


 けれど大魔王によって負わされた傷が完治していない事。


 更に手駒となる天翼種の小娘――オリヴィアの改造の為に一時的にでも治療を中断して力を消費してしまった事が精霊王に大魔王を討つ機会を失する結果となっていた。


 激しく傷付いた今の精霊王でも『魔王ラルフ』『魔王サミエル』更に『魔王ラルフの軍団』を突破して大魔王を討つ事は不可能ではない筈だ。


 けれど幾度計算してみても勝率は多く見積もって65%から増えなかった。


「(あの小娘に気を取られずに治療に専念しておれば8割は上回った物をっ…!)」


 精霊王は最低でも8割以上の勝率がなければ決して自分からは動かない慎重派だった。


 それは言い換えれば『臆病者』と呼ばれてもなんら言い返せない性格ではあったけれど、それこそが精霊王の最大の強みでもある。


 しかし、今はその『慎重さ』が大魔王を討つ最大の好機をふいにするというジレンマに襲われる結果となり――精霊王は歯噛みして悔しがるしか出来なかった。






 更に一方では『大賢者』と呼ばれる超越者を眺めながら教会の勇者筆頭であるエルジル=エイセリアが精霊王と同じく歯噛みして悔しがっていた。


「この木偶の坊がっ…!」


『大賢者』は大魔王や精霊王とは違って『自由意志を持たない雷の化身』という存在だった。


 過去の勇者によって召喚され、契約によって『教会の勇者』によって制御された存在で、言い換えると勇者の命令無しでは何も出来ない。


 それでも大魔王クラスの力を持つ『大賢者』を使えば『弱体化した大魔王』を討つ事は可能だった筈なのに…。


「肝心な時に役に立たん!」


 エルジルは詳細までは知らなかったが『大賢者』は大魔王との戦いによって激しく消耗していて、とてもではないが大魔王の討伐には使えそうもなかった。


 おまけに『大賢者』の消耗によって教会のライフラインの1つである電力の供給が滞って教会の運営に支障をきたし、しかも勇者が2人行方不明と来た。


 ちなみに『大賢者』は勇者の命令によって動くが、それでも『生命維持』を優先するように契約で縛られている為『勇者を見捨てて逃げる』という選択を取れる。


 大魔王によって大ダメージを受け、勇者である2人を見捨てて逃げたのはそういう事情があったからだ。


 色々と踏んだり蹴ったりの上に千載一遇のチャンスが転がりこんで来て何も出来ないという事になれば勇者筆頭とはいえ歯噛みの1つもしたくなるというものだ。






 結局のところ『精霊王』も『大賢者』もラルフに余計なちょっかいを掛けた為に『大魔王』に直接ぶったたかれてチャンスを逃したという事だ。


 唯の偶然かもしれないが『大魔王』はラルフのお陰で事前に『精霊王』と『大賢者』を叩く事が出来たので窮地を脱する事が出来たと言えなくも無かった。




 ★




『初志貫徹』というのは良い言葉だと思う。


 周囲の環境によって当初の目的を忘れてしまうなんて良くある事で、そういう状況に流されず強い意志を持って目的を完遂するという事は素晴らしい事だと思う。


 つまり何が言いたいのかというと――俺は可愛い女の子とイチャイチャしたいだけなのだ。


『大魔王の弱体化』なんて知った事じゃないし、魔王の仕事なんて可愛い女の子とイチャイチャする『ついで』にやれば良いと思っている。


 ぶっちゃけ力の戻った大魔王やサミエルを敵に回したくないというだけで俺は別に大魔王が死んでも困らない。


 だから戦争(?)が終わった後、俺は早々に人間種の自宅に戻って可愛いソフィアや可愛いオリヴィアとイチャイチャしたいのであって…。


「…うふふ」


「…まぁまぁ」


「……」


 こんな修羅場に巻き込まれたい訳じゃないのだ。


 男1人に対して女が2人居れば当然の成り行きではあったけれど、ソフィアとオリヴィアは笑顔で――でも凍えるような冷たい視線で睨みあっていて超怖いです。


「オリヴィアさん。何度も言いますが私が『正妻』なのですから、ここは私に譲っていただくのが筋というものではありませんか?」


「いえいえ。ソフィア様が正妻だからこそトリとして後にとっておいていただくのが筋というものではありませんか」


「…うふふ」


「…まぁまぁ」


 何の話なのかというと『久しぶりにデートしたい』と言ったら『当然俺と2人きり』という流れになって『それならどちらが先にデートするか?』で揉めている訳だ。


「私もマスターとデートしたいで…」




「 「 (ギロリ!) 」 」




「ひぃっ…!」


 途中で口を挟もうとした輝夜がひと睨みで怯えて俺の背中に隠れる。


 うん。怖いよね。


「仕方ありません。ここは公平に『じゃんけん』で決める事に致しましょう」


「はい。望むところです」


 そしてデートの順番は『じゃんけん』で決められる事になった。



「 「 最初は…グー! 」 」



 たかが『じゃんけん』でここまで真剣になれるものなのかという程の気迫を持って互いにグーを出し合って…。


「じゃん…!」


「けん…!」



「 「 ぽん! 」 」



「(気迫の割に掛け声が間抜けだよなぁ~。じゃんけんって)」


 なんて事を考えながら結果を見ると――お互いに『チョキ』を出し合っていた。


「あい…!」


「こで…!」



「 「 しょっ! 」 」



 間髪入れずに次ぎは『パー』を出し合う。


 なんだかんだ言っても2人って気が合うよね。


 それから実に12回もの『あいこ』を繰り返して、ついに決着が付き…。


「あ…あぁ~…」


「これが…『正妻』の力です♪」


 崩れ落ちるオリヴィアを制してソフィアが勝った。


 まぁ正妻云々ではなく単純に運の問題だと思うけど。


「うぅ…あなた様ぁ~…」


「よしよし」


 落ち込んですがり付いてくるオリヴィアの頭を撫でて慰めつつ、俺は明日のソフィアとのデートプランを考えていた。






 デートと言っても特に外で待ち合わせて合流するなどと言う手順は踏まずに普通に自宅で着飾って一緒に外出する事になる。


 そもそもの話『外で待ち合わせ』というのは別々の場所に住んでいるから発生するイベントであって、既に一緒に住んでいる俺とソフィアには関係のない話だ。


 まぁ多少の雰囲気作りの役には立つかもしれないが、それで時間を無駄にするのも癪なので俺はやらない。


「くす。それは『待った?』『今来たところ』のやりとりに憧れを持つ人がやりたがる『願望』のようなものですね」


「だな。やりたくない訳じゃないけど、どっちかと言うと…」


「あっ♡」


 俺はソフィアの細い指に自分の指を絡めて手を繋ぐ。


「こうやって手を繋いでいる時間は長い方が良いよ」


「はい♡」


 嬉しそうにキュッと手を握り返すソフィアが可愛い。


「それじゃ、何処に行こうかなぁ~」


「旦那様と一緒なら何処でも良いです♪」


「デートだからな♪」


 デートなんてものは『何処に行くか』ではなく『誰と行くか』が重要なのであって『好きな人と一緒に』行けば何処に行っても、それはデートなのだ。


 ソフィアと手を繋いだまま街の中を適当に歩き回り、時には転移石を使って雰囲気の良い場所でソフィアお手製のお弁当を食べたり、食後の食休みにソフィアに膝枕をしてもらったりして過ごした。


「凄く…幸せな時間ですね」


「ああ」


 別にオリヴィアが邪魔と思っている訳ではないが、それでもこうやって2人でゆっくり過ごす時間が前よりも貴重だと思えるようになったのは事実だった。


 2人きりの時間が『有限』だからこそ終わりが来るのを恐れ、そして使える時間を大切に使おうと思える。


「変な話かもしれませんが、私は前よりもこうやって2人きりで過ごす時間がずっと楽しく感じています。オリヴィアさんのお陰…とは思いたくはありませんが」


 オリヴィアが来る前より今の方が幸せ――とはソフィア的に思いたくないのだろう。


 そしてソフィアは絶対に言葉にはしないだろうけれど、きっと今からオリヴィアが居なくなったら凄く寂しいと思うに違いない。


「さてと…」


 大分日も落ちて、そろそろ夕暮れ時という時間までのんびり過ごしてから俺はソフィアの膝枕から起き上がる。


「デートの時間は終わり…ですか?」


「まさか」


「あっ♡」


 俺はソフィアの腰に手を回して抱き寄せる。


「夫婦のデートに『お泊り』が入っていないなんて、ありえないだろ?」


「は、はい♡」


 オリヴィアには悪いが今日は宿に一泊してソフィアとのお楽しみをして過ごす事にした。




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