第59話 目一杯の祝福を君に


最終話

 目一杯の祝福を君に



 思えば、嵐のような一週間だったわ


 封印されていた筈の、調和の月の精霊龍ハモニアルが創り出した、魔剣に操られた糞勇者と、復活した魔王を死闘の末に倒したと思ったら、今度は一度に六人もの花嫁候補からプロポーズされてしまった


「貴女も大概、男前過ぎるわよね」


「それ、女性に対する言葉として、間違って無い?」


 手にしたグラスのワインを、味わいながら飲む

 うん、やっぱり美味しいわね、このワイン


「言ったでしょ?自慢のワインだって

 そうだわ、結婚のお祝いに、葡萄畑をプレゼントしてあげるわ」


「やめてよ、私、管理なんて出来ないわよ?」


「アガリアに任せておけば、宜しくやってくれるわよ、ね?」

「仰せのままに、お任せ下さいませ」


「そもそも、「明けの明星」たる私の祝福を授けるんだから、上手く行かない訳無いじゃない」


 女神様のお膝元である聖都のド真ん中で、悪魔の葡萄畑とかどうなんだろう?

 天罰が下だったりしないわよね?


 そうなのだ、今、私は何故かルシフェラと一緒にモーニングワインを楽しんで居た

 

 朝っぱらからワインなんて、聖職者として、どうなんだって?

 煩いわね、ワインなんて水と一緒よ、水!


「そう言うトコロですよ、ミカエラ様」

 デュオが朝食のガレットとサラダを取り分けながら愚痴る


 十人前もの朝食は、デュオとアガリアの二人がかりで用意してくれた


 ここには、私、ミカ、クレセント、アガリア、セレロン、サリー、デュオに、ルシフェラと何故かアシュタローテまでが居る

 とどめが、寝不足で目に隈の出来た不機嫌そうな師匠だ


「ひとの事を、ラスボスみたいに言わないで頂戴?」

 食事中だと言うのに、煙草をスパスパとふかす師匠は、明らかに苛立っている


 「全く……勝手に教会施設を改築しおって、しかも何だコレは?魔法ですら無いではないか!」

「あら、うちの子がお世話になるんだもの、このくらい当然よ」


 ルシフェラは、現れると同時に「ちょっと狭いわね」と、私の部屋を宮廷の応接室並みに広く、花園付きオープンテラスに改造してしまった


 魔法では無い

 指をパチン!と鳴らしたら、こうなった

「奥様は魔女」と言われても否定出来ないけど、あくまでも悪魔の権能らしい


 瞬きだけで発現されても、困るのだけど

 それは兎も角、部屋の拡張に伴って、私のシングルベッドはダブルキングサイズに変身している


「これなら、十人一度に寝られるわよ?」


 やめて

 身体が保たないわよ


 最初は、一人ずつ六人、日替わりで、私の添い寝係を提案したのだけど、六人で協議の結果、三人ずつが交代で毎日添い寝する事に決定したらしい

 因みに、「正妻」のミカは毎日参戦らしいから、実質二人組で交代となるのかな?


「う~ん……ん?そうだわ!」

 なに?ミカ、どうしたの?


「私がミカエラ様と憑依合体すれば、もう一人入れますね!」


「あっ、ならオレも憑依合体したい!

 アレ、滅茶苦茶気持ちいいんだよな!」


「な~んだ、じゃあ三人が四人に増えても大して変わらないじゃん」


「それなら毎日、全員参加出来ますね!」


「ブーーーー!」

 思わずワインを吹き出しちゃったわよ!


 ミカとアシュタローテは魔力だけの存在だから、確かにそうかも知れないけど、私の身体が保たないっての!

 アガリアとデュオが、どちらが私の汚れた服を綺麗にするかで争いだした


 そんなお馬鹿なやり取りをしてる最中、ルシフェラが師匠にこっそりと囁く

(良い加減、愛弟子に正体明かしたら?)

(余計なお世話よ、貴女こそ、魔界を留守にしてて大丈夫なの?)

 (ふふ~ん♪優秀な参謀が揃ってるから、心配無いわ)

 (ぐぬぬ……)


 ルシフェラが、立ち上がると明るく言う


「さあ、花嫁には、花嫁らしい服装がお似合いよ?」

 指をパチンと鳴らすと、私、ミカ、クレセント、アガリア、サリー、デュオ、アシュタローテの七人がウエディングドレス姿に変わった


 え?て言うか私も花嫁なの?


「何よ、花婿の方が良いなら、男に変えてあげるわよ?」

「「「「「ダメーーーーーーーッッ!」」」」」

「それはそれで良いかも……」

 誰よ、変な事言ったの?


 皆が私に寄り添う中、ルシフェラがイタズラっぽい笑顔で言う


「何なら、アレだけ付けてあげるわよ?何本欲しい?」


 やめて!絶対に嫌!


「さあ!目一杯の祝福を君に!!」



 END

And if continues......







 


 

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酔いどれ聖女の布教活動日誌 @ginnoji

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