第15話 天使の雫
「聖光の大賢者・隻眼の魔女」ペンティアムは、聖教会本部、大聖堂地下に存在する秘密の研究施設に籠っていた
東街区の治安回復は部下に丸投げして、聖騎士団や自警団の後始末、更には教会内部の派閥争いや、貴族達の権力者闘争も全て他人に押し付けて、自身は誰も知らない秘密基地に引き籠ってしまった
なにしろ、
この部屋には「出入口」が存在しない
暗黒魔法の「転移」が使えるペンティアム以外、何人も立ち入る事すら不可能だった
その部屋の中央には、ミスリル製の大きなテーブルが据えられ、燭台の灯りに照らされ、仄かに蒼銀色に光っていた
テーブルの周りの床面にはびっしりと魔方陣が描かれ、魔法の発動を今か今かと待ち構えている様である
「さて……」
今のペンティアムは眼帯を外している
これから彼女が為そうとしている事は、それだけ集中を要し、僅かな変化も見逃す訳にはいかないからだ
「先ずは、天使召還からね」
両手をかざし、魔力を練るとミスリルのテーブルの上に、煌びやかな魔方陣が煌めき、温かな光は人の形を形作り、やがて子供の天使の姿となり顕現した
ミカエラが普段、気軽にポンポンと守護天使を呼んでいる姿からは考えられない程に慎重だった
と言うか、ミカエラが異常なのであるが
「ご用でしょうか、我が主様?」
「久し振りね、サリエル」
ペンティアムは召還儀式の手順さえ踏めば、多数の天使を召還出来る上に、より上位の存在である大天使すら召還可能だ
実際に、魔王にメテオストライクをブチかまし、南大陸を沈めた時には、次いで発生した「核の冬」と「ノアの洪水」を、大天使四柱の権能を発揮させる事で人類の滅亡を防いだのだ
時の聖王国国王・聖教会教皇であったウルティマ・マトロックスは、天空を覆い尽くす大天使達の威容に感激し、ペンティアムに大司教の地位を授けたのだが、まさか人類の命運を賭けた壮大なマッチポンプだったとは、誰も気付かなかった
「……貴女に、協力して欲しい事が有るのだけれど……」
「なんなりと」
花が咲く様な笑顔でサリエルが即答する
「私が在るのは、主様の御為でございます
遠慮なさらずなんなりと申し付けください」
まるでペンティアムの思惑なぞ、全て見透かしているかの様な返答だ
ペンティアムはサリエルに近付き、そっと両腕を回し、優しく抱き締める
「ごめんなさい」
ペンティアムはこれから、「錬金術」の秘法を試みようとしていた
神に弓引く、背徳の禁呪である「生命創造」の秘法 ―クリエイト・ホムンクルス―
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