第16話 戦乙女は空気を読まない
「冗談じゃ無いわよ!
まったくもうっ、次から次へと!?」
ペンティアムの言い付けで、東街区の治安維持活動を請け負う羽目に成ったミカエラは、足を踏み入れてから10分も経たず辟易していた
路地の影から、開けた扉の中から、突っ込んで来た荷馬車の中から、すれ違う人々の中からと、途切れる事無く、ミカエラに対する殺意が襲い続けてくる
これ迄に切り捨てた賊の数は、既に両手足の指では数え切れなく為っている
「うう……」
おっと、まだ息の有るのが残ってたわね
ゲシッ!
両腕を切断され、この場から逃れようと這いずっていた男の頭を踏みつける
「ちょっと、聞きたい事が有るんだけどさぁ?」
「ヒッ、ヒイイ」
「アンタ等、どーして私を狙ってんの?」
「ヒイイイイーーーーツ!」
「私を聖女ミカエラだと知ってて……」「パキャッ!」「……あ、ごめん」
身体強化してるのに、思わず足に体重かけちゃった
「チッ!」
これは、アレかな?
賞金でも賭けられてるかな?
だとしたら、元締めが居るって事よねぇ
「ミカ!」
「どうしました?ミカエラ様」
間を置かず守護天使のミカが顕現する
「悪いけど、こいつ等、誰の指示で動いてたか調べてくれない?」
「……それを調べるのが、ミカエラ様のお仕事では?」
「だってほら、私はさぁ」
血塗れの通りからゾロゾロと、新手がお出ましだ、恐らくは瘴気に精神を蝕まれて、既に半分人間を辞めてしまっているのだろう
聖都に、これだけのゴロツキが居るのも、異常な話しだ
魔王の封印が正常に機能していれば、外部から瘴気が入り込む事も無く、不逞の輩も犯罪すらも抑えられる
「ヒュウ~♪
熱いおもてなしだわね
思わず濡れちゃうわ♡」
「面倒なら、私の魔力で一掃できますが?」
「嫌ねぇ、聖都を更地に変える積もり?」
「……魔物なら、存在だけを否定出来るのですけど、人間相手だと物理的干渉が不可欠です」
天使は魔物同様、実体の無い魔力の塊だ
しかも、内包する魔力量は聖女の私を遥かに凌ぎ、聖女には使えないレベルの聖魔法を行使して聖女の活動を補助出来る
精神や魂に干渉するのが得意分野だが、その反面、物質としての実体では無い為に、物理的干渉は苦手な分野となる
なので、今回の暴徒の様に、薬物中毒で魂や精神を汚された相手を一人ずつ相手するのは不得手である
「魔力を凝縮して、一気に開放すれば暴漢の千や二千くらい……」「だあーかーらぁ、止めろってば!」
ミカの性格が雑なのは、召還主であるミカエラに似ているのは間違いない
そうこうしてる内にも、暴徒がミカエラの射程内に入り込む
「ん~、一旦眠らせるかなぁ……」
顎に手を当て、相手をろくに見もせず切り捨てる、サクッ、先頭に居た三人の身体が横一閃に真っ二つにされる
「これだけの人数相手に、精神操作ですか?
私の歌声に乗せれば何とかなるでしょうが、その後始末は?」
「う~ん、そうだよねぇ」
口は止めずに手も止めない
かかる端から首をはね、身体を両断し、手足を落とす、スパスパスパパパパッ!広場の真ん中で踊るように卍丸を振り回す
駄目だ、気持ちは「面倒臭い」と思うが、
脳内でアドレナリンとエンドルフィンが「もっともっと」と騒ぎ出す
既に辺り一面血の海だ
倒された死体を跨いで襲いかかるものだから、敵さんの動きがいまいち物足りなく感じてきた
それでも瘴気の影響でマトモな判断が出来なくなっているのか、襲い掛かる暴徒に衰えは無い
ヨシ!考えるの一反止め!
取り敢えず鏖殺しよっと
難しい事は師匠に任せて、皆殺しにしてから反省しよう、そうしよう♡
卍丸に魔力を流し、長剣から長柄刀に形状変化させ、当たるを幸いと振り回す
嗚呼、駄目だ
悪党を皆殺しにするのって、何故こんなにも気持ち良いのだろう?
あれ?私ってばサイコキラーじゃ無いわよね?
……うん、罪無き人を殺したいとは微塵も想わないから大丈夫
待ちきれなくなって、自分から暴徒の集団の中に踊り出す
卍丸を自在に形状変化させ、長柄刀、長剣、双剣、三節棍と流れる様に群衆をすり潰しながら進む
傍目には、まさしく踊っている様に見えるだろう、ある時は切り捨て、或いは蹴り潰し、打ち据え、腸を抉り、殴り殺し、踊り始めてからそろそろ3分が経とうかと言う時にソレは起きた
『聖域展開、神雷(トールハンマー)』
刹那、聖都を覆い尽くすかの様な閃光が輝き、視界が真っ白に成った
「!?」
視界が戻ると、押し寄せていた数百に及ぶ暴徒共は一人残らず消し炭に成り果てていた
「……えーと、なに?」
「戦乙女(ヴァルキュリア)の雷撃の聖魔法です、ミカエラ様」
解説ありがとう
どうやら、咄嗟にミカが私の周りに魔法障壁を展開して、無事に済んだらしい
ってか、戦乙女ってなに?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます