第19話 変な奴が居るんだけど
「ところで、さっきから気になっているのですが……変な奴が見てますね?」
唐突にサリエラが言い放ち、数キロ先の大聖堂の天辺を指差した
まぁ、気配と言うか視線は感じてたけど、流石に距離が有るから無視してた
「改めて言われると気になるわね、
何だろうミカ?」
「……邪悪な存在では無い様ですが、不思議な感じがします」
ほほう、守護天使にそこまで言わせるって気になるじゃない?
「まるで、此の世の者では無いと言うか……」
「そうですね、私達と似てる感じがします」
ミカの意見にサリエラが同意を示す
気にはなるけど、取り敢えず実害が無さそうなら、後回しでも良いっか
それより気になるのは、サリエラの実力と、ここへ来た理由だ
「さっきの雷だけど、どのくらいの事が出来るの?」
「やろうと思えば、聖都全域をカバー出来ます
対象も、無関係の一般人は無効に出来ますが、魔力を大量消費するので、連発は無理ですね」
いや、凄えな地味に
「それに私は、実体が有りますので、聖都から外へ出る事は出来ません」
と言う事は、聖都の治安維持と浄化の仕事に最適なのでは?
「現在、東方支部教会の巡業聖女様が欠員されてますので、その穴埋めに私が創られたのではないかと」
おおう、早速ブラックな環境からオサラバ出来るの?ラッキー♡……って待てよ?
あの師匠がそんなに甘いだろうか?
「ペンティアム様よりミカエラ様宛に、言伝てを賜っております
私と合流して、引き続き奸賊の殲滅に励むようにと」
はあああーーー
やっぱりね、そんな事だろうとは思ったさ
んじゃまぁ、とっとと終わらせますか
取り敢えず、自警団も機能して居ない様だから、パワーマック伯爵でもとっ捕まえましょ
私に賞金掛けたのは、どー考えてもあのバカ娘の親父しか居ないと思うし
「懸命なご判断です、成長なさいましたね」
ミカがさめざめと泣く振りをしてる
どこで、そんな三文芸を覚えてくるのよ、全く
道すがら、襲い掛かる暴徒共を悉く血祭りにあげつつ、暫くして目的の館へ到着する
東方辺境伯カンジトーク・パワーマックの邸宅は、周辺の貴族の館より随分と豪奢で、伯爵ごときの身分には不相応に大きかった
元々は、他の貴族の持ち物だったのを買い取ったらしいが、弱みを作らせて強請取ったか、財政的に追い詰めて売却させたか、まぁどうせマトモな取り引きでも無いだろう
貴族ってのは、言ってみれば権力を持つマフィアのボスと同じで、領地経営なんて所詮は平民からの搾取に依ってしか成り立たない
言う事聞かない、気に入らない奴が居れば、直接手を汚さなくとも、配下を使って始末出来るのを当然の権利だと勘違いしてる糞溜まりだ
それを、実力や人格では無く、世襲で引き継いでいるから腐敗が止まる訳が無いのだ
「権力者を民衆が選べる様になれば良いのにね」
「ミカエラ様、その為には、民衆が正しく選択を出来る教養と環境を整える前提が必要です
多くの平民は、その日食べるのに精一杯で、明日を考える余裕などありませんから」
あくまでも支配者に都合良く社会が出来てるってのは、聖教会の教義とは相容れないから、そりゃ連中は聖教会に敵対心を持つのも当然だわね
立派な扉の前で考え事してると、中から大勢の人間が殺到して来る気配がした
「ま、私が考える事でも無いわよね」
内部からの手が扉にかかろうかと言うタイミングで、大扉を思い切り蹴り飛ばした
ドカーーーン!
身体強化した蹴りを受けて、大扉は丁番を引きちぎり、詰めかけた人間を捲き込みながら盛大に邸内へ吹っ飛んだ
「おらあッッ!
世の為、人の為、私の為に正義を執行する!!覚悟しやがれ、悪党共!」
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