第8話 剣聖vs聖女


聖騎士団副長のヴィーが、アップルの頭を踏みつける私にガンを飛ばしてきた

 美人の怒った顔って迫力有るなぁ

 年増だけど


「何か失礼な事、考えてませんか?」


 おっ、デュオちゃん鋭い!

足元でぶっ潰れてるアップルの顔面から血溜まりが拡がり、地面を赤く染める

 なんか潰れた玉子の白身みたいなのは目玉かな?

 ウリエラが慌てて走り寄り、治療の聖魔法を展開する


「やり過ぎです、お姉様」


 少し悲しそうに眉を寄せ、私を見上げ非難してきた


「ええ~、だってぇ

 先に突っ掛かってきたのも、先に手ぇ出してきたのもコイツじゃん?弱い奴が悪いのよ」


「まあ、自業自得だわよねぇ」


 ガブルンも腕組みしながらうんうんと頷き、アップルの弱さに呆れていた

 こんなので、騎士団が務まるのだろうか?


 ラファ姉が抜けた東部地方の護りは、聖騎士団の連中が一時的に代行している筈なんだけど?

 そもそもコイツ等、対人戦が専門じゃ無かったっけ?


 傷を治療されたアップルは、仲間に支えられて何とか立ち上がったが、出血多量で顔色が悪い

 顔の周りの血の跡は消えてるが、胴鎧は凹んだままだ

 聖魔法も、怪我は治せても、鎧の修復までは出来ない

 もしかしたら内臓もイッてたかもな


「お姉様」


 治療を終えたウリエラがトコトコと私に近付くと、背伸びをする様に耳元で囁く


「あの方、先程死んでましたよ?」


 マジ?やり過ぎた?私?私のせい?

て言うか「死者蘇生」出来たの?ウリエラちゃん

 スゲー

いつの間にか成長してるのね、お姉さん嬉しい


 などと現実逃避をかましていると、年増美人が青筋立ててやって来た


「うちの新人が、みっともない立ち合いを見せてしまったわね

 次は私がお相手しましょう」


 あれ?

もしかしてこの人、アップルが一度死んだのに気付いて無い?ラッキー


「もう勝負は着いたろ?面倒臭えからパス」


「あら、逃げるの?」


「はあ?」


 煽ってくるなぁ、悪く無ぇ

 思わず犬歯を剥き出しにして、悪い笑みを浮かべてしまう


「上~等だお局様、ちっとは楽しませてくれるんだろーな?」


「剣聖の名は伊達じゃ無い事をお見せしますわ」


  今夜は旨い酒が飲めそうだ

 思わす舌舐りをしていると、ガブルンもゆっさゆっさと近付き囁いてきた


「あのヴィーっての、確か教皇聖下のお友達よ?流石にマズイんじゃ無い?」

「えっ!マジ?……駄目じゃん、先に言ってよ」


 パンパンと手を叩く音が響く


「はいはい、其処までー!」


 勇者インテが間に入って来た


「団長、止めないで下さい!?これは騎士団の名誉の問題です」


「いやぁ、これ以上続けたら、どっちが勝っても負けても遺恨が残るでしょ?

 ここらが引き時だよ」


 おっ、流石大人の余裕

 上手いこと誤魔化してくれそう


「ほら、お互いに立場ってのも在るしさぁ、

 ここは一つ、僕の顔を立ててくれないかなぁ」

優男がスッと彼女に近付くと耳元で囁く

「君と彼女がやり合ったりしたら、教皇聖下が悲しむでしょ?」


「はぁ……

 仕方ありません、残念ですけど」

「それに、万が一でも、君の顔に傷でも付いたりしたら、僕はショックのあまり死んでしまうよ」

「まあ……団長ったら」


 前言撤回

 糞はやっぱり糞だった

 勝手に死んでろ糞勇者 

 

    

 

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