執事長は火星から戻った冥冥が、レースを引退し、学園も中退してグループの後継者としての覚悟を決めた事を歓迎していた
だが、火星で手に入れた安っぽい指輪をずっと外さない事も知っていた
公に口ではああ言っても、紅蓮と言う火星から来たレーサー崩れの事が忘れられないのは明らかだ
だからこそ冥冥の両親は経略結婚の話しを進めた
本物の結婚指輪をする為には、偽物は外さざるを得ない
力ずくで無理矢理取り上げるより、自分から過去に決別させるのだ
結婚式はグランプリレースの期間中に行われる
借金返済の為にレースで優勝しなければ為らない紅蓮に邪魔をされる心配は無い
計画は完璧だ
執事長は物思いにふける主人の邪魔をしない様に、静かに扉を閉めようとする
その時、夜空一杯に虹色のオーロラが拡がった
木星の極も同じくオーロラが煌めいている
ガニメデは太陽系で唯一、地磁気を持つ衛星だから、電磁波の影響でオーロラが発生する事が在る
冥冥はオーロラの向こうの夜空に一際輝く一条の閃光を見付けた
それは驚くほど速い紅蓮の描く光の航跡
あり得なかった
まだスタートして1時間も経って居ない
追い上げ型の冥冥が木星軌道に到達するのは、いつも2日目以降だ
https://kakuyomu.jp/works/2912051601251265252/episodes/2912051602205469502