第10話 聖都の夕暮れは鉄錆の色


「神様に喧嘩吹っ掛けた事を死ぬ程後悔させてやろうじゃない」


 って言うか、一回死んでるんだけど自覚は無いかもしれないわね


 わざとらしく開けられたままの勝手口から、ガブルンと一緒に倉庫内へ侵入する

 (あきらかに罠よね……)

聖衣の懐からスパイク突きガントレットを出して装着する

ガブルンは腰のベルトから愛用のメイスを取り出して臨戦態勢だ


 聖魔法で気配を探ると、只の倉庫番にしては大勢揃ってるみたいね

 聖騎士団総出でお出迎えかな?

 ヤる気があって大変結構


 私とガブルンは積んであった木箱の上によじ登り、静かに進む


 上からこっそり様子を伺うと、縄で縛られた男性が横たわり、周りを数名の女騎士とゴロツキっぽいのが取り囲んで何か話してるが、内容までは良く聞こえない


 やがてゴロツキのひとりが長剣を抜き、縛られた男を刺そうと構えた

 堪らず立ち上がり声をあげる

「そこまでよ!!」


「誰だっ!?」

 いやいや、この場面でそれを言うか?

「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ、悪を倒せと泣き叫ぶ!」

 ガブルン、ノリノリ

「世の為、人の為、私の為に正義を執行する!」

 ヨシ決まった!テンションアゲアゲ♡

「「トウッ!!」」

 ばっちりハモってふたりで飛び降りると、勢いのままゴロツキ共に蹴りを喰らわし、触れる端から殴り倒してゆく

「卍丸っ、来い!」

 異次元空間から聖剣が顕現する

魔力を流し、長さ5m程の「三節棍」に変化させると縦横無尽に振り回す

 牽制と攻撃を同時に繰り出せる便利な武器だ

 ドカドカドカッッ!バキベキッ!ドササッッ

 悲鳴をあげる暇すら与えず、一撃で血祭りにしてゆく

 あり得ない方向にへし折られた手足のまま、脳漿や臓物まで撒き散らして、10名あまりのゴロツキ共が血の海に沈むのに1分もかからなかった


 ガブルンのメイスも非殺武器とは言いながら、凶悪な形状なので、相手の武器ごと頭蓋骨をへし折りまくりだ

 顔が真後ろ向いてたり、頭が半分無くなってる奴もいる

 器用に後頭部と踵がキスしてる死体もある

 脊髄ごと脇腹まで抉られて内臓をブチ撒けている

「たまんねぇなあ、この血と臓物の匂い」

 犬歯を剥き出しに口角を上げ、動けずにいた女騎士達を睨み付けると「ヒッ」と情けない悲鳴が、あがる


 辺り一面、文字通りの血の海だ

 私達ふたりも、返り血で真っ赤に染まっている

実戦で人間を殺した経験すら無い、貴族のお嬢様方には、さぞかし刺激的だろう


 あーあ、お漏らしして座り込んだ奴までいるや

情け無え


 で、首謀者はってえと

 何とか立ったままだが、足下がビショビショに水溜まりだ


「よ~お、アップルお嬢様、ご機嫌如何だい?」


 返事が無い

 と言うか、口元があわあわと動くばかりで喋れないのだろう


「楽しいパーティー開くんなら、先に一声かけてくれりゃあ良かったのによ?随分と水臭ぇじゃ無えか、あ?」

「こ、来ない……で」

「ああ?聞こえねーなぁ?」ボスッ!

「グフッ!」

 軽く腹パンすると、這いつくばって一気に吐き出した

「ゲロゲローー」「わっ汚なっ」


「ミカエラ、抑えて……」「分かってるよ」

 ゴロツキ共は皆殺しにしたが、貴族殺しは理由を問わず死罪と決まってる

 まあ、昼間に一度殺しちまったが、あれは正当防衛の事故よね

 しかも生き返ってるからノーカンだノーカン

 (そう言うところですよ)

 何故かデュオのボヤキが聞こえた様な気がした


 それより……隠れた主役が未だ登場して無いんだよねぇ

   

 



 

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