第27話 月に代わってお仕○きよ!
(はあ、面倒臭い……)
クレセントは、聖都の街を屋根から屋根へと跳びながら、ちょっぴり後悔していた
本当は、馬車の逃亡を防ぐ為に、馬を射る積もりだったのが、下り坂で思いの外スピードが速くて、狙いがズレてしまい、馬車の中身ごと全てを吹き飛ばしてしまった
結果的に、聖都を混乱させている原因究明に手助けする筈が、証拠隠滅となってしまっている
(大体、この街の魔力の流れがオカシイのよ
何よ、あの高い建物に集中した異常な魔力?)
大聖堂には、世界中の信徒からの信仰心がエネルギーとして集中する様に、聖都が設計されている事を彼女は知らない
お陰で、馬の脚を停めるだけの積もりが、大爆発を引き起こしてしまった
チラと後ろを気にする
十数キロ離れて、厄介な天使が、ずっと後を付けて飛んで来るのが視える
どうやら、自分の魔力を辿っている様だ
だとしたら、到底撒くのは不可能だろう
しかも、追っ手は恐らくあの、脳筋聖女の方だ
「厄介ね、犬コロ天使……」
「ハッ、ハックション!?」
「何よミカ?
あんた風邪なんてひかないでしょ?」
「誰かに悪口言われた気がしまふぅ、グスッ」
魔力の塊な存在の天使が鼻を垂らす、と言う貴重な光景に思わず笑みを浮かべるミカエラ
「それより、方向は合ってるの?
ミカだけが頼りなんだから見失わないでよ!」
「私だけが頼り……私だけが……うわあ」
ミカが降りてきて抱き付いてきた
「ちょっ、なっ、何よイキナリ?」
「頼りにされて嬉しいんですっ♪
頑張りますからね、もっと褒めて下さい!」
(まったく……本当に犬みたいね)
「何か失礼な事考えませんでしたか?」
「そ、そんな事無いわよぉ?
それより、アイツ何処行った?」
「変な奴」は目眩ましの積もりか、ずっと夕陽に向かって移動していた
屋根伝いに跳んで逃げていた姿がみえなくなっている
「あれ?下に降りたんでしょうかね?
でも、魔力はずっと捉えてますから、大体の居場所は判りますよ!」
夕暮れ時の雑踏に紛れ混まれては、眼で見付けるのは困難に成る
ましてや、もうじき日も暮れる
私の担当街区である、西方支部教会のテリトリーで、犯人を見失ったなんて事になったら師匠に何を言われるか分かったものでは無い
「間違いなく「無能」と呼ばれますね」
「言っておくけど、ミカもセットだからね?」
「ええーーーっ?」
中央本部教会の大聖堂では、ウリエラが頑張って超広範囲魔法障壁を展開して、瘴気や暴徒が東部街区より西へ拡大しない様にしてくれているお陰で、暴動そのものを知らずに日常を送っている人々も大勢居る
聖都の東側で、何やら火事でも起きているのだろうか?ぐらいの感覚だろう
夕暮れに家路を急ぐ大勢の人々の流れを掻き分けて、ミカエラは先を急いだ
(逢魔が時って、冗談じゃ無いわよ?)
何者か分からないが、聖都どころか、この星を丸ごと破壊出来るかもしれない犯罪者が、野放しになっている
ミカの指示に従いながら、駆け付けた先は……
「ちょっと、……嘘でしょ?」
ラファエラの居酒屋の前だった
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