第13話 腐った林檎の樹


結局、難しい事は師匠に丸投げして、皆と合流した後は、ラファ姉の旦那さんの開放と事件の解決を祝って打上げと称して飲みまくってから、西方支部教会に在る、私の部屋に三人でやって来た


 ラファ姉には聞かれたく無い話しもあるし、お二人の邪魔をするのも忍びない


「で、まあ師匠のお陰で、あの糞勇者の陰謀は挫けたと思うんだけどさぁ……

 なぁ~んか、スッキリしないんだよねぇ」


「パワーマックのお嬢様も消えちゃったんでしょ?聖都中が大騒ぎに成るわよね?」


「結局、その「魔剣」って何なのでしょうね?お姉様」


「分かんないけど、インテの糞野郎は未だ死んで無いのは確かよ」


 ラファ姉が引退した陰で、聖都を瘴気で浸蝕し、魔王の封印を弱体化させてた陰謀があったなんて、ラファ姉にも、人質にされた旦那さんにも聞かせられない


 あくまでも、聖騎士団の私個人への怨恨が犯行動機だと誤魔化しておいた


 伯爵令嬢が行方不明になろうが、聖騎士団が消滅しようが、それは全部糞勇者の責任だ

 貴族や聖教会内部の難しい政治の話しは、私達現場の聖女には無関係だろうと、高を括っていた


 

「そう言う訳で、申し訳ないけど、当面は二人で交代しながら東部街区の治安維持をお願いしたいのよ」

翌朝一番に、聖教会本部から呼び出しが有り、大司教ペンティアムにお願いされてしまった


 本部教会付きのウリエラは、そもそも戦闘向きじゃ無いから仕方ないとしても、私もガブルンもそれぞれ西方と南方の担当区域が在るにも関わらず、更に東部を何とかしろと?


「幸い、西方と南方の地方巡業は済ませたばかりで、暫くは魔物や瘴気の影響も少ないだろうからな

 とにかく、今は外部からの侵入より、聖都内部の治安回復と封印の維持が最優先事項だ」


 ニコニコ顔のウリエラを挟んで、私とガブルンのふたりはジト目で大司教の言い訳を聞かされている

「え~と……拒否権は有ったり……」

「しない」ビシッと、言われる

「週末のお休みは……」

「事態が落ち着くまで我慢してくれ

 な~に、私も鬼では無い

 交代で留守にする担当地域は、

 ウリエラに広範囲浄化させるから、なにも心配はいらん

 安心して職務に励むが良い」

 

 どんなブラック企業ですか

 あ、ウリエラもジト目になった


 自警団と聖騎士団の腐敗は、貴族が絡んでいた事もあって予想以上に深刻だった様で、東街区だけで無く、聖都全域で汚職に絡んだ不埒物の摘発が相次ぎ、行政執行に支障をきたしている有り様だった


 上が腐れば根元迄とは、良く言ったもので

「お目こぼしを頂けるなら、真面目にやってると損をする」

 と勘違いするのが人間だ


「それと、ミカエラは身辺に気を付けなさい」

「はい?」

「パワーマック伯爵の罪科は明白だが、ご令嬢が行方不明と為った原因を、ミカエラに有ると勘違いする人間が居る様でね、伯爵家ともなると、本人以外にも色々としがらみや思惑も働くもので、まぁ、いわゆる逆恨みって奴だな」

「えーと、どうすれば?」

「襲われたら、問答無用で正当防衛してよろしい」

 何だ、実に私にも理解しやすい解決方法だった

 師匠はやはり、私の味方だと分かり安心した


 思わず破顏した私を、ウリエラとガブリエラのふたりがジト目で見ているのには気付かないのであった

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