第50話 イクしかない!


セレロンが蹴り飛ばした奴は、数キロ先まで街を破壊しながらフッ飛んで行った


 取り敢えずは、私の足元で復元しつつある悪党を、やっつけるか

 シスターっぽい衣装だけど、師匠達と対峙してたし、普通の人間ならさっきの一撃で跡形も無くなってる筈だ

 だから、コイツは悪党決定!


「そういうトコロよ」


 クレセントが呆れてるけど、無視


「ぐ……貴様ぁ!」


 足元で踏みつけてる奴が、何か言ってるけど、聞いてあげる義理はこれっぽっちも無い!

 パキャッ!

 取り敢えず生意気な口をきいた頭を踏み潰す


 頭が無くなったシスターが、ガバッと立ち上がった、直ぐに潰れた頭も復元してる

「しっ、信じられない!有無を言わさす踏み潰すなんて、何て野蛮なの?」

 バキッ!

 顔を殴ったら、また頭が無くなった


 どうやら、卍丸を纏っていると、パンチ力に聖剣の威力が上増しされるみたい

 こりゃ良いわね♪

 バキッ!ドカッ!バキャッ!

 立て続けに胸、腹、腰を殴り散らす


「残るは足だけね」


 脚を蹴り飛ばそうとしたら、身体全体が一気に復元しやがった

 面倒臭えな


「ミカエラ!そいつは調和の月の精霊龍ハモニアルだ、気を付けろ!」


 師匠から激が飛ぶ

 ありがとう御座います!


「消え失せろ!!」

 ドカンッッ!!

 モトローラの姿をしたハモニアルが凝縮した魔力を放って来て、私の周囲を吹き飛ばす

 アレだ

 前に師匠がクレセントにやったヤツだ


 クレセントはブレスで相殺してたけど、もしかして魔力を放出するなら私にも出来るんじゃね?


 私が無傷で立ってるのを確認すると、続けて魔力の塊をぶつけて来る

 バシバシバシッ!

 面倒臭いから、全部メリケンサックと化した拳で弾き飛ばす

 明後日の方向へ飛んで行ったエネルギーが、そこかしこで爆発してるけど、私のせいじゃ無い

 全部コイツが悪い


 全身に張り巡らせた卍丸と同調して、魔力を練るイメージを作る

 怒りはエネルギーの元になる

 憎しみは負の力でしか無いけど、希望は力を後押しして何倍にも加速してくれる事を教えてくれたのは師匠の言葉だ

 私は、それを信じてる!


「何だ!貴様は?一体何なんだ!?」


「私は聖女ミカエラ」

 

 お腹の少し下辺りに魔力を溜め、ギュウッと凝縮して圧力を高める


「世のため人のため、私のために正義を執行する!!」


 何かを察したのか、ハモニアルが両腕をかざして魔法障壁を展開するが、そんなもの私の正義の前には無力だわ


「セイントブレス!!」


 溜まりに溜まり、極限まで凝縮した魔力を、思い切り口から吐き出すと、まばゆい閃光がハモニアルを捉える

 幾重にも重ねて張り巡らせた魔力障壁が一瞬で崩壊し、そのままハモニアルを消し飛ばす


 塵ひとつ残さず跡形も無く消滅させたのは良いけど、ハモニアルの居たであろう方向の先が、街も森も山も消し去り、遥か地平線の彼方まで一直線で更地に変わってた


 あら?やり過ぎた?


「……やり過ぎだ、馬鹿者」


 師匠の冷静な突っ込みが入る


「何て威力よ……おめでとう、人間卒業ね」

 クレセントも呆れてる

 失礼ね、私はちゃんとした人間よ?


「ミカエラ!」「お姉様!」


 ガブリエラとウリエラが叫ぶ


 え?


 次の瞬間、死角から飛んで来た黒い影の一撃にブッ飛ばされた


 数百メートルは弾き飛ばされた所で、体制を直すと、眼前に再び現れた敵にもう一度喰らってしまった

 ザリンッッ!


 嫌な音を立てるが、卍丸を纏ってるお陰で無傷で済んでいる

 お返しに殴ってやろうとした私のパンチは、空をきる

 速い!?

 と思ったら、背中を蹴られた

 ドカッ!

 前のめりに体勢を崩しかけたが、そのまま後ろ回し蹴りを見舞う

 と、足首を掴まれてしまい、振り回すと地面に叩き付けられる

 ドシャ!「ぐっ!?」

 更に反対側に叩き付けられ、また反対側と連続で振り回され続ける

 ドカッ!ドシャ!ドシャ!ドカッ!バキャッ!

「良い加減に、しやがれ!?」

 腹筋で無理矢理身体を起こすと、顔面目掛けてパンチを放つ

 黒いヤツもカウンターで私の顔面を捉えていた

 良いパンチだわ


 バキバキバキバキバキバキバキバキ!


 暫く互いにカウンターパンチの応酬し合うけど、埒が無いので距離をとった


「ミカエラ!それが魔王だ!」


 え?やっぱり?でも封印は?


「ハモニアルも魔王も、本体は未だ封印されている!そいつはラファエラの赤子を触媒に呪胎した魔力の残滓に過ぎん!」


 げっ、残滓でこの強さなの?

 て言うか赤ちゃん?ラファ姉の?コイツが?


 師匠の横に泣き崩れながらも、こちらを凝視し続けるラファ姉が居た

 目が合う

 何を考えているんだろう?どんな気持ちなんだろう?自分に何が出来る?

 

 アンデッドと成り甦っても、もう奪われた赤ちゃんを抱いてあげる事も叶わないなんて、切な過ぎる!


 セレロンが飛んで来て、魔王目掛けて暗黒のブレスを放った


 ズドオーーーーン!


 冗談でしょ?こんな所で!

 と、思ったら、呆気なく魔王はセレロンのブレスを弾き飛ばす


 四散したエネルギーが、あちこちで大爆発を起こして、聖都はどんどん破壊される


 不味くない?

 封印が完全に解放されたら、魔王は手が付けられなく為りそう


「ミカエラ!聖都をこれ以上破壊させるな!

 奴の狙いは封印の解放だ!」


 いや師匠、ムチャ言わないでよ

 あんなの、どうすりゃ良いってのよ?


 (ミカエラ様……)


 ん?ミカの声?


 (ミカエラ様、私を呼んでください)


 何かわかんないけど、わかったわ

「ミカ、お願い!」


 守護天使のミカが傍らに顕現する


「ミカエラ様、私とひとつになりましょう」

「へっ?」

「聖剣を身体中に巡らせている今なら、私が憑依してミカエラ様と一体となり、更に力を与える事が出来ると思います!」


 クレセントとセレロンと、駆け付けたサリーが一斉に魔王と闘っているけど、決め手に欠けてる


 悩んでる暇は無さそうだ

 覚悟を決める、女は度胸よ!ドンと来い!


「では失礼します」

 ミカが私の背中に回り、抱き付いて来たと思ったら、何かそのまま身体の中に染み込んでくる


「あっ……あぁ、んっ」

 何か艶っぽい喘ぎ声が聞こえるけど……

 んんっ?ナニコレ?ヤバい気持ちいい!


 ミカが私の身体と同化する程、全身の性感帯が刺激されて……「んっ、んんうっ!」身体が勝手にビクビクと痙攣してしまう


「ちょ、ちょっと!ナニやってんのよアンタ達?」

 顔を赤くしたクレセントが何か言ってるけど、快感が止まらない

「あっ!ああぁっーー、んっ、はあっ!!」

 幾度か絶頂に達すると、完全にミカと同化出来た感覚に覚醒する


「ふう……」


 私の背中には天使の翼が生えていた


「「何あれ?」」

 ガブリエラとウリエラが驚いてる

「せ、聖女とはあの様な事も出来るのか?」

「アレは特別です!全く、けしからん……」

 ミレニアム教皇と師匠が真っ赤な顔で凝視してくる

 恥ずかしいなあ、でも身体全体にミカを感じる


 憑依合体した今の私なら、魔王に対抗出来るかしら?

 (勿論です、私が一緒ですよ?)

 ミカの声が心にひびく度に、言い様のない快感が全身を貫く

「んんっ……!」


 これはヤバい

 癖になったらどうしよう?

 (産まれた時から、ずっとご一緒させて頂きました、やっと一体になれて幸せ者です!)

「あっ、ああ、いっ……!」

 ダメだ

 さっさと魔王を倒さないと、私きっと戻れなくなりそう


「さあ、イクわよ!覚悟なさい!」


「それ、字が違うわよきっと」

クレセントがボソッとぼやく


 

  


  

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