第24話 為政者の憂鬱
東方支部教会は、瘴気汚染を免れた避難民で溢れて居た
街中のあちらこちらで火の手が上がっているが、消火しようにも、水が無い為に建物を打壊して延焼を防ぐしか無かった
焼け出され、暴徒に追われ、命からがら教会迄辿り着いた人々を救うのは、教会勤めの司祭とシスター達である
癒しや治癒の聖魔法こそ使えないが、炊き出しの配給を行い、怪我の治療に全力であたっている
教会は信徒の信仰心が集まる神聖な場所である為に、瘴気に狂わされた暴徒も近寄る事が出来ないのが見てとれた
ミレニアム率いる近衛騎士団一行は、教会へ到着すると現状把握の為に司祭との面会を求める
教皇ミレニアムの姿に気付いた避難民達は、聖印を切り頭を下げる「おお、教皇様だ!」「教皇聖下が来てくださった!」「助かった!」「もう、大丈夫だ!」「聖下!」人々から安堵の声が上がるが、今の彼女は己の無力感に胸を打たれるばかりであった
(聖都が破壊される迄、何も気付けず何も出来なかったばかりか、今も尚、己の増長と非力を呪うしか無いとは……情けない!)
為政者としても、一軍の将としても判断を誤ってしまった自分が許せなかった
「おお、これは教皇聖下!
自ら駆け付けて下さるとは畏れ多い!」
支部長の司祭と数名のシスターが、ミレニアムに跪き聖印を切る
「構うな、それより状況を教えてくれ
情けない事に、中央では何も把握出来ておらんのだ」
「東部街区の北側より暴動が拡大しております
貴族街周辺より拡がった火災は、大通りに阻まれ延焼を食い止めている状況ですが、鎮火の手立ては御座いません」
「ふむ、ここへ暴徒は来なかったのか?」
「女神様の加護で護られております故、
大司教より、信徒を避難させよ、と命ぜられておりました」
現場の動きが早い
ペンティアムの洞察力と行動力には、何時も驚かされる
「直ぐに食料と、天幕等の支援をさせよう
事態収拾まで、今暫くの辛抱だ
避難民は、此処に居るだけで全部なのか?」
「分かりません
街の様子を見に、何人かシスターを向かわせたのですが、誰も戻って来ないので御座います」
「何と言う事だ
近衛団長、直ちに捜索隊を出せ!」「はっ!」
「但し、暴徒に囲まれる前に撤退する様に徹底させろ、被害者を出すな」「はっ!直ちに!」
ウリエラの奇跡が、常に護ってくれる訳では無いのだ
あの時は、偶々間に合ったが、一つ間違えれば近衛騎士団もろとも、自分も狂気に飲まれてしまっていたであろう
魔王封印戦争の後、再建された聖王国の聖都は、聖女の存在に護られる場所として世界中から人が集まり、戦後僅か数十年で、人口二百万を超える世界最大の都市国家へと発展を遂げた
魔王封印の為に、人々の信仰心を力とし、聖都そのものが巨大な魔方陣として機能する様に、ペンティアム主導の元、緻密な都市設計で造られた
今回の暴動と都市の破壊が、封印にどの様な影響を与えるのか、まだ誰にも分からずに居た
約一名を除いて
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