喜・恋愛×2・嫉妬

 ここはミルモフの宿屋。そして幸の部屋だ。


 あれから部屋を分担する。

 なぜ幸だけ一人なのかと云うと、一部屋で二人までしか泊まれないためだ。

 そう、そういう事で四部屋に分けることにしたのである。

 部屋割りは、波留とライゼル、ミクセアと星奈、コリュカとミフェナ、こんな感じに分けられて幸だけ一人部屋になったのだ。

 この部屋割りになる前は、かなり揉めたようである。……特に女性陣が。


 そして現在、幸はベッドに横になっている。


(本当にこの宿は、可愛い物が揃っている。んー……ないのは、フィギュアか。まあ、ある訳がないよな。

 そういえばラブリーリンカのフィギュア、造りかけだった。元の世界に戻ったら造るか。……戻れるよな?)


 そう思った瞬間、幸の脳裏に不安が襲った。


(戻れるのかじゃない……戻らないとだよな)


 そう言い聞かせると幸は起き上がり、ベッドから下りる。


「グダグダ考えていても仕方ないよな。とにかく、今俺がすべきことをしなきゃ」


 幸はそう言い荷物の整理を始めた。

 その後、暇なので筋トレを始める。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここはミクセアと星奈の部屋。

 二人は椅子に座りテーブルを挟んで話をしていた。


「ミクセアは、幸が好きなのか?」

「ええ、勿論です。そう云うセナも、幸が好きなのよね?」

「ああ、好きだ。今まで、幸のようなタイプの男はみたことがない。だからなのかもしれないけど……一目惚れだった」


 そう言い星奈は、ミクセアを真剣な表情でみる。


「それを云うなら私も同じです。私は今まで、お見合いをしても断ってきました。どうしても……下心がみえ過ぎて、好きになれなかったのです」

「そうか……その下心って、財産目的ってこと?」

「はい、私を好きというよりは……家と結婚したい感じでした。でもコウは、異世界の者のせいかもしれませんが。そんなことには、興味がない」


 そう言いながらミクセアは、ウットリしながら遠くをみていた。


「いいえ、私が好きになった訳は……コウの信念。それだけではありません。なぜか私が守ってあげなければと思ってしまうのです」

「確かに幸をみていると……危なっかしい所があるよな。でもなぜか、なんとかしてくれるんじゃないかとも思っちゃうんだ」

「そうね……なぜでしょうか? 不思議です」


 そうミクセアは言い、ニコリと笑みを浮かべる。


「ああ、そうだな。共感したいけど、ボク達はライバル。ってことで、幸は渡さないよ」

「セナ、私もコウを渡すつもりはありません!」


 そう二人は言い、お互い睨み合った。

 その後もミクセアと星奈は、再び幸の話で盛り上がっていたのである。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここはコリュカとミフェナの部屋だ。

 二人は壁に寄りかかりながら話をしていた。


「隣は……コウの……部屋……だねぇ」

「ああ、何をしてるんだろうな?」

「うん……でも……ミフェナが……コウのこと……好きに……なるなんて……驚い……たわ」


 そう言いコリュカは、ニコニコしながらミフェナをみる。


「私も驚いている。まさか、男を好きになるなんて思わなかった」

「そうだね……いつも……ミフェナは……男を……敵の……ような……目で……みてた……ものね」

「確かにそうだな。自分でも驚いている……あの時、コウにみつめられ……ドキドキして鼓動が速くなった。未だに……本当に、これが恋なのかと疑心暗鬼なんだ」


 ミフェナは胸に手をあて顔を赤らめた。

 そうこう二人の恋バナは、まだまだ続くのである。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここは波留とライゼルの部屋。

 波留とライゼルは、お互い自分のベッドに腰かけ話をしていた。


「納得いかん! なんで、幸がモテるんだよ!!」

「そうだよね。僕たちだって、男なんだけど」

「ああ、ライゼル……納得いかないよな。それで、どうやったら俺たちがモテるようになると思う?」


 そう問われライゼルは、顎に手をあてながら考える。


「んー…………コウは、確かにカッコいいと思う。容姿と云うか、行動かな」

「確かに、男の俺からみても……悔しいくらいカッコいい。じゃあ、幸の仕草を真似てみるか?」

「それ面白そう……試してみようかなぁ。何かモテる法則がみつかるかもだし」


 そうライゼルが言うと波留は、コクリと頷き笑みを浮かべた。

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