思わぬ反応

 なんで能力を使わないのかとミクセアに言われて幸は、今更ないと言えず困っていた。


「なぜ黙っているの? 能力のことが言えなくても、使うことはできますよね」

「ああ……そうだな。やっぱり隠せない……ごめんミクセア、本当は能力がないんだ!」

「あら、そうだったのですね。ですが、どうして?」


 そう言いミクセアは、心配そうな表情で幸をみる。


「あーえっと……怒らないのか?」

「はて? なぜ怒る必要があるのでしょうか。それよりも、なんで能力がないのか気になります」


 それを聞き幸は泣いた。


「うう……本当にごめん。それにありがとう……」

「えーっと、コウ……泣かないで。それよりも、理由を聞かせてください」


 そう言われ幸は、手で涙を拭う。


「そうだな……理由か……」


 幸はその理由を説明する。


「……まぁ、女神さまが能力を授け忘れてしまったのね。じゃあコウ、これからどうするの? 能力もないのに……」

「うん、自力でなんとかしてみようかと思っている……どこまでできるか分からないけどな」


 そう幸が言うとミクセアは、顔を赤らめ目を輝かせた。そう幸の発言が、凄くかっこよく感じたからである。


「コウ、私は応援していますので……強くなってくださいね」

「ああ、そうだな。それはそうと……もし知ってたら、剣の抜き方を教えてくれるか?」


 それを聞きミクセアは、幸に剣の抜き方と簡単に使い方も教えた。

 幸は教わった通りに剣を抜いてみる。そして剣を構えた。その後、剣を上から下へ振ってみる。


「凄いですわ。私の説明だけで、ここまでできるなんて」

「いえ、そんなことはない。ミクセアの教え方が上手だったからだ」


 そう言われミクセアは、嬉しくなりニヤケてしまった。


「……でも実戦で、どこまでできるか分からない」

「そうですね。……分かりました! これからは、私が魔法で援護しますので……コツを掴んでください」

「んー、多分コツを掴むって云うよりも……鍛えるだな。いや、剣を使っただけじゃ鍛えられない。そうなると、色んな方法で鍛える」


 今の幸は、さっきまでと違いワクワクしている。


「鍛える……流石はコウ。私は傍で応援していますので、頑張ってくださいね」

「ああ、勿論だ。ありがとう……最初に出会ったのが、ミクセアで良かった」


 幸はミクセアの手を取り頭を下げた。


「いいえ、そんな……頭を上げてコウ。私は、貴方が本当の勇者だと信じています。だって普通なら、能力もないのに無謀にもこの森にくるなんてしませんもの」


 そう言いミクセアは、ニコリと笑みを浮かべる。……若干、天然失礼発言が混ざっているようだ。


「……なんか申し訳ない感が半端ないな」

「そんなこと、ありません。それよりも、これからどうしますか?」

「そうだな……剣がどれだけ扱えるか試したい」


 それを聞きミクセアは頷き幸をみる。

 そして二人は、少しの間この辺りの魔物を倒すことにしたのだった。

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