ある意味ピンチ

 ここはザルべドルの町の北西にあるバルデアの森。

 幸とミクセアは、この森の入口にいた。


「コウ様、この森の奥に居るのですね」

「ああ、そうだけど。ミクセア、なんか変な感じがするから……様を付けないでいいです」

「あーそうですね。じゃあ……コウ、話し方も堅苦しいのはよしましょう」


 そうミクセアが言うと幸は頷く。


「そうで……そうだな。ミクセアも、そうしてくれるか?」

「はい、そうね。できるか……分からないでふけど」


 ミクセアは慣れないせいか噛んだ。


「ハハハハハ……慣れてないなら、無理しなくていい。普段のままで……」

「は、あ……恥ずかしいです」


 そう言いミクセアの顔は真っ赤になる。


「ですが、ありがとう……そうしますね」


 それをみた幸はミクセアのことを可愛いと思った。……だが、それだけの感情である。


「じゃあ、森の中に入ろう」

「ええ、行きましょう」


 そう言うと二人は森の中へと入っていった。


 ◆◇◆◇◆◇


 幸とミクセアは森の中を歩いている。

 まだこの辺は森の入口付近のせいか明るい。

 二人は周囲を警戒しながら奥へと向かっていた。


「少しずつ暗くなってきたな。ていうか、雑魚の魔物って居ないのか?」

「魔物はいます。ですが、滅多に人が通る道には現れません」

「……」


 それを聞き幸は絶句する。


「コウ、どうしたのですか?」

「あーうん、なんか予想してたのと違ったから」

「そうなのですね。でも、噂では森の奥には魔物や魔獣が居ると聞いてます」


 それを聞き幸は考えた。


(んー魔物の方が臆病なのか? そうだとしたら変に刺激しない方がいいんじゃ)


 そう思考を巡らせ森の奥へ視線を向ける。


「害のない魔物は刺激しないようにしよう。但し向こうから攻撃を仕掛けてきたら別だ」

「ええ、私もその方がいいと思います」


 そう話しながら二人は、更に森の奥へと向かった。


 ◆◇◆◇◆◇


 しばらく二人は、森の中を歩き進める。

 すると幸とミクセアの前に五体のジェル状の魔物が現れた。


「コウ、これはジェルスラです。私は本でしかみたことなかったけど、可愛いですね」

「そうだな……だけど、明らかに俺たちを攻撃しようとしてる」


 そう幸が言ったそばから五体のジェルスラは、一斉に二人に襲いかかる。

 幸は難なく、ジェルスラの攻撃を避けていった。……流石、運動神経はあるようである。

 そしてミクセアは、風の攻撃魔法でジェルスラを倒していった。……初めてとは思えない程に手際がいい。

 その後二人はジェルスラを全て倒した。と云っても、全てのジェルスラはミクセアが倒したのである。

 そう幸は、ただ避けることしかできなかったのだ。


「ミクセア……ありがとう。俺は……」


 そう言い幸は、自分の不甲斐なさに落ち込み俯いた。


「コウ……私は大丈夫です。それよりも、剣が使えないことは、なんとなく理解できるとして。なぜ能力を使わないのですか?」

「それは……」


 そう問われ幸は言葉に詰まり黙ってしまう。


(ここまで来て、今更……能力がないなんて言えない。あーどうすんだよおぉぉおおー……)


 そう考え幸は空を見上げ睨んでいた。

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