やむなく承諾

 幸は悩んでいた。そしてミクセアへ視線を向ける。


「俺は転移して来たばかりで、能力も恐らく使いこなせないと思う。それなのに、ミクセアを守れるかも分からない」


 そう言い幸はミクセアから目を逸らした。


「問題ありませんわ。私は攻撃魔法も使えますので」

「そ、そうか……でも……」

「コウ様、問題ないと思うのだが……何か不満でもあるのか?」


 そうブロバルに言われ幸は言葉に詰まる。


「…………そうですね。分かりました! ミクセア、お願いします」


 そう言い幸は頭を下げた。


「いえ、こちらこそよろしくお願いします」


 ミクセアも頭を下げる。


「それでは、行ってきます」


 そう言うと幸は扉の方を向いた。

 それをみたミクセアは立ち上がる。


「あ、コウ様……荷物を持って来ますので外で待っててください」

「そうだった。そうですね……分かりました」


 そう言い幸はミクセアをみたあと部屋を出ていった。

 それを確認するとブロバルはミクセアをみる。


「うむ、ミクセア。お前、コウ様のことが好きなのか?」

「あーそれは……そうですね、多分そうだと思います」

「なるほど……いつからだ? 最初お前がコウ様を連れて来た時には、そんなようにみえなかった」


 そう聞かれミクセアは思い返した。


「……そうですね……私にも良く分かりません。ですが、いつの間にか……」


 そう言いミクセアは顔を赤らめる。


「そうか……やっとか。まあお前は二十歳だから、まだ間に合う。ん? そういえば、コウ様は何歳なのだ?」

「そういえば……ですが、同じぐらいだと思います」

「そうだな。だが、コウ様のあの様子じゃ難しいかもしれん」


 そう言われミクセアは、クスッと笑った。


「そこがいいのですわ」

「……誰に似たのか、お前は変わり者だな」

「さあ、誰でしょうか? 似ているとすれば、お父さまか亡くなったお母さまだと思います」


 ミクセアはそう言うと母親のことを思い出してしまい俯く。


「……ミクセア、そろそろコウ様の所にいった方がいいな」


 そう言いブロバルも、つらい表情になり俯いた。


「そうですよね。では、行ってまいります」


 涙を拭いミクセアはそう言うと、自分の部屋に向かう。

 それを確認するとブロバルは、頭を抱え俯いた。


(そうだったな……森の怪物は、ミクセアの母……セシルを殺した。セシルは、女だったが勇敢すぎたからな。……まぁ、ミクセアは大丈夫だろう……コウ様がいる)


 そうこうブロバルは考えている。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここはブロバルの屋敷の庭。

 あれから幸はここに来ていた。


(さてと、なんの能力もなくて……どこまでできる? んーそういえば、能力ないけどステータス画面ってあるのか? いや、あるわけないよな……そんな都合いいもの)


 そう思いながら自分の周囲をみたり目を閉じて確認する。


「ハァ~、ないみたいだな。少しは、期待したんだけど……」


 そう言い幸は苦笑した。その後、まだこないのかと思い屋敷をみる。

 そして幸は、ミクセアがくるまで色々と考えていたのだった。

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