バグ表示と降って来た巻物便箋

 何か物足りないような面持ちで幸は、キースのそばまできた。


「キースさん、どうしたんだ?」

「もしかして、自分がしたこと気づいていないのか? それなら後ろをみてみろ」


 そう言われ幸は、来た方角をみる。


「……」


 幸は驚き絶句した。そう、自分が殴った地面に大きな穴があいていたからである。


「えっと……もしかして俺が、やったのか?」

「ああ……ちょっと聞きたいことがある。その反応を見る限り気づいてないようだな」

「キースさん、気づいてないって……何にですか?」


 そう言い幸は首を傾げた。


「自分の能力にだ」

「待ってください。俺の能力は……」


 幸はそう言いかけて口を閉じる。


「能力がどうしたんだ。ここでは言えないことなら、ひと気のない所にいくか?」


 そう言われ幸は悩んだ。だが、キースになら話しても大丈夫だと思い頷いた。


「分かった。じゃあ、ここじゃない所でなら」


 それを聞きキースは、頷き歩きだす。そのあとを幸は追った。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここは、能力ナシの武道大会が行われている近くの草むらである。幸とキースは、ここまで来ていた。


「ここまでくれば、いいだろう」

「キースさん、そうですね。さっきの話ですが、俺が自分の能力に気づいてないって……どういう事だ?」

「うむ……なぜそう聞く?」


 そう問われ幸は、少し考える。そして、辺りを見回したあと重い口を開いた。


「俺には、能力がないはずだからです」

「なるほど……だが、なんでないんだ? 普通は、何かしらの能力を女神から授かるはずだ」


 そう言われ幸は、その理由を説明する。


「……そういう事か、それは災難だったな」

「いえ、俺はそれで良かったと思ってます」

「そうか……そうだな。そうなると、今の自分の状態がみれないのか?」


 そう問われ幸は、コクリと頷いた。


「ステータス画面もありませんから……ハハハ……」

「じゃあ、教えておいた方がいいな」


 そう言い一呼吸おくと、再び口を開く。


「そうだな……その前にオレの能力を教えておく。メインのスキルが、強化の実を生成する能力だ。サブスキルは、体を触ることでステータスをみることができる」

「じゃあ、俺の体を触ったのって」

「ああ、そうなる。その時にみたコウのステータスなんだが、メインとサブ共にバグと書いてあった」


 それを聞き幸は驚いた。


「……能力ナシじゃなくて、バグって……」

「ああ、だからオレは勝手な解釈で……相手をバグらせる能力かと思った」

「違いますね。でも、バグってどういう事だ?」


 そう言ったあと幸は思考を巡らせる。


「それとステータスなんだが……モザイクになっていた」


 それを聞き幸の目は点になった。

 すると巻物状態の便箋のような物が、ドサッと空から降ってくる。

 それをみて二人は、驚き一歩後退した。


「……これって、まさか……女神の」


 そう言い幸は巻物便箋をとる。


「女神からか……その長さだと相当な量の文字が書かれているのだろうな」

「そうですね。とりあえず読んでみます」


 そう言ったあと幸は、地面に巻物便箋を置き読み始めた。

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