その内容とバグの意味と気付くもと
幸は巻物便箋を読んでいた。すると幸の顔が、段々怒りの表情に変わってくる。
「おい、コウ……どうしたんだ?」
そう聞かれ幸は、キースに巻物便箋をみせた。
巻物便箋をみたキースは、呆れた顔になる。
「最後の方に書かれている【ごめん、許してね♥】で、半分使っているな」
「ええ……そうですね」
「まあ、それは考えないでおこう。それよりも……」
そう言いキースは、最初から読み直した。
そして、そこには……。
――【……ハァーイ元気? でねぇ――……――最近のコウの様子が変だから調べてたんだけど。
それでコウのステータスを覗いてたらね、バグ表示になってたの。
だから良く調べてみたよ。そしたら、どうもコウが無意味に体を鍛えてたせいみたい。だけど、そのお陰で身体系の能力を身に付けられそうなのよ。
ただ、これは何を鍛えるかにもよるわ。それなので、これからは何を基本に鍛えていくかで正常なステータスと能力が身に付くのでがんばってね♡――……】――
必要な部分だけ読むにこういう事らしい。
「いい加減にしろっ! 鍛え方次第で……能力が身に付く。じゃあ、失敗したら……」
「……悪い方に考えればそうなる。だが、良い方に思えば……自分が今必要としている能力を選び身に付けられるという事だ」
「んー……確かにそうだな。ただ、何を鍛えるかだよな」
そう言い幸は思考を巡らせる。
「そうだな。だが、コウの腕力は普通じゃない。多分、他の身体能力も……」
「恐らく、身体能力自体……バグってますね。それと、このバグについても書いてあったけど」
幸は一呼吸おくと、再び口を開いた。
「断言できないけど、能力が身につけば正常になる。だから下手に力まないように……って云われてもなぁ」
「バグが落ち着くまでの間なんだろう?」
「そうですね……でも、場合に寄っては無理です」
そう言い幸は、つらい表情を浮かべる。
「まあ……その時は、加減しなくてもいいと思うが」
「……ですね。そうすることにします」
「そういう事だ。じゃあ、そろそろ行くか」
キースはそう言うと立ち上がった。
それを聞き幸は、頷いたあと立ち上がる。
「とりあえず俺は、この手紙をリュックに入れてくる」
「分かった。それじゃオレは、先に行ってるぞ」
そう言いキースは、先程座っていた場所に戻っていった。
それを確認すると幸は荷物置き場の方へと向かう。
(ああは言ったけど……やっぱり納得いかない。能力ナシで召喚されたうえに、鍛えたからバグったって……。
まあ……考え方をかえれば、良い方に向いてるのかもしれない。だけど……それでもなぁ)
そう思いながら歩いていると、幸の脇を達基が通り過ぎる。
「……!?」
それに気づき幸は立ちどまった。だが、振り返り声をかけようと思うもやめる。そう、今はその時じゃないと思ったからだ。そして幸は、再び歩き出した。
片や達基は幸とすれ違い、少し先の方で立ちどまっている。
(今のって……もしかして幸なのか? ダサいサングラスにマスク……センスまで一緒だ。でもそうだとしたら、なぜ声をかけてくれないんだ。
……って、いうか。そもそも、なんでサングラスにマスクなんか付けている……変装のつもりなのか。まあそうするってことは、何か意味があるんだよな)
そう思い達基は、再び歩き能力ナシの会場へ向かった。
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