第一章

寂れた町ザルべドル

 ここはセーゼルス国のココリア大草原。

 あれから幸は、ひたすら歩いていた。

 だが、一向に村や町はみつからない。


(流石にお腹すいた。クソッ、なんなんだよ。能力がないのにどうしろって云うんだ? このままじゃ、日干しになるぞ)


 そう心の中で文句をいいながら、ヨタヨタと歩いている。

 すると丁度、座れるぐらいの岩がみえてきた。


「ひとまず休憩するか」


 そう言い幸はその岩まで行き腰かける。


(さてと、少し休んだらまた歩きだすか。だが……かったりぃ~)


 そう考えながら目を閉じた。

 しばらくして女性がここを通りかかる。その女性は、薄紫色の髪で綺麗に編み込みがされていた。


「あのぉ~、どうされました?」


 その女性はそう幸に話しかける。

 その声に気づき幸は慌てて目を見開いた。


「あ、いえ……ただ歩き疲れて休んでいただけです」


 幸は緊張気味にそう応える。


「そうなのですね。もしかして、お一人の旅でしょうか?」

「はい、そうなんですが……道に迷ってしまい」

「あら、そうなのですね。私は、この近くにあるザルべドルの町の者で……ミクセア・リリムテスと申します」


 そう言いミクセアは、上品に会釈をした。


「あ、俺は……えっと……」


 幸はそう言いかける。


(そういえば手紙に、名前は元の世界の逆で言えって書いてあったな)


 そう思ったあと幸は口を開いた。


「俺の名は、コウ・ヒビノです。あーえっと、町がこの近くにあるんですか?」

「はい、少し歩きますが」

「そうなんですね。もし良ければ、町まで案内してもらえませんか?」


 それを聞きミクセアは頷き、ニコッと笑みを浮かべる。

 その後ミクセアの案内で幸は、ザルべドルの町に向かった。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここはザルべドルの町。

 幸はミクセアの案内でここに来ていた。


「ミクセア、ここが町?」

「はい、そうです。ですが、今は昔ほど栄えていないため……町と云うよりも村にみえますよね」


 そう言いミクセアは悲しい表情をする。


「あ、ごめん……そんなつもりじゃなかったんだ。でも、なんでこんなに寂れているんだ?」

「私は、なぜだか分かりません。ただ知っていることは、数年前から行商人が減ったという事だけ」

「なるほど、それで他からの物資が減ったってことか」


 幸はそう言い改めて周囲を見回した。


「この町でも農作物などは採れるのですが。それだけでは、その日の暮らしで精一杯なのです」

「……それは大変だな。でも、なんで急に行商人がこなくなったんだ?」

「それについては分かりません。ですが、父なら知っているかも」


 そう言われ幸は首を傾げる。


「ミクセアのお父さんて?」

「私の父は、ここザルべドルの町長をしています」

「そういう事か。もし良ければ、ミクセアの……いや、町長に合わせてもらえないかな」


 そう幸が言うとミクセアは、コクリと頷いた。


「分かりました。ただ、会ってくれるかは分かりませんよ」

「ああ、それでもいい」


 それを聞きミクセアは、幸を町長の屋敷へと案内する。

 その間、幸は歩きながら色々と考えていたのだった。


(んー……あのとんでも女神の手紙に書いてあったことと、何か関係あるのか? もしあるなら……ここは、みすごせないよな)

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