願掛けと勇者の血筋

 ここは達基が創った城の中にある一室。この部屋には幸とミクセアと星奈と波留とミフェナとコリュカとライゼルとキースが居て準備をしながら話をしている。

 そんな中ミクセアは幸の上着に魔法陣が描かれた布を縫い付けていた。


「まじないか……前にも縫ってくれたよな」

「ええ、大丈夫だと思いますけれど……心配ですので」

「ありがとう……凄く嬉しい」


 そう言い幸はミクセアをみつめる。

 ミクセアも幸をみながら顔を赤らめていた。


「あーミクセアが抜け駆けしてる。ボクも幸にあげるっ!」


 そう言い星奈はジェルスラのキーホルダーのような物を幸の目の前に出す。


「星奈……いいのか? それお気に入りって言ってたよな」

「うん、でも何か幸にあげたいと思ったら……これしかなくて」

「そうか……ありがとう。上着のポケットに入れておく」


 幸はそう言うと星奈からジェルスラのキーホルダーのような物を受け取る。その後、ミクセアが持つ上着のポケットに入れた。

 それをみた星奈は嬉しくなり、ヤッターッと飛び跳ねる。

 その後、コリュカから狐のお守りをもらい。ミフェナからアイテム召喚用のカードを受け取った。

 それをみていた男性陣は嫉妬の眼差しを幸に向ける。


「みんな……なんか悪いな。こんなにもらっちゃって……」

「クスッ、コウ……私の方も終わったわ」


 そう言いミクセアは幸に上着を渡した。

 幸はミクセアから上着を受け取ると、サッと着る。

 それをみて女性陣は幸の裸をみれなくなり、ガッカリした。

 それを気にせず幸は話し始める。……慣れてきたみたいだ。


「今のところ、まだ暗黒の使者は現れていないが油断できない」

「幸……そうだな。そういえば幸、暗黒の使者をみるのは初めてなんだよな?」

「ああ……波留、そうだが」


 幸はそう言い波留をみる。


「じゃあ、どんなヤツラなのかも知らないって訳か」


 そう言い波留は難しい顔をし無作為に一点をみつめた。


「そういえば確かに何も分かってないな」

「説明か……多分、実物を見た方が早いかも」

「星奈……言葉に表せないような者たちなのか?」


 そう幸が問いかけるとミクセア達は、コクッと頷く。


「俺は前回……みただけで怖くなりライゼルと二人で壁の中に身を潜めてやり過ごした」

「波留らしいな。でも……それだけ恐ろしいヤツラだってことだよな」

「そうなるな。オレも戦ったが……倒すのが、やっとだった」


 そうキースが言うと幸は真剣な顔でミクセア達をみる。


「そうなると……戦うのは俺たち転移者のみがいいな」

「待って……サポート役が必要よね?」

「ミクセア、確かに必要だ。だが……」


 幸はどう判断していいか迷った。


「幸、ミクセアはボクたちと行動すれば大丈夫だと思う」

「そうだとしてもな……」

「私は大丈夫よ。前回、暗黒の使者がきた時に町ごと結界を張ったのですもの」


 それを聞き幸たち七人は驚き仰け反る。


「結界って聖女か強力な魔力を持つ者以外は使えないんじゃ」

「そうなのですか? お母さまは使えたとお父さまが言っていましたけれど」

「ミクセア……の……母さま……って……誰ですか?」


 コリュカは首を傾げそう問いかけた。


「知らないと思いますよ。名前はセシル・リリムテスで旧姓がテペトと云います」


 その名前を聞いたミフェナとコリュカとライゼルは驚き目を丸くする。


「待って……セシル・テペトって勇者セシルのことだよね?」

「ライゼル、多分そうだと思う」

「ミクセアが……勇者の……子供?」


 そう言われミクセアは困惑した。


「勇者って……お母さまが? 確かに、お母さまは勇敢な人だったとお父さまから聞いていましたけれど」

「だった? なんで過去形なんだ。そういえば屋敷には居なかったような……」

「……お母さまは五年前に森の巨大な怪物と戦い帰らぬ人になりました」


 そうミクセアが言うと幸たち七人は首を傾げる。


「帰らないって……亡骸は?」

「コウ……お父さまの話では怪物にのみ込まれたんだろうって」

「それって変じゃないか。装備品ぐらいはみつかってもいいはず。でもボクたちは残骸すらみていない」


 そう星奈は言いミクセアの方へ視線を向けた。


「そうなると……生きている可能性はあるな」

「……どういう事……お父さまが嘘を言ったとでも?」

「いいや、恐らく戻ってこなかったためだろうな」


 そう幸に言われミクセアは納得する。


「では、もしかしたら……どこかで生きてるかもしれないのですね」


 そう聞かれ幸は頷いた。


「でも、まさかミクセアが……勇者の血を引いてたとはな。ブロバルさんは知っていたから俺のサポートにって思ったのかもしれない」

「そうですね……」


 そう言いミクセアは幸をみつめる。

 そしてその後、幸たちは改めて役割の確認をしていたのだった。

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