納得いかない勝利
幸と達基が話をしていると審判は頃合いをみて開始の合図を告げた。
それを聞き達基は弾みをつけ幸へ殴りかかる。
幸は避け腕を掴み手前に引くと達基の体が前のめりになった。
すると達基は咄嗟に幸の方を向き手を掴んだ。
手を掴まれた幸は引っ張られそうになるが踏ん張る。
達基は宙吊り状態になった。その状態から両脚で幸の腹を挟んだ。
(クソッ……ビクともしない。どんだけ鍛えてるんだ? 昔から常に鍛えてたのは知ってたけど)
そう考えながら達基は幸を挟んだまま手を地面に着けようとしている。
「……」
幸は達基が何をしたいのか分からず困惑した。そう思いながら幸は達基の両脚を掴み外そうとする。
それに気づき達基は体を反って幸の両脚を掴んだ。だが幸の体は、ビクともしない。
「達基……何をする気だ?」
「う……なんでビクともしないんだよっ!」
「……バグのせいだ」
それを聞いた達基は意味が分からず困惑した。
幸は達基を自分の体から引き剥がし解放する。
「バグって……どういう事だ? まさか身体能力が、そのせいで常人レベルを超えてるって訳じゃないよな」
「まぁ……そうなんだろうな」
「……なんでそうなった?」
そう聞かれ幸は、ハァーっと溜息をついた。
「俺には能力がない。だが……」
そう言い幸は簡単に説明する。
「……色々あったみたいだな。そうか……じゃあ正常に戻るまで対戦はやめておくか?」
「達基はそれでいいのか? それにみている連中は納得しないと思うんだが」
「ああ……そうだろうな。じゃあこうするか……」
達基はこのあとどうするのかを話した。
「……それって出来レースだよな。それに、いいのか? 俺が勝っても……」
「ああ……どのみち真面にやっても幸に勝てる気がしないからな」
「分かった。殴る蹴りはできないから投げる」
それを聞き達基は頷いたあと身構える。
それをみて幸は達基との間合いを取った。その後、達基に目掛け駆けだす。
達基はそれをみて両手を前に出して構える。
そして幸は達基のそばまできた。
達基は幸を掴もうとする。
その達基の手を幸は払い除けた。すると即座に達基の服を掴み投げて地面に叩きつける。
その後、達基は自ら負けを告げた。
それを審判は複雑な気持ちで幸の勝ちと叫んだ。
それを聞き幸は溜息をつき達基に手を差し伸べる。
その手を取り達基は立ち上がった。
「なんか勝ったって気がしない」
「そうか? 俺はそう思わないけどな」
そう言われ幸は苦笑する。
その後、二人は対戦会場からミクセア達が待つ観覧席へ向かった。
◆◇◆◇◆◇
ここは、とある町の近くにある森。その奥には古ぼけた屋敷が建っている。
その屋敷の一室では五名の者が話をしていた。
「そろそろ刻限だな」
「はい、予定通りでございます」
「だけど達基って相変わらず……変に真面目よねえ」
「これで……何人減るかだ。まぁ俺たちは、ヤツラと契約してるから大丈夫だがな」
「そうそう……真面目に女神の言う通りなんてしてたら命がいくつあっても足りないって」
その者たちは、どうやら転移者みたいだ。
そして、その後も五人は高笑いをしながら話をしていた。
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