ここに集う

 ここは能力ナシの会場に設置されている観覧席だ。

 この場所には幸がいる。


(キースさんは頭を打って気絶したのか。でも、この身体能力……流石に異常だよな)


 そう思い空を見上げた。


(そういえば、みんなは勝てたのか? 気になるが、まだあと一回……残っている。達基との試合が……)


 そう考えていると星奈と波留が幸の所に近づいてくる。


「幸、コッチも終わったのか?」

「あ、波留……いや、まだだ。あと一回、主催者の達基と対戦する」

「そうなのか……向こうは気づいてるのか?」


 そう言い星奈は辺りを見回した。


「多分だけど、さっきすれ違った時に気づいたかもしれない」

「そうか……じゃあ、やりづらいんじゃないのか?」

「波留、それはない。ただ……俺はフルで力を使えなくなった」


 そう幸が言うと星奈と波留は不思議に思い首を傾げる。


「どういう事?」


 星奈は驚きそう問いかけた。


「俺も意味が理解できないんだが、実はな――……」


 そう言い幸はその理由を話し始める。


「……バグって、それも無意味に鍛えてたせい。それって……ある意味、チートで最強な能力なんじゃないか?」

「波留、どうだろうな。鍛え方次第で能力が変わる……それもどんな能力になるかも分からない」

「分からないかもしれないけどさ。適当じゃなく、ほしい能力が何か考えて鍛えればいいんじゃないかな」


 そう星奈に言われ幸は、コクリと頷いた。


「そうだな……とりあえず、そうしてみる」


 そうこう三人が話をしていると、ミクセアとミフェナとコリュカとライゼルが幸のそばに近づいてくる。

 そして幸はミクセア達、四人にも同じ説明をした。

 その後、主催者である達基が対戦会場へ現れる。

 それをみて幸は対戦会場へ向かった。


「コウは、勝てますよね?」

「ミクセア、コウが負ける訳ないだろ」

「どう……かなぁ。ミフェナ……分から……ないよ。さっきの……話……だと……いつもの……ように……力……使え……ないって……言って……たしぃ」


 そうコリュカが言うと五人は不安になってくる。


「……でも、根性で勝つんじゃないか?」

「ああ、星奈の言う通りだ」

「そうだね……コウは、フルに力を使わなくても強いと思うし」


 ライゼルがそう言うと五人は頷いた。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここは能力ナシの対戦会場。

 幸は達基が待つ場所までくる。


「幸……だよな?」

「ああ、達基……そうだ」

「そうか……良かった。この世界に居てくれて……」


 そう言い達基は目を潤ませた。

 幸はもう隠す必要はないと思いサングラスとマスクをとる。そしてポケットに仕舞う。


「達基、なんで泣いているんだ?」

「そうだな……その理由は、この試合が終わったら話す」

「そうか、分かった。だけど、またこうやって逢うことができるとは思っていなかった」


 そう言い幸は達基を見据えた。


「俺もだよ」


 それを聞き幸は、ニヤリと笑みを浮かべる。

 そして二人は開始の合図を待つ間、話をしていた。

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