試し斬り

 ここは武器屋の裏庭。至る所に試し斬りができそうな物が置いてある。

 それらを幸は、珍しいと思いみていた。

 そのあとをミクセアとゼルブがついて歩いている。


「これって、みんな試し斬りできるのか?」

「ええ、まぁ……ここには知り合いやお得意様以外……本来なら通さないのですが」


 そう言いゼルブは幸をみた。


「コウ、本当に扱えるの?」

「それは分からない。ミクセア……だから、試しに使ってみたいんだ」

「なるほど……それでは、どれで試されるのですかな?」


 そうゼルブに問われて幸は、グルリと辺りを見回す。


「みただけじゃ分からないが……動く物ってありますか?」

「ありますが、まさか……それで試されるのでしょうか?」

「ああ、その方がいいかと思って」


 それを聞きゼルブは悩んだ。


「んー、最初は動かない物がいいと思いますが」

「そうか……そうだな、それなら目の前のこれで試し斬りをする」


 そう言い幸は、目の前にある試し斬り用の大木を指差した。


「……うむ、斬れるとは思えませんが。そうですね……これが斬れたら、動く物を用意しましょう」


 そう言われ幸は頭を下げる。


「ありがとうございます。じゃあ、やるので離れていてください」


 それを聞きミクセアとゼルブは、幸から遠ざかった。


(コウ……大丈夫でしょうか?)


 そう思いミクセアは、眉を下げ幸をみる。


(あのバトルアックスを持てたとしても……使えんだろう)


 そう考えゼルブは、フンッと鼻を鳴らし幸を凝視した。


 片や幸は、バトルアックスを軽く振ってみる。


(んー、そうだな……これだけ重いから……思いっきり振り切れば大丈夫そうか?)


 そう思い幸は、バトルアックスの刃を軽く大木にあて位置を確認した。

 その後、思いっきり息を吸い込むとバトルアックスを体ごと勢いよく後ろに振る。


「ウオォォリャー……」


 それと同時に、勢いにまかせ真横から振り大木にあてた。


 ――スパッーン……――……――うわぁぁぁぁぁぁぁ……――


 大木は真っ二つに斬られる。だが、勢い余って幸まで吹っ飛んだ。


 ――ドサッ!!――


 幸は大木の少し先まで飛ばされ落下した。

 因みにバトルアックスは幸が手を放してしまったため、勢い余って建物の壁にあたり刺さっている。


「イタタタタ……」


 そう言いながら幸は、上体を起こし頭をブルッと振る。その後、どうなったのかと斬った大木の方に視線を向けた。


「んー……なんとか斬れたみたいだな」


 そう幸は言うとミクセアとゼルブの方をみる。

 すると二人は、口を開け佇んでいた。そうバトルアックスを手から放してしまったものの、大木を綺麗に斬ったからである。

 それをみた幸は、どうしたんだろうと思いながら立ち上がった。その後、ミクセアとゼルブの方に歩み寄る。

 それに気づき二人は、我に返り幸をみた。


「コウ、えっと……大丈夫ですか?」

「ん? ああ、流石にアッチコッチ痛いが……恐らく問題ないだろう」

「うむ……確かに大木を斬りましたが、これはちゃんと練習しなければなりませんな」


 そう言いゼルブは、真顔で幸をみる。


「じゃあ、動く物で試せるんですか?」

「いいや、使い方ができていない。武器は売ってやるが、しばらく使い方をマスターした方がいいだろうな」


 それを聞き幸は、ガッカリした。

 その後、幸は壁に刺さったバトルアックスを取りに向かう。

 そして三人は、店の中に入る。そのあと幸は、そのバトルアックスを購入したのだった。

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