幸の意外な趣味

 幸たちは、どこの宿屋にしようかと話し合いながら探し歩いていた。


「そろそろ、宿屋街を抜けるな」

「コウ、そうね。そろそろ決めないと」


 そうミクセアが言うと六人は、どこにしようかと思考を巡らせる。


「ねぇ……セナ……前に……泊まった……所は……どうか……なぁ」

「ミルモフの宿のことか?」

「うん……あそこは……獣人に……優しい……宿……だしぃ……可愛い……物が……あちこちに……あって……好き……なの」


 そう言いコリュカは、ニパッと笑った。


「確かに、あそこの食事は美味しかった。でも、あそこは男性の趣味に合うとも思えないけど」

「ミフェナ……そこは、別に男が泊まっちゃ駄目ってことじゃないんだよな?」

「勿論、男女ともに泊まれる。それに、他の宿屋より他の種族にも優しい」


 そうミフェナが言うと幸は、ニヤリと笑みを浮かべる。


「なるほど……じゃあ、そこにしよう」

「なんか幸、いつになく喜んでないか?」

「波留……そ、そうか……」


 そう言いながらも幸の目が泳いでいた。


「んー……まいいか。それに、迷って決まらないよりもいいだろうし」


 そう波留が言うと六人は頷く。

 その後、幸たちはミルモフの宿屋に向かった。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここはミルモフと云う店名の宿屋。あれから幸たち七人はここにくる。

 幸とミクセアと波留とライゼルは建物内に入るなり、その光景に様々な感情を抱く。


(これは……確かにキツイ。こんなに可愛い物ばかりじゃ、恥ずかしすぎる)


 そう思い波留は、顔を赤らめる。


(うわぁー、可愛い。でも、んー……ここまで可愛い物があるのもつらいかなぁ)


 ライゼルはそう考えると、ハァーっと溜息をついた。


(可愛い物が沢山飾られていますわ。確かにこれでは、男性向きじゃありませんね)


 そう言いミクセアは、幸の方に視線を向ける。


(これは……想像以上だ! 凄い、ぬいぐるみまである。テーブルまで、可愛いじゃないか)


 喜び幸は、目を輝かせていた。

 そんな幸をみた六人は、不思議な感覚に襲われている。


(なんで目を輝かせているんだ?)……波留

(流石にコウの趣味ってことないよな……)……ライゼル

(なぜだ……まさか、こういうのが好きなのか? でも、イメージが……)……ミフェナ

(幸って……なるほど、可愛い物が好きなのか。クククッ……ヨシッ! プレゼントは決まったな)……星奈

(これは……いいことを知りました。あとで点数を稼がなければ!)……コリュカ

(意外でしたわ! 男性でも、こういう物を好まれる方がいるのですね。では、何か手作りの可愛い物をプレゼントしましょう)……ミクセア


 女性陣は、何かを企てているかのような表情になっていた。

 それをみていた幸と波留とライゼルは、不気味に思え顔が青ざめている。

 そしてその後、幸たちは受付を済ませると各自の部屋に向かったのだった。

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