旅立ちの朝
……――一週間後の朝。
ここはザルべドルの町付近のココリア大草原である。
町の入口付近には、幸、ミクセア、波留、星奈、コリュカ、ミフェナ、ライゼル、七人が立っていた。
あれから幸たちは、ブロバルと話をしたあと波留の回復を待ってから旅立つことにする。
そして現在、幸たちはザルべドルの町を眺めていた。
「いよいよだ。なんか色々あったけど、これからが本番なんだよな」
そう言いながら幸は、なぜか顔を引きつらせている。
いや波留とライゼルも、顔を引きつらせていた。
そう幸の右腕にミクセアと左腕に星奈と腰にコリュカがしがみついている。それだけではなく、ミフェナが空いてる隙間から幸の服をつまんでいた。
「そうだな……てか、幸! この状況、どうにかならないのか!?」
「波留……どんなに引き剥がしても、磁石のようにくっ付いてくる。んー、どうしたらいい?」
「それを俺に聞くのかよ……悪気がない分、タチが悪い」
そう言い波留は、ハァーっと溜息をつき頭を抱える。
「波留ってさ……女にモテたことないだろ?」
そう星奈に言われ波留は、更に機嫌が悪くなった。
「ああ、その通りだ! 悪いか……モテない男の気持ちなんか分からないよな?」
「んー……俺は分かるぞ。全然モテたことないからな」
「幸……どの口が言ってんだよ!」
そう言い放ち波留は、今にも泣きそうだ。
「なんで怒ってるんだ? 実際、十八年間……女に好きって言われたことがない」
「ほう……じゃあ、この状況はなんなんだよ!!」
そう波留に言われ幸は考える。
「ただ俺にしがみついてる……いや、からかわれてる状況か?」
幸のその発言を聞き、ミクセアと星奈とコリュカとミフェナの目は点になった。
「プッ、ハハハハハ……駄目だ可笑しい。幸、それ本気で言ってるのか? いや、その顔はマジだな」
「ククク……プハッ、ケラケラ……僕も……もう絶えられない。コウがここまで鈍感だと……」
そう言いながら波留とライゼルは、腹を抱え大笑いする。
当の幸は、なんで二人が笑っているのか分かっておらず困惑していた。
「何がそんなに可笑しいんだ?」
「そ、そうだな。悪い、お前にとっては可笑しいことじゃない」
「波留、そうだね。コウにとっては、今の状況がなんなのか分かってないみたいだし」
そう言い波留とライゼルは、ジト目で幸をみる。
「んー……まあいいか、喧嘩もしたくないしな。それよりも、旅立つ前に確認しよう」
そう幸が言うと六人は頷いた。
「まずこの旅の目的は、森の巨大な怪物が倒されたことの噂を各地に流すのと」
「幸、そうだね。それとデスゲームの首謀者を探す」
「ああ、星奈……それもあったな。そういえば前から気になってたんだが。なんで、こんなに転移者がいる?」
そう言い幸は首を傾げる。
「そのことか。本来の俺たちの役目は、この世界に災いをもたらすと云われる暗黒世界の使者を討伐することなんだ」
「うん、波留の言葉に付け足すなら……そのボスは、ボクたちの世界で云う魔王だ」
そう星奈が言うと幸は、なるほどと頷いた。
「じゃあ、その討伐を放棄してまでデスゲームをしているって訳だな」
「んー幸、ちょっと違うかなぁ。ボスとやり合うのは、誰かを決めるためだよ」
星奈がそう言うと幸は、ムッとする。
「誰がボスを倒すかじゃないだろ! 女神がこれだけの転移者を召喚してるってことは、一人じゃ無理だからなんじゃ」
「ああ、幸の言う通りだな。俺もそう思う……」
そう言い波留も、怒りの表情を露わにした。
「そうなると、色々と忙しくなるな。だが、なんとかするしかない」
そう幸が言うと六人は頷く。
「フゥー……いつまでも、ここで話をしてても日が暮れる」
「コウ、そうですね。早く森を抜けて、バルベバの町を目指さないと野宿になってしまいます」
そうミクセアに言われ幸は頷き、バルデアの森へ体を向ける。
そして幸たち七人は、この場を離れ旅立ったのだった。
――そうここから、幸の苦難と女難の旅が本格的に始まるのである――
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