憧れのスター

 ここはバルルゼア草原に仮設された武術大会の会場。そして能力ナシ部門が行われる場所だ。

 幸はここにくるなりリュックを荷物預かり所へ預ける。

 因みにバトルアックスは、使わないだろうと思い宿屋の自分の部屋に置いて来ていた。

 そして、なぜかくじを引かされる。


(くじをする必要あるのか?)


 そう思いながらも幸は、くじを引いた。

 すると紙には7と書かれている。

 それを受付……リナキャルにみせた。

 それをみてリナキャルは、トーナメント表の七番目に4と記載した。

 リナキャルは記載を終えると幸に出場者の控え場所を教える。

 それを聞き幸は「ありがとうございます」とお礼を言い、頭をさげ控えの場所に向かう。


「え、えっと……見た目よりも真面目?」


 そう言いリナキャルは、控えの場所に向かうまで幸の背中をみつめていた。


(なるほど……トーナメント形式か。だから平等に振るため、くじを引かせたんだな)


 そう考え幸は控えの場所までくる。その後、空いてる所に座った。


(んー流石に俺よりも体格がいいのもいるな。転移者と言っても、俺と違う国のヤツも居るのか。どちらかと云うとこっちは、俺と同じ国の者が少ない。

 そうなると負けるかもな。格闘のプロみたいのも居るから、絶対に無理だろ……流石にさ)


 そう思いながら幸は、チラチラと周囲をみている。


「ほう、サングラスにマスクか……カッコつけているようにもみえんが。何か意味があるのか?」


 右隣りのブロンドの髪の男に声をかけられた。


「あ、そうですね……ただなんとなく、この方が落ち着くんで」

「なるほど……それが戦闘スタイルか。まあそれも悪くない……人それぞれだからな」

「はい、俺もそう思います」


 そう幸が言うとブロンドの髪の男は、ニコッと笑う。


「失礼ですが、同じ世界の人ですよね?」

「多分そうだろうな。国が違うだけだと思うぞ」

「やっぱりそうか……俺の国以外にも、この世界に来ている者がいる」


 そう言い幸は、無作為に一点をみつめた。


「そういえば自己紹介がまだだったな。オレは、キース・キャリー」


 その名前を聞き幸は驚く。


「まさか、アクションスターの?」

「ああ、そうだ」

「俺は特撮が好きで、よく観てました」


 幸はそう言い目を輝かせる。


 このブロンドの髪の男は、格闘を主に得意とする幸からすれば海外のアクションスターだ。

 因みに年齢は、二十五歳である。


 それを聞きキースは、幸の手をとった。


「おお……それは嬉しい。こんな所に、オレのことを知っているヤツがいるとはな」

「ええ、俺こそこんな所で有名人に会えるなんて思いませんでした。あ、そうだ……」


 そう言うと幸は、自己紹介をする。


「コウか。それはそうと、なんでこっちの大会に出た?」

「俺は、能力を使うよりも……ガチでやり合う方が性にあっているので」

「そういう事か。じゃあ、本気を出さんと失礼になるな」


 それを聞き幸は頷いた。


「はい、俺もキースさんとあたったら本気でいきます……じゃないと敵わないと思うので」

「それはどうかな。オレがみた限り、君は痩せてみえる。だが、かなり鍛えているね。んー……何かスポーツをしていたのか?」

「みただけで分かるんですか? 確かに陸上で主に八種競技の方を」


 キースはそれを聞くと、幸の二の腕と太ももを掴んだ。


「……なるほどな。今でも、鍛えているのか?」

「勿論です。元々体を動かすのが好きなので」

「そういう事か。これはマジで本気を出さんとな」


 そう言いキースは苦笑いをする。

 しかし幸はキースの言葉が意味することを理解していない。

 そしてその後も幸は、キースと話をしていたのだった。

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