躊躇と決心

 ここは町長の屋敷。

 幸はミクセアとブロバルと話をしている。


「どうするんだ? もしそうなら、相手は能力者」

「ですね。ですが、やるしかない。誰かがやらないと、ずっとこのままです」

「うむ、そうだろうが……危険すぎる」


 そうブロバルに言われ幸は悩んだ。


「……確かに危険かもしれない。だけど……」


 幸はそう言い俯いた。


「それなら……確認次第、逃げてくればいいのでは?」

「そうだな……危険と判断したら……いや、そもそも逃げられるのか?」

「その時は、私が援護します」


 それを聞き幸とブロバルは、ミクセアのことを心配に思いみる。


「ミクセア、それでも危険だ。相手が、どんな能力を所持しているか分かっていないんだからな」

「だから? やってみなきゃ分かりませんよね。それに、コウらしくないわ」

「俺らしくない?」


 そう言い幸は首を傾げる。


「はい、さっきは能力がないのに無謀にも森に行きましたよね?」

「ああ、確かに無謀だった。反省してる……」

「いいえ、反省する必要なんてないわ。私は、凄いと思ったのですから。それがコウのいい所なのでは?」


 そうミクセアに言われ幸は考えた。


「……何も考えないで、無謀な行動をすることが俺らしい?」

「んーそれも……少し違うかな。その行動は無謀かもしれない、それを分かっていてもやろうと思う気持ち。ううん、勇敢に立ち向かっていく姿勢です」


 そう言いミクセアは幸をみる。……美化しすぎだ。


「勇敢……か。俺はただ、どうにかしたいと思った……それだけだ。だけど……」

「それでいいと思います。どうにかしたい……この状況でそう思える人は、そんなにいないと思いますよ」

「確かに自信を持って、やると発言した時……なぜかやり遂げてくれる気がする」


 ブロバルはそう言い幸をみる。


「いや、今回コウ様が森に言ってくれなければ……この件も分からなかっただろう」


 それを聞き幸は決心した。


「そうですね……俺に今できることをする。……立ちどまってなんていられない。とりあえず、危険かもしれないけど……今ある力でやれることだけしてきます」

「はい、私はそのお手伝いをさせてください」

「ミクセア、ありがとう……でもこれ以上危険に晒す訳には……」


 そう言われミクセアは首を横に振る。


「私はコウのお手伝い……いいえ、傍にいたいのですの」

「そういう事だ。それに能力のないコウ様だけよりもいいと思うが」

「分かりました。そう言って頂けるなら、ミクセア……また危ない目に遭わせてしまうかもだけど」


 幸はそう言うと申し訳ない表情をした。


「いいえ、私はまたコウと一緒に行動できるのが嬉しいのです」


 そう言いミクセアは、ニコリと笑う。


「ありがとう……俺も、一緒に居てくれると助かる」


 それを聞きミクセアは顔を赤らめた。


「うむ、じゃあこのあとどうするんだ?」

「とりあえず今日は、色々と考えたいこともあるし。明日、向かいたいと思います」

「それがいい。んーそうだな……まだ時間もある、ギルドに行ってみたらどうだ?」


 そうブロバルに言われ幸は首を横に振る。


「いいえ、今はまだやめておきます」

「そうか……まぁ、気が変わったら言って欲しい。紹介状を書きたいのでな」

「分かりました……その時は、お願いします」


 そう言い幸は、軽く頭を下げた。

 その後ブロバルは、使用人に部屋を用意させる。

 そして幸は、使用人に案内された部屋へ向かった。

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