剣の重さと想いと願いと

 ここは幸のために用意された部屋。この部屋のソファのような長い椅子には、幸が肘掛に寄りかかりベット代わりに寝そべっていた。


(ハアー、疲れた……。これからどうなるんだ? 俺には能力がない。

 確かにブロバルさんが言うようにギルドで仲間を募ればいいんだろうけど。流石に無能力なんて言える訳ないよな)


 そう思いながら目を閉じる。


(明日……か。んーそうだな……暇だし体を動かして、気分転換でもしよう)


 そう思い付くと幸は瞼を開いた。その後、上体を起こすと立ち上がる。そして広い場所をみつけ柔軟体操を始めた。


(そういえば、みんなどうしてるんだろうな。まあ、部の方は引き継いで来たから大丈夫だけど)


 前屈をしながら、そうこう考えている。


「んー、着ている物のせいか……動きにくい。脱ぐか……」


 そう言い幸は上半身のみ裸になった。……見た目よりも、脱ぐと凄いようだ。

 そう痩せている割には、結構な筋肉である。

 因みに幸は陸上と云っても、主に八種競技に出ていた。


 八種競技とは、百メートル、走幅跳、砲丸投げ(六キログラム)、四百メートル、百十メートルハードル、槍投げ、走高跳、千五百メートル、八つの種目を二日間かけ行って競うのだ。


 そのためか体は、かなり鍛えられている。


(そういえば、剣を持ってみたけど……思ったよりも軽かった。んー、もう少し重くてもいいかな。少し重みがあった方が鍛えられるし)


 そう思いながら屈伸をしていた。


「あっ、そうだ! そうだよな、お金あるし……これで自分に合った武器を買ってくればいいんだ」


 そう言い放つと幸は、急ぎ汗ばんだ体を布で拭いたあと服を着る。

 その後リュックの中身をチェックすると、ブロバルの居る部屋に向かった。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここはブロバルの書斎。

 机を挟み幸とブロバルが話をしている。


 幸はブロバルの居る部屋を探していたが分からず、通路にいた使用人に聞き案内されてここに来ていた。


 そして現在、幸はブロバルから色々と聞いている。


「武器か……確かに自分に合った物がいいだろう。だが、そんなにその剣は軽いのか?」

「剣自体は握り易いのですが……」

「なるほど……そうだな。ではミクセアに案内させるので、武器屋に行くついでに町を歩いてくるといい」


 そう言うとブロバルは、扉の近くで待たせていた使用人にミクセアを連れてくるように指示した。

 それを聞き使用人は、ミクセアを呼びにいく。


「本当に……何から何までありがとうございます」

「コウ様、問題ない。それよりも、ミクセアのことをどう思う?」


 そう聞かれ幸は首を傾げる。


「はあ、とてもいい人だと思います。綺麗で優しい……それに、強いですね」

「うむ、それだけか?」

「はい、それだけですが。他に何かあったかなぁ」


 そう言い幸は思考を巡らせた。


「フゥー、まあいい。じゃあ、ミクセアのことは嫌いじゃないのだな?」

「勿論です。あんないい人を嫌いになるなんてあり得ません」


 それを聞きブロバルは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「そうか……それならばいい。では、これからもミクセアを頼んだぞ」


 幸はブロバルが何を言いたいか分からない。だが、とりあえず頷いた。


「分かりました。ミクセアを守れるぐらい強くなります!」


 そう言い幸は、ブロバルをみる。

 そして二人はその後も、ミクセアがくるまで話をしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る