対戦表と談話と緊張と

 ここは能力ナシの会場。そして、トーナメント表が貼られている場所だ。

 幸はここにくるとトーナメント表をみる。

 そのあとからキースが来てトーナメント表をみていた。


「これは……」

「コウ、オレの試合が終わるまで暇になったみたいだな」

「ええ、なんか昔も……こんな似たようなことが……」


 そう言い幸は昔のことを思い出してしまい、つらくなり顔をしかめる。


 そう幸は族をやめる前ぐらいに喧嘩をとめるために、そこに向かった。だが喧嘩をしていた者たちは幸をみるなり逃げていったのである。


「そうか……。昔、何があったのか知らんが……その様子を見る限り相当つらかったようだな」

「すみません……昔のことを思い出してしまって」

「構わん。それよりも、そろそろ戻るか」


 そう言われ幸は、コクッと頷いた。

 そして二人は観覧席の方へ向かう。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここは能力ナシの会場から少し離れた木陰である。

 この場所には達基とリナキャルが居て何か話をしているようだ。


「そうか……そんなことがな。その話を聞く限り、そのコウと名乗る男は地面に穴をつくった」

「そうなのよ。それにね、凄く礼儀正しいの……ビックリしちゃうくらい」

「……幸、間違いない。さっき幸らしいヤツと、すれ違ったしな」


 そう言い達基は能力ナシの会場に視線を向けた。


「声かけなかったの?」

「ああ、サングラスとマスクで変装してたから。多分、気づかれたくないんだろうと思って声をかけなかった」

「そっかぁ。タツキとどっちが強いだろうね」


 そう聞かれ達基は考える。


「どう考えても幸だろうな。あんな穴をつくるほどのパワーだ……素手でやって、流石に勝てる気がしない」

「そうかぁ。でも、あのパンチ力って能力なのかな?」

「能力というか……転移してきた時に割り振られた攻撃力じゃないかと思う」


 そう言われリナキャルは納得し頷いた。


「そうなると……能力を使ったことにならない」

「あー確かにですね。でも、これで能力が加わったら……アイツを倒せるよ」

「そうだな。いや、能力を使わなくても……幸なら倒せる気がする」


 そうこう話しながら二人は期待を胸に能力ナシの会場をみている。



 ――場所は変わり、町にある闘技場――


 既に男性の部の試合が始まっていた。男性の部は二十六人もいる。

 そして現在、試合会場では3の五番と7の六番が開始の合図を待っていた。

 因みにライゼルは7の六番目である。という事は既にライゼルの番がまわって来ていた。


(ああ、どうしよう……始まっちゃうよ~)


 今にもライゼルは泣き出しそうである。


「おい、そんなに怖いならでなきゃよかったんじゃねえのか」


 そう言い対戦者である銀髪のドワーフは、ライゼルを見下し笑った。


「そ、そうですよねぇ。だけど、ここで逃げたら……仲間に何を言われるか分からないので」


 そうライゼルは言いミクセア達、女性陣のことを思い浮かべる。


「なるほど……そりゃあ、大変だな。だが、手は抜かんぞ」

「そうしてください。そんなつもりじゃないので」


 そう言いライゼルは、ニコリと笑った。とあることに気づく。そう、いつの間にか怖いのと緊張が取れていたのである。


「あれ? 普段の僕だ!」

「ほう、そりゃよかった。これで心置きなく戦えるぜ」

「そうですね、ありがとうございます」


 そう言いライゼルは杖を持ち直すと、ドワーフの男を見据え開始の合図を待った。

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