幻?と魔導書店

 ここはバルベアの町の広場。星形の噴水が中央にある。その周囲には、草や木や花が植えられていた。そして所々には長椅子が置かれている。

 その長椅子には達基が座り書類をみていた。


(フゥ―……とりあえず武術大会を受理してもらった。あとは募集をかけるだけだ。そうなると、貼り紙とチラシか……あとは口コミだな)


 そう思いながら噴水を、ジーっとみつめる。


(今頃、あの人は何やってんだろうなぁ……)


 そう思っていると幸とミフェナが達基の目の前を通っていった。


「……幸!?」


 まさかと思い達基は、幸とミフェナが向かった方をみる。だが既にその姿はみえなくなっていた。


(幸……まさかな)


 そう思うも気になり達基は、幸とミクセアが向かったと思われる方へと駆け出す。


(この世界に来ていても……おかしくない。いやそうであってくれ……)


 そう願い幸たちのあとを追いかける。

 だが広場を出て市場街にくるも、そこに幸たちの姿はなかった。


(いない……アレは幻? それとも、他人の空似だったのか? んー……だとしても、転移者……能力者だよな)


 そう思いながら達基は、アジトがある倉庫へと歩き出す。


(そうなると、この町に能力者が来ている。……大会を分ける必要があるな。元々は男女のみで分けようと思ったけど。

 そもそも能力者は、何をするか分からない。ただ、この町に何人の能力者が来ている? そんなに人数は、居ないだろう。

 それに補強するなら、使えるヤツの方がいい。ってことは、近隣の町や村にも募集をかけるか)


 そう考えがまとまると、ニヤリと笑みを浮かべる。

 その後、達基は速足でアジトへ向かった。


 ◆◇◆◇◆◇


 ここは市場街である。

 幸とミフェナは、市場街の奥にある魔導書店に来ていた。

 辺りには魔法に関する本が棚に並んでいる。


「コウ、本当にここで良かったのか? 私に気を使ってくれたのなら、その必要はない」

「いや、俺がみたいからだ。ただの無能力者ってのも嫌だしな」


 それを聞きミフェナは首を傾げた。


「んー……コウは、強いと思う。それに魔法に頼らなくても、そのバトルアックスを振る力や腕力があるから……無理に覚えなくてもいいと思うけどな」

「どうだろうな……バトルアックスも、師匠をみつけなきゃならない。それに能力者を相手に、腕力だけで勝てるとも思えないし」


 そう言い幸は、一点をみつめている。


「それもそうか……でも、魔法はそう簡単に覚えられない」

「そうか。それでも、一応はみておく。やれることは、なんでもしておきたいからな」


 その言葉を聞いたミフェナは、目を輝かせた。そうその言葉に、キュンッとしてしまったからである。


「それもそうだな。じゃあ、コウに必要そうな本を探そう」

「ああ、そうしてくれると助かる」


 そう言われミフェナの顔は、ボッと赤くなった。


「あ、うん……アッチの棚をみよう」


 ミフェナはそう云うと、ぎこちない歩き方で店の奥へと向かう。

 そんなミフェナをみて幸は、不思議に思いながらそのあとをついて行ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る