第61話 提案
ディルンムットに提案があると言われ、首を
「何でしょう?」
「僕の力で、その左手を動かせるとしたら、君はどうする? ただし、一瞬だが激痛を
彼の言葉に、サーヤ達の目が見開かれた。
「う、動くんですか!? この手が!」
「もちろん、訓練は必要だよ。でも頑張れば、生活に支障のない程度には動かせるんじゃないかな。君は頑張り屋さんだから、もっと器用に動かせるようになるかもしれない」
「さっすが賢者だぜ!」
コルが嬉しそうに声を上げた。
「しかし、激痛を伴うというのが気になります」
エクレーは冷静だ。サーヤも不安そうにしている。
「体を動かすには、神経や筋肉に電気信号を流してやる必要があるんだ。脳が、動く為に命令を出す。その命令が電気信号となって神経を通り筋肉に届く。そうすることで筋肉が伸び縮みして、骨が動き、動かしたい場所が動くんだよ」
ディルンムットが分かりやすく説明した。
「サーヤの左手は、その信号が伝わる道が遮断された状態だ。だから、僕の金属で手を動かす為の補助具を作ろうと思う。手袋のような形になるだろう。君の脳から命令を受け取り、補助具が左手を動かす手助けをする」
サーヤは頷きながら聞いていた。話を聞くだけでは、とても素晴らしい提案だ。
「そこで痛みの話だよ。脳からの信号を受け取る為には、僕の作る補助具と君の神経を繋がなくてはならない。五本の指の先から僕の金属を入れて、手首の神経へと繋ぐ」
「指の先から金属を、入れる?」
想像しただけで痛そうだ。サーヤは右手の指先が冷たくなったように感じた。
「神経の代わりをする金属だ。金属と言っても髪の毛より細い糸状のものだから、心配はいらないよ。ただ、神経と繋がる瞬間に激痛が走る」
「あの! そのやり方は、サーヤが初めてではないですよね……?」
エクレーが不安な表情を見せながら聞いた。
「森の獣がケガをした時に、何度か使った手法だよ。大きな体の獣でも、神経が繋がる瞬間は痛みで気絶しそうになるようだ。人間には、サーヤが初めてだよ」
「……」
その場が静かになった。
「この方法を使った獣達は、今も普通に生活しているよ。どうする?」
ディルンムットは、全てを正直に話したのだ。良い事ばかりではなく、それに伴う痛みもあるという事実。決めるのはサーヤだ。エクレーとコル、リリーシャは、彼女の言葉を待った。
「やります。お願いします!」
サーヤは心を決めた。
「いいんだね?」
「はい。この手を動かせるなら、痛みだって耐えて見せます。一瞬なんですよね?」
「ああ。長く痛みがないように、一瞬で終わらせよう」
ディルンムットも頷いた。
「だったら、答えは一つです!」
サーヤが笑う。その表情で、エクレーとコルも納得した。
「サーヤさん、御強いですね」
リリーシャが褒めた。サーヤは頭をかいて照れる。
「そんな事ないです。ディルンムット様に頼るしかないので、もうお任せするだけです」
「いや、君の強さは十分見せてもらったよ。後の旅に響かないように、僕に出来る最大限の事をするだけだ。すぐに取り掛かるけど、少し時間をくれないか? すぐにでも出発したいだろうけどね」
他の柱の所へ行かなくてはならないのだ。しかし、今はサーヤの手が最優先。サーヤ達は大丈夫だと言った。
「しっかり準備をして行きたいので、ディルンムット様に合わせます。よろしくお願いします!」
「分かった。任せてくれ。待ってる間、墓参りに行ってきたらどうだい?」
「墓参り……」
サーヤは、はっとした。
影の力を持つ私が、光の巫女である姉を倒しに行くことになりました うた @aozora-sakura
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